まず、RIAAのデータによれば、SpotifyやPandora、YouTubeのサブスクリプションライセンスによる売上が2013年時点で昨年比39%アップの14億ドルとなるなか、ダウンロード販売の売上は3.2%減少の29億ドルだったという。

国際的な音楽業界団体であるIFPIの全世界のデータも同様の傾向を見せており、ストリーミングサービスの売上が51%上昇するなか、ダウンロード販売は2.1%減少となっていたという。Nielsen SoundScanのデータも似たような傾向を示しており、3月9日終了時点での売上減少幅はデジタルアルバム販売が13%のマイナス、デジタルトラック(楽曲単体)販売が11%のマイナスだったという。ダウンロード購入からストリーミングへと、音楽を積極的に消費する層が移動しはじめている様子がうかがえる。

Appleの音楽サービスはどうなる?

ただ今回の施策により、Appleの音楽サービス売上が再び上昇に転じる可能性も高い。まずiTunesというブランドがすでに確立されており、提供形態やラインナップしだいでは新興勢力に十分対抗できると考えられる。Spotifyなどで顕著だが、これらサービスはSNSを音楽拡散の場としてうまく活用しており、その点でSNSをどちらかといえば不得手としているAppleがどのような対抗策を打ち出すのかにも注目が集まる。

Android用アプリも大きなポイントだ。iTunesをリリースした初期はMacなどのパソコンを母艦とし、そこからダウンロード済みの音楽をiPodで外に持ち出すスタイルが一般的だった。だが現在のストリーミングサービスはスマートフォン上の再生アプリでリアルタイム配信またはキャッシングした音楽データを再生する形態を採っており、パソコンは重要な意味を持たない。

そのため、配信サービスを受けるAndroidアプリの存在は必要不可欠なものとなり、現在もシェアを増やし続けるAndroidへと対応プラットフォームを拡大することはAppleのビジネスにとって大きな意味を持つ。かつて、数ある携帯音楽プレイヤーに過ぎなかったiPodのシェアを大きく拡大させたのは、iTunes for Windowsがきっかけだった。そして今、当時のMacとWindowsで似たような関係にあるAndroidへと、その舞台を変えつつある。