市場拡大の鍵を握るのは"オーバークロック"

Intelは、COMPUTEX TAIPEIの開幕にあわせ、開発コードネーム"Devil's Canyon"こと、新しいCPUクロック倍率ロックフリー版LGA1150 CPUの「Core i7-4790K」と「Core i5-4690K」を発表。のみならず、オーバークロック市場を拡大すべく、Pentium発売20周年記念モデルとなる「Pentium G3258 (Pentium 20th Anniversary Edition)」を発表した。

このうち、Core i7-4790Kについては、COMPUTEX初日の6月3日にIntel主催のマザーボードベンダー対抗オーバークロック大会「Intel OC Challenge COMPUTEX 2014」が開催されたほか、ショー会場でも主要マザーボードベンダーやメモリベンダーがオーバークロックのデモや競技を開催し、そのパフォーマンスをアピールした。グラフ氏は、初日のオーバークロック大会において、「Devil's Canyonでは、CPU裏側のキャパシタ(チップコンデンサ)を強化し、より多くの電圧を供給できるようにした」と、オーバークロック大会ならではのストレートな表現でDevil's Canyonの強化ポイントを紹介。また、「TIM (Thermal Interface Material : CPUダイとヒートスプレッダ間の熱伝導剤)を熱伝導効率に優れた次世代ポリマー素材に変更したことで、市販の高性能CPUクーラーでも、従来よりも高いクロック動作を可能にする」とアピールした。

Intel OC Challenge COMPUTEX 2014の、空冷・水冷システムによるCPUクロック(4コア/8スレッド)部門で優勝したのは、3.5時間という時間内に、割り当てられた5つのCPUから選別し、もっともポテンシャルがあるCPUのカラ割りを行なったMSIチームが5498.72MHzで優勝。液体窒素を利用したCPUクロック(4コア/8スレッド)部門では、GIGABYTEチームが6331MHzで優勝した。

Intel OC Challenge COMPUTEX 2014の最終結果

空冷・水冷システムによるCPUクロック(4コア/8スレッド)部門を制し、同オーバークロック大会の最高賞金となる5,000ドルを獲得したMSIチーム

終了1秒前まで、空冷・水冷システムによるCPUクロック(4コア/8スレッド)部門では5496MHzでASRockチームがトップ。このとき、MSIは証拠となるスクリーンショットのキャプチャ&コピーを行なっており、終了直前の大逆転となった

MSIは、大会終盤にさしかかって、Core i7-4790Kのカラ割りに挑戦

カラ割りで姿を現わした、Devil's Canyonで採用された次世代ポリマーTIM

GIGABYTEの液体窒素オーバークロック専用マザーボード「GA-Z97X-SOC Force LN2」のデビュー戦となったIntel OC Challenge COMPUTEX 2014で、液体窒素オーバークロックでは、メモリ部門などで圧倒的なパフォーマンスを披露した

Intel OC Challengeで使用されたIntel Core i7-4790Kのエンジニアリングサンプル。ヒートスプレッダに刻印のない状態だった

この結果だけを見ると、やはり従来どおりCPUのカラ割りに分がありそうに思える。しかし、本大会のルールでは空冷・水冷システムでは、液体窒素を使って外気温を下げること(ただし、ラジエターが液体窒素に直接触れると失格)が認められており、MSIチームもこの手法を使って優勝を勝ち取ったもので、一般ユーザーのオーバークロック環境とは大きく異なっている。むしろ、空冷・水冷システムによるCPUクロック(4コア/8スレッド)部門で、終了直前まで首位を守ったASRockチームは、Cooler Masterの高性能CPUクーラー「V10」に14cmファンを追加した空冷システムのみで5496MHzを記録。さらに、同時開催されたアマチュア部門で、香港のCherVさんが一般的なシステム構成でIntel Core i7-4790Kの4コア/8スレッド動作で5396MHzを叩き出した。

ほとんどのチームが、空冷・水冷部門では液体窒素を使って外気温を下げる工夫を施していた。なお、液体窒素がラジエターに直接あたった場合は失格となる

ASRockチームは、液体窒素による外気音低下も行なわず、Cooler Masterの高性能CPUクーラー「V10」に14cmファンを追加した空冷システムのみで5496MHzを記録。CPU-Zの倍率が55倍になっていることが分かる

Intel OC Challenge COMPUTEX 2014アマチュア部門の結果。CherVさんが、市販パーツだけの構成で約5.4GHz動作を達成して会場を沸かせた

このアマチュア部門、参加者はオーバークロック記録の投稿サイト「HWBOT.org」の常連ばかりであり、CherVさんも現在も同サイトのCPUクロック部門で第3位(AMD A10-6800K@8520.22MHz)の記録を持つ"OC Queen"でもあるため、本当の意味でのアマチュアではない。しかし、そのシステムは、主催者側から提供される

CPU Intel Core i7-4790K (エンジニアリングサンプル)
メモリ Kingston Technology HyperX Predetor DDR3-2800 CL12 1.65V 8GB Kit(4GB×2)
ストレージ Intel SSD 730 240GB
グラフィックスカード ZOTAC GTX650 LP 1GB 128bit DDR5
電源ユニット Cooler Master V750
CPUクーラー Cooler Master Hyper 212X

と、各自が同大会プロ部門参加マザーボードベンダーの製品から各自が選んだマザーボードという組み合わせで競われ、システム構成だけは「アマチュア」の環境とも呼べるもの。この環境で、わずか1.5時間という競技時間で5396MHz動作を実現したことは、Devil's Canyonのオーバークロック性能の高さとともに、新採用の次世代ポリマーベースのTIMの熱伝導効率のよさを実証するものとも言えるだろう。

市場で入手が容易なパーツのみの構成でIntel Core i7-4790Kを約5.4GHzで動作させ、マザーボードベンダー代表の野郎どもを驚愕させた、アマチュア部門総合2位のCherVさん(写真中央)

アマチュア部門のハードウェア構成。マザーボードについては、出場者が自由に選ぶことができた

CPUクーラーは、Cooler Masterの「Hyper 212X」が利用された

COMPUTEXメイン会場では、いたるところでオーバークロック大会やデモが行なわれ、来場者の注目を集めた。ちなみに、この写真の人混みは、ショーガール目当てが中心だったりもするが……