筆者が現在独自に複数の情報筋から聞いている情報を総合すると、次期iPhoneは「春過ぎ」ごろ発表され、しかもそれはMisek氏の言うようなiPhone 5の後継モデルではなく、コスト削減を主眼にした「廉価モデル」になると考えている。低価格モデルについてはMisek氏も触れているほか、Gene Munster氏が「iPhone for the masses」の名称で低価格市場参入の可能性を示唆しているように、以前から噂されていた「iPhone mini」的な位置付けのモデルだとみられる。それが「iPhone 5S」の名称になるかは不明だが、これまでのiPhoneの進化モデルからは外れた存在になるだろうというのが筆者の予測だ。

では、この次期iPhone (仮に「iPhone 5S」としておく)に関するスペックや狙いを予想してみる。前述のようにコストを削減した廉価モデルだとすれば、高コスト要因となっている部品を極限まで削って値段を下げてくるはずだ。ゆえに場合によってはスペックがiPhone 5から下がる可能性が出てくる。予想されるスペック的な特徴を下記に挙げてみた。

  • ディスプレイは4インチRetinaだが非インセル方式(第5世代iPod touchと同一)
  • LTEは非搭載の可能性
  • プロセッサはA5 (32nm製造プロセス、iPad 2,4搭載と同一)
  • カメラは旧モデル仕様のもの(500万画素)
  • 筐体はiPhone 5と同一
  • NFCは非搭載(実装スペースとコストの兼ね合い)

ディスプレイに関しては次期iPhoneでインセル方式ではなく、歩留まり解決のためにガラス一体型(One Glass Solution: OGS)方式が採用されるという話もあるが、同時に歩留まり問題の改善からインセル方式を継続利用するという話もあり、実際のところは不明だ。プロセッサは実装面積の関係からA6よりもA5のほうが若干低コストになると考えられる。カメラモジュールもソニーの800万画素センサーではなく、より安価なタイプのものを選択することでコストを下げられる。筐体はiPhone 5のものを流用するのがベターだと思われるが、同時にコスト削減のためにiPod touchライクなものが採用される可能性があり、その場合ユーザー層拡大のために前述Misek氏のいうカラーバリエーションの可能性も出てくる。もしiPhone 5の筐体を流用した場合、NFCのアンテナ実装スペースがないため、NFC採用の可能性は低い。またアプリや環境も整っていない段階でのNFC採用はコスト上昇要因でしかなく、このタイミングでの採用は考えにくい。

これでiPhone 5から1~2割ほどBOMが削減できるとみられるが、前述のアナリストらが予測する200~250ドルの販売価格に収まる水準にBOMを押さえ込めるかはやや微妙だと考えられる。200ドル水準のBOMから最大2割削減に成功して160ドル、これを販売価格の6割程度だと想定してマージンを乗せると267ドルとなる。削れる要素は限られるため、おそらくは廉価モデルでも150ドル前後のBOM水準に収めるのが限度とみられる。

この場合気になるのは、廉価モデルのマーケティングをどのようにAppleが考えるかだ。ポストペイドの世界では販売推奨金を乗せるのが一般的になっているため、実は価格そのものはたいした意味を持たない。一括支払いで端末を購入するユーザーだったり、あるいは200ドルで16GBモデルの販売される米国などの地域で「iPhoneを0円端末で販売できる」ケースなどで効果を発揮するくらいだろう。多くの場合、プリペイド市場ならびに中国のような新興国市場でのプレゼンスを高める効果が重要だといえる。