ソフトバンクの決算

ソフトバンクは、売上高が対前年度比6.6%増の3兆2,024億円、営業利益が同7.3%増の6,752億円となり、2期連続過去最高の売上高を記録し、営業利益は7期連続最高益で、国内企業で3位という結果だった。

売上高の推移

EBITDAではKDDIを超え、初の1兆円を突破した

営業利益の推移

営業利益ランキングで、国内企業で3位

決算ハイライト

キャッシュフローの状況

端末販売としては、主力のiPhoneが好調だったことに加え、iPadやモバイルデータ通信端末なども堅調で、純増数は354万となり、他社に100万以上の差をつけた。累計契約数はソフトバンク単体では2,894万に達し、このままいけば今期には3,000万を突破する見込み。傘下に収めたウィルコムを合わせればすでに3,351万に達している。端末の出荷台数は1,168万台だった。

純増数比較

順調に契約数が回復しているウィルコム

両社を合わせた契約数

その結果、通信料売上も増収を続けている

データ収入の拡大をかねてより重視していた同社では、全体の通信料収入のうち、音声は前年度比微増の6,220億円、データ収入は同24%増の8,114億円となった。総合ARPUは同60円減の4,150円で、音声が同240円減の1,650円、データが同200円増の2,510円。最小限の減少幅に抑え、端末の伸びでカバーしたかたちとなった。

通信料売上では、データ収入の伸びが大きく、データARPU比率は第4四半期に65%に達した

解約率は通期で1.12%と高止まりしている。主力のiPhoneがKDDIからも投入され、KDDIの田中孝司社長は「貢献は高い」としているが、孫正義社長は「100万人行かれる(乗り換えられる)と覚悟していたが、解約してKDDIにMNPしたのは数万レベルですんだ」と説明する。だが、第3四半期に300億円、第4四半期に100億円を投じて、キャンペーンなどでの乗り換え阻止を実施している。

当時のボーダフォンジャパン買収にともなう膨大な純有利子負債は、2008年度には1.9兆円あったが、2011年度末の目標だった半減の0.97兆円を下回り、5,000億円規模まで削減した。支払利息も当初の1,123億円から622億円まで半減するなど、「財務体質の改善は達成した」と孫社長はアピールする。

純有利子負債は半減以下まで下げ、EBITDA倍率も大幅改善

このため、株主還元の実施を前倒しし、当初14年度に予定した増配を11年度分として実施し、従来の1株当たり5円から40円に増配する。当初予定より、増配も増やしたという。

従来の負債削減に加え、成長戦略と株主還元を実施。増配を前倒しする

設備投資額は、家庭用フェムト・リピーターを除いたフェムトなどの小型基地局を含んで19万まで増加させたことなど、連結通期では1,000億円近く積み増しして5,163億円だった。

基地局数の推移

3社の新戦略は

ドコモは、従来から「ダムパイプ(土管)化」を嫌う考えを繰り返し述べており、単純にスマートフォンの販売を伸ばすだけでなく、クラウドサービスを強化し、特定メーカーの端末に依存しないサービスを提供していく。すでにしゃべってコンシェル、通訳電話、メール翻訳機能、災害用音声お届けサービスなどを提供。こうしたサービスをさらに強化する方針だ。

通訳電話は、通常の音声通話のように話すと、サーバーで翻訳され、お互いの意思疎通が母語で行える。日本語と英中韓の相互翻訳が可能で、12年度中に仏独伊語を始め、7カ国語を新たにサポートする。メール翻訳機能は、同様にメールを翻訳する機能で、5月末にもサービスを提供。日本語と英中韓の相互翻訳を可能にする。

ネットワークだけ利用されるダムパイプ化を避けるために、ネットワークサービスを提供する

音声とメールの翻訳サービスを強化