米カリフォルニア州ロサンゼルスで6月7~9日の3日間にわたって開催されたElectronic Entertainment Expo (E3) 2011だが、数年前の規模が大幅に縮小されていたブランクの2年から比較して展示会場もかなり大きな規模になった。全盛期ほどではないが、往年の活気は戻りつつあるように思える。今回はプレスカンファレンスの内容を振り返りつつ、展示ブースで気になったモノをレポートしていこう。

<そのほかの【E3 2011】関連記事はこちら>
【E3 2011】新型UIの可能性が感じられたE3、Kinectにちょっぴり先の未来を見た
【E3 2011】任天堂の新型ハードは「Wii U」、2012年に登場へ
【E3 2011】動画で見る「PlayStation Vita」のローンチタイトル
【E3 2011】ついにNGPこと「PlayStation Vita」の正式名と提供時期・価格が発表 - ソニー

E3 2011の会場となったLos Angeles Convention Center

ゲーム機もクラウドの時代

あらかじめお断りしておくと、最近の筆者はあまりゲームをプレイしない。渡米する機会が増えた2000年以降はほとんど最新のゲームには触れておらず、どちらかといえばオールドゲーマーの部類に属する。然るに、今回は最新のゲームタイトルの話題はほぼ登場せず、オールドゲーマーの視点から「ビジネス的に面白いもの」「アイデア的に面白いもの」「ちょっと気になったもの」を紹介していく。

まず最初に紹介するのは「On Live」だ。昨年のE3にも展示され、米国では経済紙などでもたびたび紹介された「クラウド」を使ったゲーム機である。正確には「クラウド上でゲームを楽しめるサービス」だと言えるだろう。「On Live」におけるゲームの本体はクラウド側、具体的にはシリコンバレーの本社または各データセンターに設置されたサーバ上で動作しており、プレイヤーはそこで生成されたゲーム画像をTVやPCなどのデバイスで受け取って表示する形となる。そのため、「On Live」に必要なのはこの信号を受け取る小型コンソールと画像を表示するTV、そしてプレイヤーが操作するコントローラの3点だ。

データ受信器とTVは、PCやモバイルデバイスなどのハードウェアと専用ソフトウェアを組み合わせれば、それで代用することも可能。仕組み的にはコントローラで入力した信号をネットワーク経由でサーバへと送信し、それに応じた画像をリアルタイムで手元へと逐次送ってくる形だ。動きは非常にスムーズで、プレイしてみた範囲ではネットワーク送受信に関わるラグはほとんど感じない。説明によれば、3Mbps程度の下りネットワーク回線があればHD解像度でも快適にプレイが可能だという。

「On Live」のすごい点は2つある。1つはプレイヤーの操作するデバイスを選ばないこと、もう1つはソーシャルネットワークの部分だ。「On Live」の代表として紹介されているのが、小型の2.5インチHDDに酷似した小型コンソールだが、実際にはPC向けのソフトウェアでWindowsやMacでのプレイが可能なほか、スマートフォンやタブレットなど、ソフトウェアとネットワークさえあれば、あらゆるデバイスで実行できる。またVizioとの提携で、TV内に「On Live」そのものを組み込んでしまう計画もあるという。

そして注目なのはネットワークサービスの部分で、ゲームを通じて友人とコミュニケーションしたり、協力プレイやマッチングなどが可能。だが最も"らしい"部分はリプレイ動画の共有機能で、ゲーム中に珍プレイやスーパープレイを体験した場合、すぐにその結果をアップロードすることで「On Live」ユーザー全体で共有してFacebookライクな「Like」ボタンでレーティングが可能となっている。

ここ最近盛んにプッシュされており、昨年のE3でも展示が行われていた「On Live」。手元のコンソールはネットワーク経由で受信した画像のTVへの出力とコントローラ(PlayStationなどで標準タイプのもの)の入力処理を中継するだけ。また、ローカルでの処理がほとんどないため、このような簡易モジュール程度の機材で済む

このあたりはゲーム会社が運営するネットワークサービスよりも、数多あるインターネット上のSNSのノリに近い。またゲームセレクト時に現在プレイ中の他のプレイヤーの様子をのぞき見できる「Arena」など、よりゲームを楽しませようという仕掛けがあるあたりに好感がもてる。

「On Live」で強力なのがソーシャルネットワーク機能だ。サブスクリプションサービスでゲームの月額固定料金での配信を受けるだけでなく、オンライン上の友人とのコミュニケーションを楽しむことができる

動画
「On Live」でのデモプレイのビデオ動画。サーバはシリコンバレーの米カリフォルニア州サンタクララ市に存在し、そこから約600kmほど離れたロサンゼルスのE3会場まで、この位の速度で画像データを転送してゲームを実行している。実際にゲームをやってみたが、FPSであればほぼラグは感じない

現在サービス対象地域は北米だが、欧州への市場拡大とベータテストを実施中だという。ゲームシステム自体はWindowsをベースとしており、PCゲームの移植は比較的容易とのことだ。今後どのタイミングで日本へとやってくるのかわからないが、非常に将来が楽しみなサービスではある。ひょっとしたら、近い将来には「ゲーム機」といった概念がなくなり、プラットフォームごとの囲い込みが過去のものになっているかもしれない。

その特性上、「On Live」は実行ハードウェアを選ばない。通常のTV用アダプタのほか、機能内蔵型TV、タブレット、PC (WindowsとMacなど)、スマートフォンまで、あらゆるマシン上でソフトウェアやアプリを動かしてサービスを利用できる。必要なのは一定以上のネットワーク帯域だ(推奨は下り3Mbps以上とのこと)。現在100タイトル以上が登録されており、月ペースで4~5本以上新規登録が行われているという