ソニーは、9月17日に発表した業績見通しで大幅な下方修正を行った。同社によると、2014年7月31日に発表した2014年度(2014年7月1日~2015年3月31日)の連結業績見通しのうち、売上高の7兆8,000億円は据え置いたものの、営業損益は1,400億円の黒字見通しから400億円の赤字に1,800億円下方修正。税引前損益は1,300億円の黒字から500億円の赤字へと同様に1,800億円の下方修正。さらに、当期純損失は、500億円の赤字から2,300億円の赤字と、ここでも1,800億円の赤字幅拡大となった。

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しかも、この業績見通しは、さらに下方修正されることになりそうだ。この1,800億円の下方修正は、すべてモバイル・コミュニケーション分野の業績悪化影響によるものだ。

ソニーは2014年度第1四半期決算において、モバイル・コミュニケーション事業の売上高が前年同期比10.1%増の3,143億円、営業損失が153億円減の27億円の赤字となったことを受けて、同事業の通期営業利益見通しを260億円減のブレイクイーブンに下方修正するとともに、スマートフォンの年間出荷計画も、年初の5,000万台から、4,300万台へと下方修正。7月からは、同分野における中期経営計画の見直しを開始していた。

この結果、来る10月にも発表する予定の2014年度第2四半期において、同分野の営業権全額の減損として、約1,800億円を営業損失として計上することになったという。

※ 営業権:合併や子会社化等の際に買収(取得)側の企業が支払った対価のうち、取得する被買収企業の売上債権や固定資産といった個別に計上が求められる資産に割り振った後の残額をいう。被買収企業が持っている潜在的資産や超過収益力などと定義されることが多い。

1,800億円の営業権が計上された経緯

【上】モバイル・コミュニケーション事業の見通しに関する説明 【下】営業権1,800億円が計上された経緯

今回計上された1,800億円の減損を説明するには、2012年のモバイル事業におけるソニー・エリクソンの合弁解消にまでさかのぼる必要がある。ソニー・エリクソンは、ソニーとエリクソンの50%対50%の出資比率で設立された会社だ。2012年のソニーによる100%子会社化に伴い、公正価値(時価)とされた14億ユーロのうち50%分の対価として7億ユーロが、また、エリクソンとの知的財産権のクロスライセンス締結による、重要特許群の取得に関する費用の3億5,000万ユーロの合計10億5,000万ユーロがエリクソン側に支払われた。

一方で、当時のソニー・エリクソンは6億ユーロの債務超過となっており、公正価値の14億ユーロを加えた、20億ユーロのうち、13億ユーロを営業権、残りを無形固定資産として計上。だが、その当時に比べて現在では為替レートが大きく変化。円安ユーロ高となっているため、現在のレートでみた営業権の残高は1,800億円まで増加している。それを今回、営業権全額の減損として計上した1,800億円の算定理由だとしている。

だが、業績の下方修正は、今回だけに留まりそうにない。

ソニー 代表執行役社長兼CEOの平井一夫氏

というのも、今回の下方修正とともに、モバイル・コミュニケーション事業に従事する7,100人の社員のうち、15%に当たる約1,000人を削減する計画を2014年度中に実行することを明らかにされたからだ。そして、これに伴う構造改革費用は、今回の下方修正のなかには含まれていないのである。10~11月にも予定されている上期連結業績発表時には、この分が上乗せされることになるだろう。

そしてソニーはこれらの発表とともに、2014年度の中間配当および期末配当を無配とすることも発表している。ソニーが無配となるのは、1958年に東証に上場以来初めてとなる。この決定にも株式市場は大きく反応した。発表翌日の9月18日の終値は、下落率は8.64%となり、株価は1,940円にまで下がった。

ソニーの平井一夫社長は、5月の経営方針説明会において「この1年は、なんとしても構造改革をやりきる1年にする」と宣言していたが、予想以上に大きな痛手を伴う、構造改革への取り組みとなっている。