日本人初のヒマラヤ"8,000m峰14座"完登を目指していたプロ登山家の竹内洋岳氏が、5月26日20時45分(日本時間。ネパール時間では17時30分)、14座目のダウラギリI峰(8,167m)の頂に立った。その腕に巻かれていたのが、カシオのアウトドアウオッチ「PROTREK(プロトレック)」シリーズの最新モデル「PRX-7000T」だ。なかば強引に、竹内氏に貴重なお話を聞いてきた。
PROTREKはこれまで、ヒマラヤの高峰で極限の登山に挑み続ける竹内氏の腕時計に対する哲学やニーズを吸収し、進化を続けてきた。最上級ライン「PROTREK MANASLU(マナスル)」シリーズ初のフルアナログ時計となったPRX-7000Tを、実際にヒマラヤ登山で使ってみてどうだったのか ?
時間や高度を「感じる」には、アナログがいい
―― これまで歴代のPROTREKを使ってきた竹内さんですが、初のフルアナログモデル「PRX-7000T」を使ってみて、いかがでした ?
竹内氏「すごく使いやすかったですよ。というのも、山ってデジタルの世界じゃなくて、アナログの世界なんです。例えば、日の出・日の入りの時間って、何時何分何秒と割り出されて決まっていますが、山では地形や天気によって明るくなったり、暗くなったりする時間が変わってくるわけです。
ルートだって、ゆるやかなところもあれば急なところもあるし、頂上までまっすぐ登ることもあれば迂回することもある。そんな数値だけでは表わせないアナログな環境の中で、『時間はあとどれだけ残されているだろう』とか、『頂上まであとどれぐらい登らなければならないだろう』という情報を知るには、デジタルよりもアナログのほうがいい。
高度についていえば、頂上まであと何千何百何十メートルと数値で表示されるより、『時針が"8"のところにきて、分針が"1"のところ、秒針が"6"のところに来たら頂上だ」と、"量"として感覚的に把握できたほうが、標高を感じることができるんです」
―― 標高を「感じる」って、独特な表現ですね。
竹内氏「山を登っているときって、時間も標高も、"測る"のではなく、"感じる"ことのほうが多いと思うんです。感じることで、状況を把握し、次の行動を判断することができる。PRX-7000Tは、時間と標高を同じように感じることができるので、私の登山にはすごく合っています」
―― ということは、従来のデジタルタイプのPROTREKよりも、PRX-7000Tのほうが優れていると ?
竹内氏「いや、そういうことではないんです。むしろ"計器"としての機能性や見やすさはデジタル時計のほうが上でしょうし、小型・軽量化の面でもデジタルが優位だと思います。つまりは、どちらが優れているかということではなく、使う人がどちらを選ぶか、なんです。
登山スタイルも同じで、よく登山界では『アルパインスタイルが優れていて、極地法が劣っている』なんて言われ方をするんですが、そうではないと。どっちがいいとか悪いとか、新しい古いじゃなく、単に登る人の選択や好みの問題なんです。それに方法がたくさんあれば選択肢が広がるから、いいことなんじゃないでしょうか。だから腕時計についても、私は時間や高度を正確に感じたいから、アナログモデルを選んでいます」
(*) 極地法
ベースキャンプからC1(キャンプ1)、C2(キャンプ2)と前進キャンプを建設しながら、物資の荷上げ、ルート工作、高度順化を行い、少しずつ頂上に迫っていく登り方。
(*) アルパインスタイル
ヨーロッパアルプスを登るのと同じように、必要最低限の装備だけを持って山頂を目指す、スピーディでシンプルな登り方。少人数、短期間で登るので、より困難性が高くなる。
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