日本マイクロソフトは2014年7月17日に、第3世代となる「Surface Pro 3」を発売する。6月2日に行われた製品発表会で、日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、「はっきりいってヤバイ」と、Surface Pro 3を表現。ラップトップPCを置き換えるタブレットとして、進化を強調してみせた。Surface Pro 3は、日本において、どんなマーケティング戦略を展開するのか。そして、いまの手応えはどうなのか。日本マイクロソフトの樋口泰行社長に聞いた。
――製品発表会見では、Surface Pro 3を「ヤバイ」と表現しましたね(笑)
樋口氏 そうですね(笑)。「これは売れる」という手応えを、すでに感じていますよ。これまで、日本では性能が高いSurface Pro 2が売れていましたが、タブレットとしてはまだ重たいね、あるいは厚いね、という声がありました。しかし、今回のSurface Pro 3では、重さや薄さという点でも、タブレットとして認めていただける水準にきています。
また、Surface Pro 2では画面が小さいという声もありましたが、12型となったことで、それも解決できる。ラップトップPCを置き換えることができるタブレットを初めて投入することができた。まさに、満を持して投入したタブレットだといえます。いままでは、出張の際にも、鞄のなかにPCを入れておかないとちょっと不安だよね、という声もありましたが、Surface Pro 3であれば本当に1台で済む。PCとタブレットの境目がさらになくなるのではないでしょうか。
キックスタンドをはじめ、細かいところも進化していますし、魅力的な部分も多い。個人的には、ペンの進化が気に入っています。以前のSurfaceでは、ちょっとかすれることもあったのですが、Surface Pro 3では、それもないですし、紙とペンの組み合わせに近い感じになってきていますね。一度、手にすると、手放したくない感じですし、ペン入力も止まらない。私も早く欲しいんですよ。発売日が待ち遠しいユーザーの一人です(笑)。
――初代となるSurface RTを日本に投入したのが、2013年3月。1年3カ月に渡るこれまでのSurfaceビジネスをどう自己評価していますか。
樋口氏 私自身、最初にSurfaceを見たときに、「これはすごい、画期的なデバイスだ」と感じたことを思い出します。この手があったかと。タブレットでありながら、タイプカバーやタッチカバーを付けることにより、PCにもなる。その点は多くのユーザーに評価され、受け入れられたと判断しています。
そして、Surface Pro 2では、それを進化させ、コンシューマユーザー、法人ユーザーを問わずに、さらに注目される製品となった。一部サプライチェーンの問題もあり、品薄となったことから、お客様には大変ご迷惑をおかけしました。Surfaceは昨年末から世界的な品薄となり、日本でも品物が入ればすぐに売れてしまうという状況でした。これは反省点です。ここでマイクロソフトはハードウェアビジネスの難しさを学んだともいえます。
もうひとつ反省点をあげるとすれば、Surfaceに関しては、難しいメッセージをいっぺんに多く伝えすぎた、ということもありますね。タッチも、ペンも、マウスも、キーボードも使えるタブレットであり、さまざまなことができる素晴らしいデバイスなのですが、それだけに、これらのよさを的確に伝えきれたのか、という反省があります。もう少しシンプルに伝えるべきだったかもしれません。
とはいえ、具体的な数字はいえませんが、Surfaceは、ひとつのモデルとして見た場合、かなりの量が売れています。この点では、「お化け」ともいえる製品であり、Windowsタブレット市場全体を活性化させることができたといえます。国内におけるWindowsタブレットのシェアは、1年以上前には0%だったものを、1年前には10%にまで引き上げ、最新四半期では、30%にまで到達させることができた。Surfaceの品薄がなかったら、もっと高いシェアを獲得できたでしょう。
また、空港のラウンジや新幹線のなかでも、Surfaceを使っている人をよく見かけるようになりましたし、Surfaceの認知度も高まっている。タブレットとキーボードを、取り外したり、くっつけたりできる製品であるということを知っている人も増えている。マイクロソフトは、タブレット市場では後発であり、キャッチアップするために様々な施策を打ってきましたが、その成果が少しずつ出てきている。しかし、まだまだ加速させていかなくてはならないと考えています。
――iPadの背中が見えてきたと。
樋口氏 私は、タブレットの競争が長期戦になるほど、Windows陣営が優位になるのではないかと思っています。タブレットでPCの機能が欲しいというのは、ちょっと前までは夢の話だったかもしれません。しかし、それがSurface Pro 3で実現できてしまった。
Windowsが得意とする法人ユーザーのタブレット導入には、検証などの時間を要するため、少し時間がかかりますし、個人と法人の垣根がないデバイスの利用が浸透するにももう少し時間がかかる。だが、そこに、Surface Pro 3のような、フルPCの性能を持ったタブレットが登場してきたわけです。しかも、セキュリティも強固であり、運用性も高い。だからこそ、Surfaceの強みがますます発揮されるようになると考えています。
――これまでの取り組みを自己採点すると何点ぐらいですか。
樋口氏 そうですね。90点ぐらいでしょうか。やはり、サプライチェーンにおいて、お客様に製品をお届けできなかったという点は大きな反省点です。
――欧米では、SurfaceとWindows Phoneと連携したマーケティング活動を行っていましたが、日本ではそれができない状況にありましたね。
樋口氏 その点での難しさはありました。ピシっと製品が出揃っていたら、もっと違う提案ができたかもしれない。いつかはピシっと揃えた訴求をしたいですね(笑)。
――ところで、Surface Pro 3の日本への供給体制は大丈夫でしょうか。
樋口氏 Surface Pro 2で、ハードウェアビジネスにおける予測、需給計画の難しさを学んだわけで、それによって、Surface Pro 3はプロセスを大幅に見直しています。今回は、発売日から潤沢に製品を揃えることができます。とにかく素晴らしい製品ですから、しっかりと製品をお届けできれば、それだけで確実にシェアがあがる。それだけの自信があります。