搭載部品を1割削減した新基盤の開発

ThinkPad X1 Carbonが「新しい」とするポイントの詳細をいくつかの角度から見てみよう。まずは薄さだ。Ultrabookの登場以降、ノートPCでは薄さが大きなトレンドとなるなかで、新しいThinkPad X1 Carbonは、ThinkPadを「どこまで薄くできるのか」の先行的な「挑戦」でもあった。

ThinkPadでは、トラックポイントの搭載を避けては通れない。また、ThinkPadが持つキーボードのフィーリングを維持するためには一定のキーストロークが必要であり、これらはいずれも薄型化にはマイナス要素となる。

そこで、新しいThinkPad X1 Carbonでは、トラックポイントの高さを約1mm低くした新たなモジュールを採用。さらに、搭載する部品の集積化や小型化とともに、新たな基板を採用することで実装密度を向上させ、部品点数を1割減としたほか、生産性には影響しない範囲で部品と部品の隙間を詰めることで、基板サイズは従来モデルに比べて30%減と大幅に削減した。

基板の小型化によって、トラックポイント部を避ける形で基板を配置することができ、薄さの実現につなげられたという。Intelのチップセットの進化による部品の集積化や部品点数の減少も寄与している。

お馴染みフクロウファンも新世代となり、より薄く効率化した。上が新しいThinkPad X1 Carbon搭載のファン、下が従来のThinkPad X1 Carbon搭載のファン

ファンの冷却効率の向上により、排気口のスペースも小さくなった。左が従来のThinkPad X1 Carbon、右が新しいThinkPad X1 Carbon

また、新しいThinkPad X1 Carbonに搭載したSSDモジュールやワイヤレスWANモジュールは、標準用の部品として開発されたものだが、ThinkPad X1 Carbon用以外にはまだどこにも使われてない。標準部品の先行採用によって基板の小型化を実現したわけだが、これは、将来的に他シリーズの部品の入手性を高めることにもつながるという。

大塚氏は、「筐体カバー部の厚みは変わっていない。だが、筐体内の隙間を詰めること、薄いタッチガラスを採用することなどで薄さを追求した」とし、「なかでも隙間を詰めることが大きな挑戦であった」とする。

筐体内に隙間を作ると、落下などの万が一の場合に衝撃を逃がす効果がある。耐衝撃性や剛性を維持しながら隙間を詰めるのに、多くの苦労が伴うのは明らかだった。

内部構造。左が従来のThinkPad X1 Carbon、右が新しいThinkPad X1 Carbon

新しいThinkPad X1 Carbonでは新開発のSSDモジュールやワイヤレスWANモジュールなど部品が小型化し、基板全体が従来より約30%省スペースとなった

大和研究所では初代ThinkPad X1 Carbonの実績をもとに、どこまで削ることができるのかをシミュレーション。そこから試作品で少しずつ薄くしていき、発生する予想外の課題に対しても解決を図っていたという。これは量産直前まで繰り返し続いた取り組みだったという。

「とくに液晶は敏感な部分。液晶内部の隙間や、閉じたときの液晶とパームレストの微妙な隙間などは、攻められるところまで攻めた」と大塚氏は語る。例えば、ベゼル部の段差は従来モデルでは1mmあったが、素材を変えることで0.5mmにまで薄くした。

液晶ベゼルの高さは1mmから0.5mmに半減。左が従来のThinkPad X1 Carbon、右が新しいThinkPad X1 Carbon

従来のThinkPad X1 Carbonではボトム側に部品を組み付ける構造で、横壁もボトムケース側についていたが、新しいThinkPad X1 Carbonではキーボード側に部品を組み付ける構造を採用。剛性を高めるとともに、横から見たときの接合部の線を無くすなどデザイン性も高められた。

一方、基板の小型化などで生まれたスペースは、バッテリ容量の確保につながっている。

従来は同サイズのバッテリを4セル使用していたが、新しいThinkPad X1 Carbonでは、2種類の異なるサイズのセルを組み合わせて、8セルを搭載。手前側にトラックパッドを避ける形で厚めのセルを配置し、奥側のキーボード部には薄く大きめのセルを配置している。レノボが2種類のセルを搭載するのは初だという。

これによって、従来のThinkPad X1 CarbonではCore i7搭載モデルの駆動時間が7.8時間であったものを、新しいThinkPad X1 Carbonでは11.1時間に。Core i5搭載モデルでは7.7時間であったものが、14.3時間へと大きく伸びた。

「駆動時間も、やはり本社側からは高い要求が来ていた。当初は従来モデルを超える8時間以上からスタートしたが、お客様の声を聞き、外出していても丸一日利用できるという長時間駆動を目指した」という。

初となる2種類のバッテリセルの搭載。手前のトラックパッドを避ける形でバッテリセルが配置されている