9月16日、パイオニアは都内にて事業方針の説明会を開催した。パイオニア 代表取締役兼社長執行役員の小谷進氏は「事業ポートフォリオを見直し、カーエレクトロニクス事業に経営資源を集中させる」と語り、自動車の車室空間における「総合インフォテインメント」のリーディングカンパニーを目指すと述べた。

パイオニア 代表取締役兼社長執行役員 小谷進氏

事業ポートフォリオの見直しにより、先般報道されていたホームAVおよびDJ機器事業を譲渡・会社分割することで、今後は外部パートナーとともに事業とブランド価値の拡大を目指すことになる。ホームAV事業については、オンキヨーと提携し、両社のブランド力や優れた技術力など、互いの強みを活かし、さらなる企業価値の向上を図る。対象となる事業領域は、ホームAV、電話機、ヘッドホン関連事業だ。

一方のDJ機器事業に関しては、DJ機器事業を切り出して、パイオニアDJ株式会社(仮称)を設立。業界最大規模のプライベートエクイティファンドである、コールバーグ・クラビス・ロバーツ・アンド・カンパニー・エルピー、および関連企業、その他の関連組織(以下、KKR)が新設する、持株会社PDJホールディングス株式会社に100%譲渡する。譲渡価格は590億円となり、譲渡時期に関しては2015年3月を予定している。

ホームAV事業の統合(写真左)と、DJ機器事業の譲渡(写真右)の概要

ホームAV事業・DJ機器事業の譲渡における背景

パイオニアが今後注力していくカーエレクトロニクス事業について小谷氏は、自動車のIT化、GoogleやAppleといった異業種の参入など、市場環境が大きな変革の局面にあると分析。パイオニアは、グローバルで高いシェアとブランド力、OEM顧客からの高い信頼、高品位な音や映像といった技術力といった強みを活かし、カーエレクトロニクス業界で勝ち抜くための最大の好機を迎えていると判断したという。自動車の車内空間において快適に、感動、安全・安心を創出する「総合インフォテインメント」のリーディングカンパニーを目指すと意気込みを述べた。

カーエレクトロニクス分野へ経営資源を集中し、事業ポートフォリオを再編

その上で、今後重点的に推し進める取り組みについても説明。まず挙げられたのが、クラウドなどIT技術と自動車が連携するコネクテッド化だ。「カロッツェリア」ブランドとして広く親しまれているカーナビに代表される車載機器、カーナビとネットワークを利用した「スマートループ」などの情報サービス、そして周辺機器という、3つのキー要素を組み合わせてまったく新しいクルマ体験を創るという。スタートとして一般市場向けにコネクテッド対応の機器を先行投入し、その価値や真価を提案する。そして、OEMや約8割が未開拓という業務用市場への波及効果を図っていく考え。

次いで挙げられたのが、OEM事業の拡大だ。前述のコネクテッド化で豊かになるカーライフの提案力、キーとなるモジュールの提供、徹底したコスト競争力の強化により、クルマの価値を最大化するキーサプライヤーとしてのポジション確立を見据える。

パイオニアが描く成長骨子と成長戦略(その1)

また、新興国での挑戦も掲げた。日本国内の自動車市場はシュリンク傾向にあるが、確実な成長が見込まれるBRICsやASEAN諸国、アフリカといった新興国市場において、スモールカーにターゲットを絞って戦略を練っていくという。低価格でコネクテッド化に対応したカーAV製品を開発、投入していくことにより、販売チャネルや現地ディーラーの開拓を図る。

成長戦略を下支えする経営基盤の強化についても言及された。従来から取り組まれていた生産拠点再編による生産コストの低減や、製品構造の共通化等による開発費用の圧縮、生産間接業務の現地化やIT化の促進により、短期的収益力を強化していく。また、事業ポートフォリオの再編に合わせ部門や機能の統合、役員を含む人員体制についてもグループ連結人員で約10%の削減など、グループ全体の経営体制をスリム化していく予定だ。

パイオニアが描く成長骨子と成長戦略(その2)

財務方針についても、「将来を見据えた投資を可能とするべく、財務基盤の再構築を図る」(小谷氏)。カーエレクトロニクス事業に経営資源を集中、遊休資産の売却を加速と、財務体質の健全化を推し進める。適切な投資環境を整備して、コネクテッドカーライフ市場を切り拓いていくという青写真を描く。具体的な数値計画や商品像については、11月に行われる第二四半期決算発表で行うとも付け加えられた。

財務方針

事業の統合や譲渡、そして人員のスリム化など、痛みを伴う事業方針を打ち出したパイオニア。説明会の結びに小谷氏は「カーエレクトロニクス事業を中心に据え、大きく変化しようとしている。今こそパイオニアが大きく変わる最後のチャンスだと考えており、不退転の決意を持って必ず成長戦略を成し遂げる」と語った。