「Windows 8.1」という名のアップデート版

年が明けて2013年2月頃からは、Windows Blueのスクリーンショットではないか、と言われる画像がインターネット上にリークされ始めた。ロシアの「microsoftportal.net」では、開発版であるBuild 6.3.9319のスクリーンショットを掲載している。また、Windows Blueが単に次期Windows OSだけではなく、Windows ServerやWindows PhoneといったWindows OSファミリー全体を対象にしたアップデートではないか、と言われたのもこの頃である(図03)。

図03 ロシアのサイトでリークされたWindows Blue Build 6.3.9319。信ぴょう性は不明だ

その後もスクリーンショットの流出が続き、2013年3月にはWindows Blue Build 9364自体がネット上に流出。具体的な変更点が明らかになり、フォトフレーム機能や、従来の4分の1に当たる小さいタイル、Windowsストアアプリの自動アップデート機能など、多くのサイトで情報が公開されるなか、MicrosoftはWindows Blueの存在を正式に認めた。これが3月26日の話である。

その直後Microsoftは、6月25日から開発者向けカンファレンスである「Build 2013」を開催することを発表し、同社のコーポレートコミュニケーション担当CVPであるFrank X. Shaw(フランク・X・ショー)氏が、「Looking Back and Springing Ahead」というメッセージで「Windows Blue」が開発中であることを公式に認めた。その後はネット上でもWindows Blueのプレビュー版をリリースする予定だという噂が錯綜したが、その結果が明らかになるのはしばらく先の話である(図04)。

図04 Windows Blueのプレビュー版を配布する予定の開発者向けカンファレンス「Build 2013」。今年6月25日から開催される

Windows Blueが「Windows 8.1」という名称で呼ばれるようになったのは4月以降の話。もともとMicrosoftが開発してきたソフトウェアの命名規則はバージョン名がそのまま用いられることが多く、初期のWindows OSはそのままバージョン名=製品名だった。Windows 95以降はリリースした年を製品名に用いていたが、Windows XPやWindows Vistaは開発チームが意味を込めて製品名を付けている。蛇足だが、Windows XPは経験などを表す「eXPerience」の一部を、Windows Vistaは展望、眺望を意味する単語をそのまま使用した。

そして、Windows 7からはバージョン番号を用いる命名規則に戻り、Windows 8も同様。バージョン番号とは一般的にソースコードの全面的な変更を行う際に更新し、小数点から始まるマイナーバージョンは小規模な仕様変更や、大がかりなバグの修正などを行う際に更新される。過去にはWindows 3.1と命名されたOSもあったため、Windows 8.1という名称を用いても特段おかしい話ではないのだ。ただし、Microsoftは公式の場で「Windows 8.1」という呼称を用いていないため、こちらもフタを開けてみるまではわからない。

その後もWindows Blueの開発は進み、開発途中版をビジネスパートナーにリリースしたものが、再びネット上に流出することがしばしば繰り返されている。そこから聞き及ぶ情報としては、Windows Server 2012が実装した次世代ファイルシステムとなるReFSのサポートや、ユーザーに対してアプリケーションの実行を制限する“キオスクモード”なるものが発見されているが、注目はスタートボタンの復活だ。

図05 Windows担当コーポレートバイスプレジデントのJulie Larson-Green(ジュリー ラーソン-グリーン)氏

1995年にリリースされたWindows 95以来、常にデスクトップの左下隅に存在したスタートボタンの存在感は改めて述べるまでもないだろう。Build 2013で何らかのプレビュー版がリリースされることは大方の予想どおりだが、5月7日に米国で開催された「Wired Business Conference」に登場したWindows担当コーポレートバイスプレジデントであるJulie Larson-Green(ジュリー ラーソン-グリーン)氏が、「リリースするのはパブリックプレビュー版である」と述べている(図05)。



図06 Windows担当チーフマーケティングオフィサー兼チーフファイナンシャルオフィサーのTami Reller(タミ・レラー)氏

また、同カンファレンスを取材した「THE VERGE」は、Windows Blueでスタートボタンの復活を検討している発言をしたと報道している。もっとも、Windows Blueのスタートボタンは従来型のプログラムメニューを表示するためのものではない、という見方もあり、現在確認できるリーク版にもスタートボタンの存在は確認できない。いずれにせよ、Reller氏が発言したように、Windows Blueは6月末にパブリックプレビューが登場し、年内にはリリースされることが確実となった(図06)。

一連の情報をまとめると、「Windows 8.1(仮)は、Windows 8をベースにした大規模なアップデート版であり、新規OSではない」「Windows 8.1(仮)は6月末にパブリックプレビュー版をリリース」「(開発スケジュールを鑑みると夏頃には)RTM(Release To Manufacturing version:製造工程版)に達する予定」「年内リリース予定」となる。Reller氏は「ユーザーの声に応える」と述べているが、どのような改良が加わるのか非常に興味深い。