Microsoftが描く未来のドライブ環境

あまり知られていないが、Microsoftは「Windows Embedded Automotive」という、カーナビゲーションシステム及び、車載デバイス用のOSをリリースしている。Windows Embeddedという名称からもわかるように、もともとWindows CEという組み込み用OSが発端であり、1998年12月から展開を始めている。

当時はWindows 98の時代だったため、デバイスドライバーの整合性などに起因するBSoD(Blue Screen of Death)が多発し、「運転中にBSoDが発生して事故を起こすのでは」という冗談にならない邪揄(やゆ)を耳にすることもあった。当初は「AutoPC」という呼称で展開していたが、その後も「Windows CE for Automotive」「Windows Automotive」の改称し、現在に至っている。筆者もその存在を失念していたが、同社の公式ブログである「Next at microsoft」では、「Windows Embedded Automotive」に関する興味深い記事を発表した。

記事では、同社のクリエイティブディレクターであるJohn Hendricks(ジョン・ヘンドリックス)氏を取り上げ、自動車とコンピューター技術の融合させ、車両デザインと運転時の経験を共に向上させることを目指す「インテリジェンスカー」の開発に携わっていると紹介。速度やブレーキ、燃費、タイヤの空気圧などさまざまな環境条件を蓄積することで、車両のメンテナンスやドライブ時の情報提示などに利用するという(図07)。

図07 クリエイティブディレクターのJohn Hendricks(ジョン・ヘンドリックス)氏(以下、画像は公式動画より)

その一環として開発センターには車両シミュレータを設置し、ドライブ環境を向上させるための実験を繰り返しているそうだ。Hendricks氏はユーザーエクスペリエンスデザイナーのチームを率いて、UIに対するアプローチを行いながら、具体的な利用シーンの改善を目指している。例えば自宅のタブレットに保存した音楽ファイルを車内で再生するといったことも想定しており、Microsoftのインテリジェンスカーは、シームレスなドライブ環境を描いた未来のドライブ環境となるようだ(図08~09)。

図08 Hendricks氏の後ろにあるのが、Microsoftによる車両シミュレータ

図09 さまざまな市内路を想定して、UIを改善するという。手前にいるのはユーザーエクスペリエンスデザイナーの一人、Melissa Quintanilha(メリッサ・キンタニーリャ)氏

スピードメーターや燃料計が並ぶインストルメントパネルや、その周辺に設置したカーナビゲーションシステム、サウンドシステムは、時代と共に進化しているが、日進月歩の勢いで進化するコンピューター技術と比べると遅々として進まない印象がある。ダッシュボード周りだけでなく、自動車全体をハードウェアとして管理し、ソフトウェアであるWindows Embedded Automotiveがさらに進化することで近い将来、Microsoftの描くインテリジェンスカーが実現するかもしれない。

阿久津良和(Cactus