―― 話はZR700に戻りますが、18倍という高倍率光学ズームレンズを搭載した理由は?

西坂氏「これまで何度もお話ししているように(笑)、EXILIMのZRシリーズは、走り回る子どもの姿をストレスなく撮影したくて開発しました。子どもが幼稚園くらいまでならZR300でも問題ないのですが、小学生くらいになってくると、ちょっと不安があります。

西坂氏は大の子ども好き

例えば運動会。小学校の校庭は広いので、レンズの望遠側が足りないんですよ。しかも、保護者席から動いちゃいけないといわれて(笑)。となると、どうしても高倍率でサクサク撮れるカメラが欲しくなるんですね」

―― 確かに、ZR700のズームは便利ですね。広角25mm相当から光学で18倍(450mm相当)、超解像のプレミアムズームも使えば、36倍(900mm相当)。もう何でも撮れるのではないかと思います。

西坂氏「高倍率の光学ズームモデルは市場にいくつもありましたが、やはりEXILIMのようにサクサクと機敏に動いてくれないので、ストレスが溜まるのではないでしょうか。ZR700は、1人のユーザーとして自分が欲しかったカメラでもあるんです」

―― ZR700はAF(オートフォーカス)も速いですよね。ズーム操作をすると、ピントをある程度合わせながらズームしてくれるので、シャッターを半押しした瞬間にピピッ! と合焦する。ズームしてのAFは、従来機に比べてはるかに快適ですね。

西坂氏「それは、新搭載の手ブレ補正機構の威力ですね。ブレないということは、すなわち追いかけるのが速いということでもあります。その点を考え、ただレンズを高倍率にしただけでなく、レンズシフト方式の手ブレ補正機構を搭載することで、撮影行為全体の快適さを向上させたところがZR700のポイントなんです」

ZR700の手ブレ補正は強力。作例はZR700のレビュー記事より

西坂氏「このレンズシフト式手ブレ補正機構は2段分の効果、シャッタースピードでいえば4倍の速さでシャッターを切れます。さらに、複数枚の画像を合成して手ブレを補整した画像にするHS手ブレ補正を併用することで、最大5段分、シャッタースピードでいえば32倍の速度でシャッターを切るのと同様の効果が得られます。

今までの高倍率ズームモデルの中には、光が十分に確保できる環境でないとうまく撮れないものもありました(編注:暗い場所を高倍率ズームで撮ると大きなブレが発生しやすくなる)。でもせっかくなら、体育館での卒業式や入学式などにも使いたいですよね。つまり、高倍率撮影をカメラがアシストする部分が、いかにしっかりしているかが重要になってくるんです」

ZR700のボディはZR1000に近いデザインながら、フラッシュがポップアップ式になっているなど完全な新設計だ

―― 各メーカーとも、コンパクト機の手ブレ補正には力を入れてきていますね。

西坂氏「カシオとしても、その流れの中でZR700を開発しました。一部では、カシオのカメラはセンサーシフト方式だけなので手ブレ補正に弱いなどと言われていましたが、レンズシフト方式の手ブレ補正とHS手ブレ補正を併用できるZR700で、十分に名誉挽回できるのではないかと思っています」

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