Android 3.2
筆者の把握している範囲でAndroid 3.2に関する話が初めて登場したのは、中国のHuaweiが今年6月にシンガポールで開催されたCommunicAsia 2011で発表した「Media Pad」関連だろう(参考記事) 。現在、既存のAndroid 3.1端末にも3.2のアップデータ提供がスタートし、日本でもイー・アクセスが初の3.2搭載タブレット「GALAPAGOS (A01SH)」(シャープ製) を発表するなど、トレンドが3.2へとシフトしつつある様子がうかがえる。
時期的にみて、おそらくAndroid 4.xのIce Cream Sandwichが登場する直前の、ほぼ最終バージョンになるとみられる。その根拠として、Android 3.1から3.2への変更点が非常に少ないこと、ほぼ半年周期で大枠となるバージョン更新が行われているAndroidが、3.0のリリースから半年以上経過していることなどが挙げられる。変更点が少ないということは、すなわち当面の開発計画が完了に近付いているということ。そして順当にいけば、今年2011年第4四半期にもIce Cream Sandwich搭載の新Nexusシリーズが市場投入される可能性が高いと考えられる。なぜIce Cream Sandwichをこの時期にリリースしなければならないかというもう1つの理由は、Android 3.2までに累積された変更点をスマートフォン向けのOSに後方移植(Back-portingともいわれる)して、バージョン統合によるリソースの一本化を行う必要があるからだ。これにより、スマートフォンメーカーの開発ターゲットをIce Cream Sandwich世代へと引き上げることができる。前述のAPI Levelの説明にもあるように、Honeycombで強化された基本機能の数々をフィードバックして、スマートフォンのAPI Levelを少なくとも13以上に引き上げなければならない。その目安となるのが第4四半期というのが筆者の予想だ。
さて変更点こそ少ないとはいえ、Android 3.2では次のIce Cream Sandwichにつなぐための重要な変更が行われている。その1つが「Screens Support API」だ。基本的には従来の画面制御APIに準拠したものだが、「size」「density」といった画面サイズや密度で画面要素を定義するだけでなく、利用可能な描画領域をより細かく取得し、ドット単位でアプリ側から制御可能になる。こうした変更が行われた理由はAndroidの仕組みにあり、例えば5インチと7インチのタブレットはAndroid OSの定義上ではどちらも同じ「large」の画面サイズであり、本来両者に存在する画面解像度の違いは識別できず、一緒くたに扱われる。アプリは異なる画面サイズごとにプロファイルやレイアウトを設定できるが、この仕様では5インチと7インチタブレットは同じ扱いにされてしまう。そこでアプリ側が画面サイズに関するより細かい情報を入手できるようにすることで、個々に微調整が可能な余地を用意したのがAndroid 3.2での変更点ということになる。これはスマートフォンに限らず、タブレットからTVまで、さまざまな領域で急速にAndroidの利用が拡大したことを受けたもので、Android 3.2は「1つのOSで複数のスクリーンサイズをカバーする」ことを目的としたOSであることがわかる。これは、Ice Cream Sandwichへの布石になるものだと筆者は考える。