米Appleは9月9日(米国時間)にスペシャルイベントを開催する。同イベントでは、iPhone 5sの後継となる新型iPhoneが発表されることが予想されているが、従来よりも大画面化し、サイズが異なる2つのラインナップが用意されるなど、様々な噂が飛び交っている。

気が早い人であれば、すでに新型iPhoneの購入を決めているかもしれないが、新型iPhoneのキャリア選びで重要となるネットワークはどうなるのだろうか? 本稿では、事前のリークや噂などをもとに、新型iPhoneのネットワークについて予想してみた。

9月9日のスペシャルイベントでの発表が予想される新型iPhone。ネットワーク面の進化は?

大画面が予想される新型iPhone、ネットワーク面の進化は?

9月9日に開催される米Appleのスペシャルイベントでは、iOS 8を搭載した新型iPhoneが発表されるのは、ほぼ確実と見られている。新型iPhoneについては、ディスプレイが4.7インチおよび5.5インチの2モデルが存在するというのが大方の見方のようだ。また、新型iPhoneに加えて、腕時計型デバイスの「iWatch」が発表されるのではないかとの予想もある。

ディスプレイの大画面化はAndroidスマートフォンではすでに進んでおり、もっと大きいサイズのiPhoneを使いたいと思っていた人にとっては、現行の4インチから新型iPhoneが4.7インチまたは5.5インチになるのは大歓迎だろう。とはいえ、大画面の特長を活かし、動画視聴やWeb閲覧を楽しむには、何よりネットワークが重要となる。

現行のiPhone 5s/5cでは、前機種iPhone 5と比べて対応するLTEの周波数帯が大幅に増えたが、新型iPhoneでは、ネットワーク面でどのように進化しているのだろうか。筆者の個人的な期待も含めて考察してみたい。

WiMAX 2+やAXGPはサポートされるのか

まず、新型iPhoneのネットワークで期待されるのが、TD-LTEへの対応だ。LTEには、通信方式の違いによりFDD-LTEとTD-LTEの2種類があるが、NTTドコモの「Xi」、KDDIの「au 4G LTE」、ソフトバンクの「SoftBank 4G LTE」などはFDD-LTEにあたる。一方、TD-LTEと互換性のある通信サービスとして国内で展開されているのが、KDDIおよびUQコミュニケーションズ陣営による「WiMAX 2+」、ソフトバンクが傘下のWireless City PlanningのAXGPネットワークを利用して提供する「SoftBank 4G」だ。

すでに現行のiPhone 5s/5cでは、中国向けなどのモデルでTD-LTEに対応しており、新型iPhoneもTD-LTEに対応するのは確実と思われるが、WiMAX 2+やAXGPが利用できるかどうかで問題になるのが、対応する周波数帯だ。WiMAX 2+やAXGPでは、バンド41(2.5GHz帯)という周波数帯を利用しているが、TD-LTE版のiPhone 5s/5cがサポートするのは、中国で使われているバンド38、39、40のみで、バンド41は非対応となっていた。

日本のユーザーにとっては、新型iPhoneがTD-LTEのバンド41に対応するかどうかが気になるところだが、同バンドはソフトバンク傘下のSprintが米国でLTEサービスを提供するなど、海外でも使われている周波数帯だ。そのため、iPhone 5s/5cへのモデルチェンジで対応する周波数帯が一気に増えたことを踏まえると、新型iPhoneでも対応する周波数帯が拡大し、WiMAX 2+やAXGPのバンド41がサポートされる可能性はかなり高いと見ることができる。

LTE-Advancedや"キャリアアグリゲーション"への対応は?

一方、LTEの高速化に関しては、米メディアのVentureBeatが、新型iPhoneがLTEの次世代規格であるLTE-Advancedのカテゴリー6に対応し、下り最大300Mbpsの高速通信が可能になると報じている。しかし、これに対しては反論も多く、9to5Macなどが報じるところによれば、新型iPhoneが搭載するLTEチップセットは、カテゴリー4のQualcomm製「MDM9625」であり、通信速度は下り最大150Mbpsになるという。

現行のiPhone 5s/5cは、カテゴリー3対応端末であり、通信速度は下り最大100Mbps。新型iPhoneの下り最大速度が300Mbps、150Mbpのどちらになるとしても現行モデルよりも端末が高速化するのは間違いないが、実際に高速通信の利用を可能にするためには、キャリアが提供するネットワーク側の対応も必要となる。

そのため、注目しておきたいのは、最大通信速度ではなく、むしろキャリアアグリゲーション(CA)への対応だ。CAは、LTE-Advancedの主要技術のひとつで、2つの周波数帯域をまとめて、1つの帯域のように使って通信速度を向上させるという技術。新型iPhoneがLTE-Advancedに対応するのであれば、もちろんCAにも対応することになるほか、前述のLTEチップセットのMDM9625もCAに対応しており、いずれにせよ新型iPhoneがCAに対応する可能性は高いと言える。

新型iPhoneでのサポートが予想されるTD-LTE、CAに関しての各キャリアの対応状況

日本では、KDDIが国内キャリアで初めてCAを導入し、2014年夏モデルからCA対応端末を販売している。同社のCAでは、LTEの800MHz帯と2.1GHz帯を束ね、下り最大150Mbpsの通信が可能となっている。

また、ドコモでは2014年度中にCAを開始する予定だとしている。ソフトバンクでは、Wireless City Planningが提供するAXGPネットワークにおいて、2014年9月からCAを導入することを発表した。なお、FDD-LTEに関しては、2015年以降にCAを導入する予定だという。CAには、高速化だけでなく、複数の周波数帯を使うことで通信を安定化できるメリットもある。新型iPhoneがCAに対応するのであれば、まずはKDDIのユーザーからネットワークの高速化と安定化のメリットを享受できる、ということになるだろう。