Pentium 20th Anniversary EditionでOCユーザーの裾野を拡大
その一方で、新たに投入されたPentium G3258 (Pentium 20th Anniversary Edition)は、Intel Core i7/i5のKシリーズとは異なり、Pentiumの最上位モデルとしてではなく、中位モデルに倍率ロックフリー版を提供するカタチとなった。これについてグラフ氏は「より多くの人々に、オーバークロックの楽しさを分かってもらい、デスクトップPC市場を牽引するエンスージアストを増やしたい」と説明。より多くのユーザーが購入しやすい80ドルを切る価格帯に抑えることを第一に、同CPUの仕様を決めたようだ。
このため、同CPUではCPUクロック倍率ロックは外されているものの、メモリはDDR3-1333対応となり、オーバークロック時のシステムパフォーマンスを引き上げる上でのボトルネックの一つとなっている。つまり、Pentium G3258で常用するのに満足しうるシステムパフォーマンスを得ようと思えば、「ベースクロックやメモリコントローラまわりの電圧、CPUとメモリ、I/Oのクロック倍率比率などを調整する必要が生じ、単純にCore i3などの上位CPUと同等のパフォーマンスを得られるわけではない」と、マザーボードベンダー関係者は、同CPUを使ったオーバークロックの難しさを指摘する。
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ASRockは、Pentium 20th Anniversary Edition向けに、M.2スロットやSATA Expressポートを省くなどして低価格化を実現したIntel Z97マザーボードを投入 |
そこで、ASRockはCOMPUTEX会期中に、80ドル以下で購入できるPentium 20th Anniversary Edition対応のIntel Z97マザーボードを発表するなど、マザーボードベンダー各社は、このPentium G3258ユーザーをターゲットに廉価でオーバークロックしやすいマザーボードの投入を計画。Intelとともにオーバークロック市場の拡大を狙っている。また、これらの新倍率ロックフリーCPUのコアは、従来製品と半導体そのものは変わりない。つまり、より高い電圧をかけられるようにすることで、さらなる高クロック化を実現するということは、消費電力だけでなく発熱量も、これまで以上に跳ね上がることになる。このため、主要パーツベンダーは、COMPUTEXにおいてより強力な水冷ユニットなどを展示し、同CPUのサポートを強化する意向を示している。
さらに既報のとおり、COMPUTEX TAIPEIでは、Intelの次期フラグシップCPUとなっる"Haswell-E"(ハスウェル-E)対応プラットフォームのIntel X99マザーボードも公開された。同プラットフォームでは、4chのDDR4メモリインターフェースが採用され、CPUソケットも新しくLGA2011-3となり、現行のLGA2011 CPUとは互換性がなくなる。
Intelは、Haswell-EおよびIntel X99チップセットの詳細についてはコメントを控えていたが、展示されたマザーボードを見ると、M.2スロットや、SATA Express用のパターンも確認でき、Intel Z97と同等の最新仕様になることが予想される。また、その市場投入時期については、複数のマザーボードベンダー関係者が「第3四半期中の市場投入となる見通しだ」と応えており、年末を待たずして最新フラグシップCPUが投入されることが示唆された。このため、主要メモリベンダーは、このタイミングにあわせてDDR4メモリモジュールを投入する準備を進めるとともに、オーバークロックメモリの開発も急ピッチで進めている状態だが、複数の関係者は「年内は、供給がかなり逼迫する見通しだ」と語っており、DDR3メモリに対するプレミアが、当初の予定以上に大きくなる可能性もある。