今年2013年9月中旬に株価700ドルの壁を突破し、時価総額6500億ドル以上に到達した米Appleだが、その後株価はピーク時の7割ほどにまで急落し、アナリストらからは今後の見通しについて従来ほどの楽観的な意見は聞かれなくなりつつある。ここでは現状のAppleを分析しつつ、来年以降をどのような戦略で動き、来春にも発表が噂される「iPhone 5S」がどのような製品になるのかを予測してみよう。
9月中旬に700ドルオーバーのピークをつけたAppleの株価はその後下落を続け、現在では500~530ドル前後のレンジで推移を続けている。この株価について大きな変動を見せたのは米国時間で12月5日で、同日終値で6.43%ダウンという急落となった。急落の原因についてはいくつか取り沙汰されているが、長年Appleを高く評価して買い煽ってきた"信奉者"ともいわれるPiper JaffrayのアナリストGene Munster氏が、釈明とともに世間で蔓延する「Appleの"マイナス"な噂」について反論している。Munster氏がApple株価(AAPL)下落要因として4つの要素を挙げており、反論内容は次のようになる。
台湾DigitimesのAppleに関する最新レポート
理由の1つはDigitimesが同日に掲載したレポートで、ここでは懸念となっていたiPhone 5の供給体制が改善する一方で、部品メーカーらには来年2013年第1四半期をめどに部品の発注数を20%ほど減らしたという話が出ている。Munster氏は、これは数字のトリックだと解釈しており、iPhone 5の需要が2割減少しているのではなく、2012年第4四半期向けに積み上がった在庫が繰り越された結果で、当初の1四半期あたり4300~4500万台という水準は十分に達成している可能性が高いと説明している。
株価のテクニカル分析
12月5日同日、ちょうどAAPLの50日線と200日線がクロスしており、これがテクニカル分析上の見方から売りを誘発したとの見方がある。
AAPL取引の際の委託証拠金引き上げ
CNBCが同日報じた内容によれば、COR ClearingがAAPL取引の際の委託証拠金を30%から60%に引き上げたという。これは投資家にとって取引金額が減る要因になるだけでなく、リスクが嫌気される結果にもなるため、AAPLの売り誘発につながったという話だ。だがMunster氏は、これ自体がAppleの健全性を毀損したわけではないと説明している。
NokiaがLumiaデバイスを中国移動通信(China Mobile)に提供
Nokiaは同日、同社Windows Phone端末の「Lumia 920」をChina Mobileに提供する発表を行っている。Lumia 920は同社のフラッグシップ端末だが、China Mobileが3Gネットワークで展開している「TD-SCDMA」技術とは互換性がないため、その特別仕様である「Lumia 920T」を用意して市場投入するという注力ぶりだ。Nokiaはローエンド端末も含めて中国をはじめとする新興市場へと投入し、SamsungやAppleに奪われた失地回復に向けた動きを強めているといわれる。一方でAppleは世界最大キャリアであるChina Mobileとの交渉を進めているものの、いまだ合意には至っておらず、先行するライバルらに巨大市場のシェアを奪われる危険性が指摘されている。Munster氏は2013年後半にChina MobileがiPhone取り扱いをスタートすると主張しているものの、実現性はまだ不透明だ。
テクニカル分析や信用取引での委託証拠金引き上げは偶然が重なったともいえるが、1つめのiPhone 5需要見通しと、4つめの中国市場での成長に関する見通しについては、今後のAppleを占ううえで非常に重要な要素だといえる。折しも12月中旬には各方面からiPhone 5の需要減やAppleの失速、そして需要減によりサプライヤへの発注数を減らしたことを指摘するレポートが相次いでおり、再び株価下落を誘発する結果となった(参考リンク1)(参考リンク2)(参考リンク3)。以後、年末商戦の話題を振り返りつつ、これら状況を踏まえた来年のApple戦略について分析してみる。なおMunster氏は、依然としてAAPLの株価目標を900ドルに設定している。