皆様、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

ということで、久々のPCテクノロジートレンド。前回はなんと5年前の2008年1月1日だった。この5年間で、もう色んなことが変わってしまったのは皆様ご存知の通り。ではこの5年間を全部振り返って……たりすると、ページ量が爆発するのは目に見えているので、とりあえず2012年のおさらい&2013年の予測、ということでご紹介したいと思う(Photo01)。

Photo01: 昨年から加わったスタッフ3号「まめっち」♀。

Intel CPU

前回はIntel CPUをDesktop/Mobileで分離したが、あの当時と異なりMobile向けをデスクトップ向けに投入するケースは余り無い(例外は当然ある。後述)ので、Desktop向けのみとさせていただく。

Core 2に代えてCore iブランドを投入してからは、各製品のターゲットが非常に明確になっており、

  • Core i7 Extreme : Enthusiast向け
  • Core i7 : ハイエンド
  • Core i5 : メインストリーム パフォーマンス向け
  • Core i3 : メインストリーム バリュー向け
  • Pentium : バリュー向け
  • Celeron : バリュー向けローエンド

という形で展開されている。以前はここまでSKUが明確になっていなかったから、例えばある時期にハイエンド向けだったものが、次の時期にはメインストリーム系、その次の次あたりにはバリュー向けみたいな展開になっていたが、今はこうした風潮はなくなっている。

Core i7/Core i7 Extreme(表1・2)

表1

表2

IntelのトップエンドがCore i7とCore i7 Extremeだが、ちょっと製品ラインナップのずれが大きくなり始めてきているのが現状だ。もともとExtreme Editionという製品ラインナップ、AMDがAthlon 64の立ち上げ当時にDesktop向けが間に合わず、やむを得ずSledgeHammerベースのOpteronをAthlon 64 FXという名称で投入したのに対抗して、Xeon MP向けのGallatinコアをPentium 4 Extreme Editionという名称で投入したのが始まりである。以後、Xeon向けのコアを「Desktop製品のさらに上位」と位置づける形で投入してきた。

この仕組み、Broomfieldを利用した初代Core i7までは上手く推移した。ここまではDesktop向けとServer向けが、ほぼ同一タイミングで投入されてきていたからだ。厳密に言えば、4P以上の構成となるXeon MP向けに関して言えば、システムの検証がDesktop向けや2P Server向けと比較にならないほど時間が掛かるし、特にCore i以降は構造そのものが全く違うから、こちらはDesktopとは全く違うサイクルで製品投入が行われているが、Nehalemに関しては全く同じであった。

ところが32nmプロセス世代に関して、Desktop向けはパス(Broomfield/LynnfieldベースのCore i7/i5は45nmのまま推移し、唯一Clarkdaleのみが32nmに移行したが、これはCPUコアが45nm、GPUコアが32nmのMCM構成)し、むしろSandy Bridgeへの移行を急ぐ形になった。その一方でXeon向けは素直にNehalemベースで32nmへの微細化を行った関係で、ここでミスマッチが発生した。GulftownベースのCore i7-980Xは2010年3月に投入されたが、翌年1月にはSandy Bridgeが投入されている。そしてSandy BridgeベースのXeonであるSandy Bridge-EPをベースにデスクトップ向けとしたSandy Bridge-EがCore i7-3960Xとして投入されたのは2011年11月の事で、ここで10カ月ほどのディレイが生じてしまった。このディレイはむしろ広がる方向に来ており、デスクトップ向けはIvy Bridgeベースの製品が既に2012年4月に投入されているが、こちらのXeon向けであるIvy Bridge-EPは2013年の前半、デスクトップ向けのIvy Bridge-Eに至っては2013年8月なんていう話まで出てきている。

何でこんなことになったのか? という話であるが、直近の話で言えばIntelの22nmプロセスの問題である。TSMCの28nmとかCommon Platformの28nmに比べるとかなりマシではあるのだが、Intelの22nmプロセスも立ち上がりに思いっきり苦しんでいる。実際、Ivy BridgeベースのCore i7/i5は4月に投入されたが、Core i5も当初投入されたのは比較的動作周波数が高い(=高価格)の製品のみ。低価格品が投入されたのは7月に入ってからである。Core i3やPentium/Celeronはさらに遅れている。本当ならばTop to Bottomで22nmプロセスに移行させることで、早期に22nmへの設備投資を回収すると共に、32nmプロセスをチップセットやその他のプロセッサ向けに空けたいところなのだろうが、肝心の22nmプロセスのYieldが悪すぎて、とてもではないがメインストリーム~バリューに必要な製品を作りきれない、というのが正直なところだったようだ。この状況はIvy Bridge-EP/Ivy Bridge-Eにもモロに跳ね返る。

まだIvy Bridge-E/EPのダイが出てきていないから正確なところは不明だが、例えばSandy BridgeのDie Sizeは216平方mm、対してSandy Bridge-EのDie Sizeは435平方mmで見事に倍である。Ivy BridgeのDie Sizeは160平方mmだが、同じロジックで行けば330平方mmとかになる計算だ。もっとも実際にはIvy Bridgeの場合、Die Sizeに占めるCPUの割合はSandy Bridgeよりやや減っている(GPUがその分増えている)から、GPUを搭載しないIvy Bridge-E/EPはもう少し小さくなるだろうが、それでも300平方mmクラスの公算は高い。160平方mmのダイを取るのですら歩留まりが悪いとか言ってるのに、300平方mmのダイを取ろうとしたら、歩留まりがどの程度になるのかはちょっと見当もつかない。

しかもIvy Bridge-EPは、Sandy Bridge-EPと比較して性能は同じまま消費電力を半減しており、しかもPlatformがSandy Bridge-EPと互換性があるわけで、とにかく消費電力を下げたい(=電力コストを抑えたい)既存のユーザーからすれば「Upgradeするだけで電力コストを半減させられる」大変魅力的な製品である。そんな訳で、まずはXeon向けが最優先となっており、Core i7向けのPriorityが低くなるのは致し方ないところ。8月位まで遅れるかどうかは、22nmプロセスで300平方mm近いDieのYieldがどこまで上がるか次第である。もしYieldがもう少し早めに改善すれば、もう少し前倒しでIvy Bridge-Eベースの4970X(と言われているが正直不明)が投入されるかもしれない。

ちなみに現在の話ではIvy Bridge-Eベースの4970Xは6コア構成という話で、その分動作周波数をやや高めに振ったものとなっているが、本来Ivy Bridge-EPは最大10コア構成になっており、可能性としては8コアにするケースもありえる。このあたりはもう少し投入時期が近づくまではっきりしなさそうだ。

さて、その下はHaswellが投入される……訳なのだが、こちらもやはり投入時期がややスリップした。当初は2013年4月の予定だったが、最新の話では2013年6月になると言われている。ということは、やはり22nmのYieldの改善が十分ではないという事かも知れない。

Haswell世代ではプラットフォームが全面入れ替えである。ご存知の通り、パッケージはLGA1150に切り替わる。Intelは今のところ明確に理由を説明していないが、一番可能性が高いのはDDR4への対応である。勿論HaswellそのものはDDR4には未対応である。ただHaswellの次にあたるBroadwellが登場するのは2014年半ばになると見られ(これが実際にどうか、というのはIntelの14nmプロセス次第)るが、その頃になるとMemoryのトレンドはDDR3からDDR4へのシフトを始める時期になる。なのでBroadwell世代は恐らくDDR3とDDR4の両対応が可能になっていてしかるべきだし、過去のIntelのラインナップを見ると、例えばIntel 915(DDR→DDR2)とかIntel 3シリーズ(DDR2→DDR3)などは2種類のメモリをサポートする形になっていた。以前と違うのは、昔はMemory ControllerがMCH/GMCH側にあったからCPUのPackageは同一だったが、今はMemory ControllerがCPU側にあるので、当然両方のMemoryをサポートできるようなピン配置が必要になる。AMDのSocket AM2+の例もあるから、別に難しいことではない。ただそんな訳でPackageは一新する必要がある、と判断される。

ちょっと話が横に逸れるが、最近BroadwellがDesktop向けに出ないという話が出ている。真偽は不明だが、ことメモリの対応を考えるとちょっと難しい問題を孕んでいる。もし「実はHaswellの世代でDDR4のサポートが既に入ってる」というのならこれは可能だが、現実問題としてDDR4の標準化作業が終ったのが2012年9月であることを考えると、その可能性は非常に低いと思われる。ある程度のDDR4対応の回路を(標準化完了前のドラフト状態の規格を基に)インプリメントしておくのは可能だろうが、細かいパラメータ類まで正確に一致させて検証しない限り、これでDDR4対応と謳うのは無理があるし、なのでHaswellではDDR4は使えない、と判断すべきだろう。

となると、もしBroadwaterがDesktop向けをパスした場合、IntelはDesltop向けのDDR4 Solutionを2014年~2015年のTimeframeで提供できないことになる。勿論、今のAtomとか一部Celeronなどを搭載した製品の様に、CPUがマザーボードに搭載された状態で販売されるという形での対応は不可能ではないが、「いくらなんでもそれは無いだろう」というのが筆者の偽らざる心境である。

さて話を戻すとHaswell、当初見えているSkewは表2に示すように4770が4品種である。恐らくCore i7向けはこれで終わりかもしれない。動作周波数はIvy Bridgeのものと変わらないが、以前レポートした様にIPCは10%程度の改善がなされているから、これによる性能改善は期待できるだろう。面白いのはTDPが77W→84Wに増えていることだが、これはGPUの消費電力が増えたためでないかと想像される。

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