シャープの掃除機事業の歴史は長いが、ここでもシャープの独自性が発揮されてきた。近年では2000年に国産サイクロン第1号機「EC-AC1」を開発。紙パック不要という新たな提案を行うとともに、その後も運転音低減、お手入れ自動化、ゴミ圧縮といった機能強化を図ることで、ユーザーの不満を解消してきた。
【左】2000年にシャープが投入した第1号サイクロン掃除機「EC-AC1」 【中】サイクロン部の大きさは直径80cm。これはこだわりのサイズだ。FREEDにも採用された 【右】2000年に発売したEC-SA10 |
また、2010年には高齢者にも使いやすい軽量コンパクトサイクロン掃除機「EC-PX120」を発売。業界最軽量サイクロン「EC-DX100」の商品化につながっている。2012年には自動で掃除を行う「COCOROBO(ココロボ)」を投入。ロボット掃除機市場の開拓とともに、新たにコードレスサイクロン掃除機の市場投入へとつなげている。
コードレスという観点からも、シャープは積極的な取り組みをみせる。奥田副参事は、「もっと掃除を楽しくするために、これからの日本の掃除機をコードレスに変えていきたい」と断言する。
その一方で、こうも語る。
「コードレス掃除機には、パワーが弱い、使える時間が短い、重たいという潜在的な不安や不満点がある。使える時間という点では、連続使用時間が短いという声や、約1年で電池の交換が必要という声があがっている」
それを解決するために、シャープは2013年2月、小型軽量の「EC-DX100」を投入した。電源プラグの差し替えやコードのわずらわしさを解消。階段を持ち運んだり、部屋の高い部分の掃除なども可能にした。また、業界初の高効率SRモーターと遠心分離サイクロンにより強い吸塵力を持続。大容量リチウムイオンバッテリーで長時間使用できるようにした。
しかし、実際に市場投入してみると、ユ―ザーが求めるニーズはさらに広いことがわかった。
実際にEC-DX100を購入したユーザーに聞くと、「コードを差し替える手間がない」点や、「掃除したいときにサッと使える」という点が購入理由になる一方で、「使用できる時間が短い」「狭い場所の掃除がしにくい」といった声のほか、「充電台が使いにくい」「充電時間が長い」といった不満点もあがってきた。
こうした経験をもとに商品化したのが、FREEDということになる。「コードレスクリーナーの新たなスタイル提案する製品になる」と、奥田副参事は自信をみせる。こうした思いは、FREEDという新たなブランドを用意したことからも伝わってくる。
「FREEDというブランドからもわかるように、この製品で目指したのは、いつでも、どこでも、だれでも掃除を行えて、もっと楽しく、もっと自由に掃除ができる環境。そのため、4つのポイントこだわった」という。
ひとつめは、軽量スリムであるのに高性能であり、日本の様々な床にも対応できる点。「日本の家屋では、毛足の長い絨毯や、フローリング、畳と床の環境が多岐にわたる。だが、海外メーカーの製品の多くは、生活習慣の違いから絨毯の奥から強力に掻き出す機能が特徴となっている。FREEDでは、絨毯からの強力な掻き出し機能とともに、フローリングの乾拭き効果、畳を傷めない掃除ができるようにした」
FREEDでは、床の様子を自動で見分けて、吸塵力とブラシ回転を自動的にコントロール。畳の場合には、吸塵力とブラシの回転数を抑えて、やさしく掃除するという。
これを実現するために、モーターユニットの本体と制御回路を一体化。280gと、従来比で約60%も軽量化しながらも、高い吸塵性能も実現。それをボディ部に内蔵するとともに、薄型リチウムイオンバッテリーも搭載。本体のみで1.5kgという軽量ボディを実現している。本体部の遠心分離サイクロンは、高速旋回気流でゴミと空気を遠心分離することが可能だ。小型化したモーターユニットのサイズに制御基板を合わせて小型化するというのも、開発者の努力と工夫によって実現したものだ。
「飛行機のジェットエンジンの回転数が1~2万回転。従来のサイクロン掃除機の回転数が4万回転。FREEDでは8万回転の高速回転を実現している」(シャープ 健康・環境システム事業本部ランドリーシステム事業部第二技術部・太田圭係長)という。
モーターフィンは、独特の形状を持った「3Dフィン」を採用。これによって効率的に空気を吸い込むことができ、さらにフィンを樹脂し、耐久性を維持しながら、軽量化を図っている。
こうした工夫が、強力な吸引力を実現する理由のひとつになっている。