既報の通り、IntelはDevil's CanyonことCore i7-4790KをCOMPUTEX 2014で発表すると共に、評価チップの貸し出しを開始した。本稿の執筆時点でまだ正式な出荷日などはハッキリしていないが、もともと2014年6月中に発売予定であり、もう間もなく入手できるものと思われる。

さて、編集部で簡単にオーバークロック性の確認が取れているCore i7-4790Kであるが、もう少し細かくオーバークロック性というか、従来のKシリーズであるCore i7-4770Kとの違いを見てみたい。

Core i7-4790KとCore i7-4770Kのスペックを比較

先の記事にもあるように、Core i7-4790Kと従来のHaswellは、CPUのダイそのものに違いはない(Photo01)。違いがあるのはCPUコア側の動作周波数で、Core i7-4770Kだと定格3.5GHz/最大3.9GHzのところが、Core i7-4790Kでは定格4GHz/最大4.4GHzに引き上げられている。もっともさすがにこれだけ動作周波数が上がると、消費電力は相応に増える。

Photo01:GPUコアの周波数は変更なし。またメモリに関しても、実際にどうかはともかくとして、定格ではDDR3-1600までのサポートに違いはなし

この結果、Core i7-4770KのTDPは84Wなのに、Core i7-4790Kは88Wになっている。ただ、これは動作周波数の違いがあるから当然の話である。実際CPU-Zの画面(Photo02,03)を見比べると、Steppingまで完全に一緒である。

Photo02:Core i7-4790Kの結果。Max TDPが88Wになっているのが判る

Photo03:こちらはCore i7-4770K。Stepping 3/Revision C0ということで、ダイそのものは同じ様だ

では何が違うか? というとスペックに出てこない部分で(Photo04)

Photo04:以前の資料には"Updated packaging materials"とあるが、これが何を指しているのかは不明

  • TIM(Thermal Interface Material:ダイとヒートスプレッダの間に挟まる熱伝導物質)にあたらしいポリマーベースのものを採用
  • パッケージ底面にパスコンを追加

といった項目が挙げられている。で、実際にはどうか? ということで、先の記事にもあるが、ちょっと裏面を比較してみた(Photo05)。Photo06が中央部を拡大して並べたものだが、配線がだいぶ変更されている上に、非常に細かいパスコン(バイパスコンデンサ、あるいはデカップリングコンデンサ)が大量に配されているのが分かる。

Photo05:先の記事とは逆に、左がCore i7-4770K、右がCore i7-4790K。パターンが大分違っているのも判る

Photo06:下のほうにある、部品の実装されていない6×2のパターンは、オンパッケージの電源レギュレータ部ではないかと思う

解説:パスコンは何のために必要か

本題に入る前にちょっとだけ座学を。「パスコンは何のために必要か」という話に触れておく。一般にパスコンは図1の様な形で、目的の回路と並行に入っている。

さて、この回路が稼働中、何も無い場合はVccからの電流が目的の回路とコンデンサの両方に流れ込んでおり、この段階では別にパスコンは何の仕事もしない(図2)。

ところが、目的の回路が急に負荷が増えた場合、電源回路がこの急増する負荷に対して間に合わない場合がある。このとき、図3の様にパスコンに蓄えた電力が目的の回路に供給することで、一時的に増えた負荷を賄う形になる。

したがって、負荷変動の激しい回路には、なるべく隣接する場所にパスコンを入れておくのが望ましい。もちろん容量は大きければ大きいほど負荷変動に耐えやすいわけだが、大容量のコンデンサは物理的にも大きくなるから、実装の都合上そこまで隣接させるのが不可能、というケースは頻繁にある。

むしろ、小容量であっても隣接した場所にたくさんばらまく方が、負荷変動に対する許容度が増すケースが大きい訳で、Photo06の右側にはまさしく非常に細かなおパスコンが大量に増えているのはこうした効果を狙ってのものと考えられる。