この夏、ソニーの13型モバイルノート「VAIO Z」シリーズがフルモデルチェンジされた。そのコンセプトや仕様については既に多くの記事で紹介されているので繰り返すまでもないが、同社モバイルノートのフラグシップモデルであるZシリーズを全面刷新し、Sandy Bridge世代のプラットフォームを採用しながら大幅な薄型化・軽量化を実現した製品だ。

フルモデルチェンジを経たVAIO Zシリーズ

11型モバイルノートの「VAIO T」シリーズが長らく空席となっているため、ソニーの従来のラインナップでは「VAIO S」シリーズが高性能モバイルノートのメインモデルとなっていた。しかしSシリーズの重量は1.5kg~1.7kg台のため、毎日1日中PCを持ち運ぶようなヘビーなモバイルユーザーには若干厳しいものがあった。逆に軽量さを優先すると選択肢は「VAIO X」シリーズになるが、CPUがAtomのため性能面で満足できないユーザーも多かったことだろう。

この夏の新Zシリーズは、いわば従来のTシリーズ並みのモビリティとSシリーズ並みの高性能を併せ持つVAIOであり、薄型モバイルノートという市場を切り開いたソニーらしい製品が久々に帰ってきたという印象だ。

今まで以上の薄型で、フルスペックを実現

従来のVAIO Zシリーズが重量約1.37kg、厚さ約23.8~32.7mmだったのに対し、それぞれ約1.165kg、約16.65mmとスリムで軽量になった新VAIO Z。携帯性だけを考えれば手放しで歓迎できる進化であるが、従来であれば、厚さ2cm台の薄型ノートでは熱設計に余裕のある低電圧版・超低電圧版のCPUが使われることが通例であり、パフォーマンスの面では通常電圧版CPUを搭載するPCに比べ物足りなさを感じることが多かった。つまり、かつての薄型モバイルノートは「持ち運びやすさ」「かっこよさ」といったメリットの引き替えとして、性能を犠牲にせざるを得なかったと言うことができる。

大幅な薄型軽量化を実現し、このクラスのノートPCとしてはかつてないモビリティを実現

ところがここ1年ほどの間に、「dynabook R」シリーズや「ThinkPad X1」など、薄型モバイルノートでも標準電圧版のCPUを搭載した製品が見られるようになってきた。久々のフルモデルチェンジとなった新VAIO Zもこの流れに乗るもので、オーナーメードモデルでは以下5種類の標準電圧版CPUから選択することが可能となっている。

名称 動作周波数 ターボ・ブースト時
Core i7-2620M 2.70GHz 最大3.40GHz
Core i5-2540M 2.60GHz 最大3.30GHz
Core i5-2520M 2.50GHz 最大3.20GHz
Core i5-2410M 2.30GHz 最大2.90GHz
Core i3-2310M 2.10GHz

ただ、先に挙げた製品に比べてVAIO Zは断トツで薄い。先代のVAIO Zを含めほとんどのモバイルノートのスペック表は「約○○~○○mm」と最薄部・最厚部の併記になっていたのに対し、今回のVAIO Zは手前から奥までフルフラットのデザインを採用しており、スペック表でも「約16.65mm」と掛け値なしの薄型ボディを実現している。

ヒンジ部の出っ張りなどがないフルフラットのボディ。本体にはUSB 3.0兼Power Media Dockポート×1、USB 2.0×1、HDMI出力、アナログRGB出力、LAN、ヘッドフォン端子を備える

LANポートは可動式のカバーを備える芸の細かい作り

また、ボディの構成は、カーボン素材を用いた天板と底板の間に、キーボード周辺およびパームレストを一体形成するアルミニウム板が挟まれる格好となっている。それぞれの部材の剛性は極めて高く、本体の手前角1点を持ち上げてもきしみなどは感じられない。13型モバイルのVAIOとしてはかつてない薄型モデルではあるが、性能と強度の両面で制約や不安を感じることのないものに仕上がっている。

背面には小さな突起が設けられており、ディスプレイを開くとこれが支点となって底面に通気スペースが確保される

底面に設けられたファンの吸気口も六角形で、本体の形状ともデザインイメージを統一

バッテリーはビスによる固定のため頻繁な取り外しは想定されていないが、コイン1枚で回せるビスを採用しているため出先での交換も可能

同クラスのサイズとなる13インチ版MacBook Airとの比較。ゴム脚の高さの違いがあるが、本体最厚部の厚さはほぼ同じ。フットプリントはVAIO Zのほうが若干小さい

ディスプレイの解像度は従来のVAIO Zシリーズと同じく1600×900または1920×1080から選択可能。ビジネスライクなモバイルノートだとノングレア処理のため全体的に白っぽい表示になってしまっている機種も少なくないが、VAIO Zでは映り込みを抑えながらも鮮やかな色彩を得られる低反射コート仕上げとなっており、写真の補正なども行いやすい。また、1920×1080のみAdobe RGBカバー率96%の色域を実現している。