Wii Uはやっぱりすごかった、新コントローラで変わるゲーミングの世界

E3参加者ならではの特権といえば、最新ゲームの試遊のほか、発表されたばかりの最新ゲームコンソールを実際に触って確かめられることが挙げられる。今回の場合、直前のプレスカンファレンスでソニー(SCEI)からは「PlayStation Vita」、任天堂からは「Wii U」が発表されていたわけで、E3会場でも実際に見て触れて確かめることが可能だった。

「PS Vita」については以前のレポートにあるように、発表直後のプレスカンファレンス会場でのテストプレイは撮影禁止だったこともあり、大行列に並ぶのは諦めていた。E3でも再び触るチャンスがあったのだが、今回は取材予定をほぼギリギリで組んでいたこともあり、結局会場の行列に並ぶ時間は作れなかった。今回は最終日午前中の時間を使って、なんとか「Wii U」のみ体験することができたので、簡単に紹介しておこう。

SCEのブースでは「PlayStation Vita」のプレイアブルコーナーを設置。後述の任天堂ブースの「Wii U」同様にかなりの待ち行列ができているがわかる

Wii Uについて簡単におさらいしておくと、このゲーム機は「Wii」の後継にあたり、上位互換性が維持される一方で、1080pのHD出力が可能になるなどハードウェア面が大幅に強化されている。特徴的なのはその専用コントローラで、従来のコントロールパッドの中心部に6.2インチのタッチパネル式液晶スクリーンが追加され、これをゲーム画面や操作画面としてそのまま利用できる。

そして任天堂ブース。Wii Uのプレイアブルコーナーに到達するために、最終日9日の展示場開幕直後に同ブースに突撃して、待つことおよそ1時間15分ほどで実機に触れることができた。一般参加者ではほぼ誰よりも早く行列に到達することができたが、展示関係者はオープン前に入ることが可能なため、この人数だけで1時間超の待ち行列ができていたということになる

従来、タッチパネルにあたる操作はリモコンの赤外線センサーを使って画面をポイントする形で行うことが多かったが、これがより直感的に操作可能になったと言えるだろう。ただ、これはあくまでコントローラであり、実際の処理や画像出力は別途本体の据え置き型ゲーム機で行われている。この詳細画像はまだ任天堂から公開されておらず(「Wii U」の解説でもイメージ画像だけ)、いずれ正式発表の段階で紹介されるだろう。

とはいえ、「Wii U」の特徴を語るうえで最も顕著な部分がコントローラにあると言える。コントローラはタッチスクリーンのほか、加速度センサーとジャイロスコープを加えた6軸モーションセンサーを備えている。これは加速度センサーのみだった「Wii」時代のリモコンよりも高い精度の位置や向き検出が可能であり、実際のゲームに応用が可能だ。

「Wii U」の専用コントローラはこんな感じ。まだデモ用のデザインのため、コントローラの周辺ポートの内訳は変更される可能性がある。本体のアナログスティックだが、これはスティックを倒して入力するタイプではなく、ボタン状の入力装置を中心から指で移動させることで、その中央部からの距離で移動量を入力する形のものになっている。コントローラからの入力はこのスティックや十字ボタンのほか、コントローラの傾きや位置で移動を指示することもできる

「Wii U」の発表翌日に行われたプレスカンファレンスでは、ゲームデベロッパーらによる新コントローラを使ったゲームのデモが多数紹介された。例えばタッチスクリーンでスパイゲームの索敵や行動指示を細かく与えたり、あるいはプレイヤーの視点移動をコントローラの持ち方で表現したりといった感じだ。この場合、プレイヤーはコントローラの画面を覗き込む形でゲームをプレイすることになり、コントローラを上下に動かせば視線がその向きに、左右に動かせばゲーム中のプレイヤーが向きを変えるといった形になる。これで足下や上空から攻めてくる敵にすばやく反応したり、より直感的に動くことが可能だ。

こうしたコントローラの使い方はゲームプレイの方向性を大きく変える可能性がある。TV画面と異なる情報を手元の液晶で表示して、適時最適な形で利用できるリモコン代わりにすること。またピーピングホール(覗き穴)のように画面を見ながら位置を移動させることで、従来にはない操作感覚を得ることができる。また、ここで紹介したプレイ動画にもあるように、TVの大画面とコントローラの小さな画面で別々の映像を出力することで楽しめるゲームもある。コントローラ側により多くの画像情報を与えることで、ゲームマスター的な役割を担わせることも可能だ。

動画
『Battle Mii』という名称の対戦ゲーム。リモコンとヌンチャクを持ったプレイヤーが2人1組となり、Wii U専用コントローラを持った宇宙船と戦う。リモコン側のプレイヤーが分割スクリーンによるすぐまわりの視点しか見えないのに対し、宇宙船側はより高々度を飛行できるため、視覚的に優位に立っている。もう1つのポイントは、宇宙船の操作はスティックだけでなく、コントローラを持ってプレイヤー自身が上下左右に視点を移動することで上下視点の変更や左右回転が可能になっている点だ。このあたりは面白い
動画
こちらは『Chase Mii』という追いかけっこゲーム。リモコンとヌンチャクを持ったプレイヤー4人で、Wii U専用コントローラを持ったキャラクター(マリオ?)を追いかける。プレイヤー4人は分割スクリーンの自分まわりの視点しかないのに対し、コントローラ側のユーザーは専用スクリーンで全体の状況を把握できる

任天堂の岩田社長は「ゲームをより広く、より深く、あらゆるユーザーに訴求していく」と表明していたが、こうした新しい使い方はライトゲーマーとヘビーゲーマーの両方に訴求できる可能性が高く、言葉に偽りなしという印象だ。実際、プレスカンファレンスで紹介された例がUBIによるかなりヘビーなゲームだったように、開発者自身がいろいろな可能性を模索しながら楽しんで作っている様子もうかがえた。

しかし、「Wii U」にも死角はある。試みとしては面白く、すでにゲーマーではない筆者も非常に興味を惹かれた。だが、ソーシャルゲームやカジュアルゲームの氾濫にみられるように、すでに世間がライトゲーム志向に進んでいるなか、わざわざ多くの周辺機器を買い足す必要のある「Wii U」でどこまでユーザーがついてくるのかといった疑問がある。リモコンや「Wii Fit」など既存のWii周辺機器をそのまま使えるのがメリットとなっているが、あとは「Wii U」本体が専用コントローラ付きでどれくらいの価格になるかにかかっているだろう。携帯ゲーム機やスマートフォン主流のいま、200~250ドル程度がゲーム機を高いと感じるボーダーになっているからだ。