どちらのプラットフォームが有利?

このような視点でみるとiOSのほうが有利なように思えるが、実際にはメリット/デメリットが混在しており、その特性を理解したうえでプラットフォームを選択するのが賢いやり方だ。

まずAndroidの魅力の1つはプラットフォームの多様性にある。前述のようにGoogleが直接責任を負うのはNexusだけだが、残りのハードウェアは各メーカーの手腕に委ねられており、毎回ユニークな製品が登場してユーザーを楽しませてくれる。Galaxy Noteなどはその典型だろう。独自のメニューやソフトウェア、ハードウェア機能はOSバージョンアップの妨げとなるが、必ずしも最新バージョンにこだわらないユーザーであれば、カスタマイズされた製品の魅力が有力な選択肢となるだろう。逆説的だが、アプリ開発者も最も利用者の多いプラットフォームをターゲットとして製品をリリースするため、よほどユニークな製品を選ばない限り、ユーザーも「アプリが利用できない」といって困るケースは比較的少ないと思われる。つまりは「自分にとって最も使いやすい製品はどれか」ということだ。

OSプラットフォームの多様性はカスタマイズや最新機能(LTEやNFCなどが典型だろう)の取り込みだけでなく、参加ベンダーの多様性も促す。先ほどの比較グラフで2年以上前にリリースされたGingerbreadがいまだ3分の1以上のシェアを獲得しているが、これは旧製品のユーザーが多いというだけでなく、中国など新興国向けにリリースされている製品の多くでいまだ旧バージョンのOSが導入されて出荷されていることにも起因するとみられる。中国ではモバイルOSのシェアはAndroidが83%と圧倒しているが(WSJの関連記事)、これら多くは最新製品ではなく、むしろHuaweiやZTEを筆頭に低価格の製品を多数リリースする地場メーカーの活躍による。中にはAndroidを搭載していながら、Google Playアプリを搭載していない製品も多数あるため(つまりGoogleの正式認定を受けていない)、Gingerbreadのシェアがさらに高い可能性が考えられる。Google Playのシェア集計に引っかからない端末が多数あるためだ。先ほどのWSJの記事でも指摘されているように、Googleが一部メーカーのみに最新OSのソースコード公開を優先しているため、ノウハウの蓄積された旧OSの利用が中心で、最新OSの導入がなかなか進まないことが理由にあると考えられる。

現状のAndroidはOSとハードウェアがほぼ一体として提供されており、売り切りスタイルの体裁の製品となっているといえる。開発者は最大公約数をターゲットにアプリをリリースし、ユーザーもまたこの多様性が存在することをある程度受け入れなければならない。一方でiOSはハードウェアの寿命が比較的長く、アプリの動作についても約束されている。多様性がない反面、開発者とユーザーともに安心感を得られる。シングルプラットフォームは開発者の負担が少なく、ユーザーもハードウェア寿命が長いというメリットを享受できるが、一方で多様性の理由によりAndroidのようなプラットフォームのほうが相対的にユーザーのシェアが高くなる傾向があり、開発者は自ずとアプリの提供ターゲットに含むことになる。開発者にとってはシングルプラットフォームのほうが負担が少ないが、シェアを理由に手広くアプリ開発を行う必要があるという悩ましい問題だ。一方でユーザーにとっては「多様性」と「安心感」が判断のポイントになるだろう。