Windows 8を搭載したPCとして、11月6日時点で最も売れているのがソニーの「VAIO Duo 11」である。
同社独自の「サーフスライダー(Surf Slider)」と呼ばれるスライド構造を用いることで、ノートPCの形状からディスプレイ部分をスライドすれば、タブレットPCとしても利用できるというコンバーチブル型のPCだ。
「VAIOは常に新たなことに取り組んできた。『VAI0 Duo 11』によって、Windows 8の時代においても、その姿勢を証明することができた」と、同社では、「VAIO Duo 11」の取り組みに自信をみせる。
確かにスペックの随所には、VAIOらしいこだわりがあり、VAIOならではの新たな挑戦を感じることができる。「VAIO Duo 11」とは果たしてどんなPCなのか。ソニーの製品開発チームを直撃した。
ソニー VAIO&Mobile事業本部 企画1部 Hardware企画1課 プロダクトプランニングマネージャー 金森伽野氏(左)とソニー VAIO&Mobile 事業本部 PC事業部 1部1課 統括課長 鈴木一也氏(右) |
2つの利用環境の共存 - Windows 8時代の象徴的なPC
ソニーは、Windows 8時代のPCには、2つの利用方法が混在すると考えている。ひとつは、Windows 8で新たに提案されたタッチ機能による使い方である。これは、主にタブレットでの利用が中心となるだろう。
もうひとつは、従来からのデスクトップ環境での使い方である。Windows 7から継承した利用環境も根強く残ると考え、キーボードを利用した創造性、生産性を高めることを目的とした使い方の提案にも余念がない。
ソニー VAIO&Mobile事業本部 企画1部 Hardware企画1課 プロダクトプランニングマネージャーの金森伽野氏は、「この2つの利用環境を、最もうまく共存させるにはどうするか。それを具現化したのが、『VAIO Duo 11』である」と語る。
そして、ソニー VAIO&Mobile 事業本部 PC事業部 1部1課 統括課長 鈴木一也氏も異口同音に、「どちらかのスタイルで利用するというのではなく、Windows 8のModern UIと、デスクトップUIとをこまめに切り替えて利用する環境において、最適なスタイルは何かということを追求した」と語る。
ソニーがWindows 8時代に提案したPCのコンセプトは、2つの異なる環境を両立させるPCであったといえる。そして、それを具現化したWindows 8時代の象徴的なPCが、「VAIO Duo 11」というわけだ。
目指すは"UIを最もスムーズに切り替えられるPC"
鈴木氏は、「Windows 8は、タイル表示のModern UIと、従来型のデスクトップとが、スムーズに切り替わるのが大きな特徴。しかもWindows 8の利用環境は、それぞれの環境を行き来しながら使うことが多い。それならば、その2つのユーザーインタフェースに適した形状に、"最もスムーズに切り替えられるPCを開発する"ことを目指した」とする。
「VAIO Duo 11」では、ユーザーの利用シーンに応じて、手軽にPCのスタイルを変更して、利用することを目指している。だからこそ、少ないアクション数で、スムーズに変更できるサーフスライダー構造を採用したともいえる。
「コンバーチブル型を実現するいくつかの構造も検討した。しかし、最も変形のステップが少ないものは何か、ノートPCスタイルとタブレットスタイルの双方の操作性を損なわない構造は何かといったことを検討した結果、サーフスライダー構造に行き着いた」という。
だが、課題も浮上した。どうしたらスムーズに開閉ができるのか、それでいて薄さや重さを犠牲にしないためにはどうするのか。開発チームは検討を重ねていった。開発段階では数多くの試作が行われ、実際に実物のものとして作った試作品は、ヒンジだけで4種類もあったという。
「携帯電話でもスライドの技術はあったが、ここまで大きなディスプレイを持ち上げるという構造はこれまでに経験がない。VAIOらしい品位を持ったイメージを損なわずに、剛性、堅牢性を実現することに苦慮した」(鈴木氏)。
左右の棒状のガイドを利用することでスムーズに移動。さらに、起こす動作を補助するスプリングや、起こした際にダメージを無くすダンパーなどを採用したほか、左右のスライドが差分なく動作するように、マグネシウムのプレートを用いるなどの工夫も凝らされている。
もちろん、ディスプレイと本体部を結ぶフレキシブルケーブルの堅牢性についても、検証を行った。「力を入れなくても動作させることで、ストレスを感じずに形を変えることができる」という。
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