オーバークロック時の動作を検証 - 41倍~47倍

変化が出てくるのは41倍からである。グラフ14が41倍、グラフ15が42倍のケースだが、Core i7-4770Kの方は途中で急にカクンと消費電力が減る部分が出てきているのが分かる。これは何か? といえばThermal Throttlingが動作しているという話だ。要するに温度がある程度上がって危険域に達した場合、強制的に動作周波数(というか、倍率)を下げて温度が閾値を超えないようにするのがこの仕組みである。

41倍動作

Photo38:Core i7-4770K 41倍動作(温度)

Photo39:Core i7-4770K 41倍動作(周波数)

Photo40:Core i7-4790K 41倍動作(温度)

Photo41:Core i7-4790K 41倍動作(周波数)

42倍動作

Photo42:Core i7-4770K 42倍動作(温度)

Photo43:Core i7-4770K 42倍動作(周波数)

Photo44:Core i7-4790K 42倍動作(温度)

Photo45:Core i7-4790K 42倍動作(周波数)

これをCPU側で制御できるようにするため、IntelはDTS(Digital Thermal Sensor)を開発、CPUコア側に搭載することで、チップセットで温度を測定→CPUに信号を送って倍率変更、という面倒な作業から開放されて、即時温度調整が可能になっている。

話を戻すと、そんな訳でCore i7-4770Kの方はもう41倍でそろそろThermal Throttlingが介入を始めていることが分かる。ただこの時の介入の度合いはそれほど大きいものではない。実際、消費電力ではそれと分かるが、System Stability Testの結果(Photo38~45)には反映されていないことからもそれが知れる。本当に一瞬だけなので、センサーの側が取りもらす程度のThrottling、と考えれば良いだろう。

43倍動作

これが激しくなるのは43~44倍である。グラフ16を見ると、Core i7-4770Kではかなり明確に消費電力が下がっている谷が3カ所発生しており、グラフ17ではこれが頻繁に起きているのが分かる。

Photo46:Core i7-4770K 43倍動作(温度)

Photo47:Core i7-4770K 43倍動作(周波数)

Photo48:Core i7-4790K 43倍動作(温度)

Photo49:Core i7-4790K 43倍動作(周波数)

Core i7-4790Kもわずかに谷があるが、これはまだ非常に小さい。これはSystem Stability Testの結果からも明確で、43倍を見るとCore i7-4770Kは最大19%ものThrottlingが発生しており、常時多少なりとも介入している(Photo46,47)のに対し、Core i7-4790K(Photo48,49)ではまだThrottlingがグラフからは読み取れない程度である。

44倍動作

44倍ともなると、コア温度は85度と割に危険領域(Photo50)で、このため常時Throttlingが発生、これにともない動作周波数もピークでは8倍あたりまで落ちている(Photo51)のに対し、Core i7-4790Kでは一応Throttlingが起きてはいるものの、温度は危険領域一歩手前でとどまっている(Photo52)し、周波数の変化は殆ど読み取れない程度である(Photo53)。

Photo50:Core i7-4770K 44倍動作(温度)

Photo51:Core i7-4770K 44倍動作(周波数)

Photo52:Core i7-4790K 44倍動作(温度)

Photo53:Core i7-4790K 44倍動作(周波数)

45倍動作

45倍はCore i7-4770Kでは動作限界だった。それを裏付けるように、グラフもちょっとすごいことになっている(グラフ18)。もっともCore i7-4790Kでも+0.1Vしたためか、結構しゃれにならないほどThrottlingが発生している。 実際温度とか周波数変動(Photo54~57)を見ると、どっちもどっちといったところ。強いて言えば、若干Core i7-4790Kの方が「大きな谷が」少ないかな、という程度で、どっちも最大25%のThrottlingが起きている。

Photo54:Core i7-4770K 45倍動作(温度)

Photo55:Core i7-4770K 45倍動作(周波数)

Photo56:Core i7-4790K 45倍動作(温度)

Photo57:Core i7-4790K 45倍動作(周波数)

46倍/47倍動作

この先はさらにひどい。もうCore i7-4770Kは動作しなかったので、Core i7-4790Kに絞って46/47倍をまとめたのがグラフ19だが、消費電力がこれだけ振れ幅があるというのは、猛烈なThrottlingが発生しているということである。実際46倍(Photo58,59)も47倍(Photo50,51)も、しゃれにならないほど周波数変動があり、何とか温度を規定範囲内に抑えようと努力している様が見て取れる。

Photo58:Core i7-4790K 46倍動作(温度)

Photo59:Core i7-4790K 46倍動作(周波数)

Photo60:Core i7-4790K 47倍動作(温度)

Photo61:Core i7-4790K 47倍動作(周波数)

この一連の過程で何がわかるかというと、オーバークロックで無闇矢鱈に動作周波数を上げても、肝心の性能がついてこないということだ。もちろんThermal Throttlingを無効にする(Z97-DeluxeならBIOSのAdvanced→CPU Configuration→Intel Adaptive Thermal MonitorをDisableにする)ことは可能だが、その場合ダイ温度が急速に上昇してお陀仏になる公算が高まるだけである。

したがって、むしろThermal Throttlingが発生しないギリギリになるようにチューニングする、というのが現実的には好ましい方法なのではないかと思う。そのためにはより強力なクーラーを入れるというのが一つの案なのだが、無理に動作周波数を上げても仕方が無い(いや、それが目的な人ならば仕方ないのだろうが)ということになる。

一つ例を。編集部のレポートでは、リテールクーラーを利用してXTUを掛けたとき、定格動作でBenchmarkが899 marksだったのが、4.9GHzまで引き上げたら916 marksになったとしている。

筆者も同じようにXTUを使っていろいろパラメータを変えてテストした結果、全コアを4.4GHzでフル駆動するのが一番スコアが高かった(Photo62)。そもそも4.9GHzまで引き上げて900台のスコアというあたりは、相当Thermal Throttlingが発生していた(温度が98℃というあたりもこれを示唆している)のではないかと思う。

Photo62:ちなみにこれは定格ではなく、全コア4.4GHz駆動という設定である