Apple Payは大きな変化はもたらさない
ここから少し、Apple Payの実際について分析してみたい。トークナイゼーションの話を含め、Apple Payの技術が特に先進的で他より秀でており、あるいは「Appleの利益を大きく押し上げるもの」といった論調も多数見かけるが、実際にはそこまで大きな変化をもたらすものではないというのが筆者の見解だ。
「Why Apple Pay is Apple’s most important product in years」という記事もあるが、ビジネス的にはiOSエコシステムへのユーザーのロックインを進め、Appleの売上を少し押し上げる程度に留まるだろう。周囲への影響は、すでに2015年春のタイムリミットに向け進みつつある米国でのチップ式クレジットカード(EMV)への対応のタイミングで、NFC対応レジへの置き換えが進みつつあるなか、商店主らのNFCへのさらなる対応をうながし、前述のような「タップ&ペイ」の世界を紹介するための教育効果が期待できる点にあると考える。
すでにその効果は現れており、少し前まで「BLEには未来があるが、NFCの未来は暗い」という論調が大勢を占めていた米メディア業界を、これほどの熱狂でNFC称賛へと向かわせた点で、Appleの影響力が推し量れる。実際、今年9月末にフランスのマルセイユで開催されたNFC World Congressという業界会議で、「(Appleそのものには期待していないが) NFC普及に向けたいい効果が期待できる」という点で多くの意見が一致していたことからも、その動向には業界からの注意が払われている。