iOSプラットフォームではビジネスモデルも変わる

今後、iPod touchが携帯ゲーム機としてのポジションを確立するためには、引き続きデベロッパーが参入し、ゲームを発売するような環境を用意しなければならない。とくにiPod touchの場合、App Storeでアプリを販売するというビジネス形態はこれまでゲームパブリッシャー/デベロッパーが取り組んできた市場とはその様相が大きく違う。たとえばアプリの単価にしても、App Storeでの販売価格は数百円というものが多く、数千円が基本のゲーム機向けタイトルとは収益構造が大きく違うはず。またプロモーションにしても、専門誌やマス広告で一般ユーザーに広く訴求するのではなく、口コミが大きな役割を果たしている。

前述の「デビル メイ クライ 4 リフレイン」のApp Storeでの価格は、配信記念セール価格で350円。パッケージソフトにくらべればはるかに単価が安いので、新たなビジネスモデルを考える必要がある

そういった、これまでと勝手が違う市場にもかかわらず、デベロッパーに「参入しよう」と思わせるポイントはどこにあるのか。エリス氏は「それもやはりApp Storeの存在です」という。App Storeが90カ国に広く展開されており、物理メディアの流通のことを気にすることなくビジネスができること、そこにデベロッパーは魅力を感じているのではないか、というのだ。

ゲームの価格についても、「そこにはいくつかのビジネスモデルがあると思います。無料のゲームや低価格のゲームもたくさんありますが、その場合はゲーム内広告という選択があります。われわれはiAdという広告システムも用意していますから、そこから利益を出してもらうことができます。ビジネスモデルにおいても、開発や流通におけるのと同様にそれぞれにあったオプションを用意しているというのがiOSプラットフォームの長所だと思っています」と語った。

iAdは、iOSプラットフォームのゲームを収益化するひとつの手段となる

ライバル次世代機のリリースを受けて立つ

さて、これまでのところは順調に伸びてきた携帯ゲーム機としてのiPod touchだが、先述のように今年はニンテンドー3DSやNGPといった次世代機が登場する年となる。これらに対してのiPod touchのアドバンテージを問うと、まずエリス氏が挙げたのはRetinaディスプレイ。「Retinaディスプレイの解像度とピクセル密度は、次世代機を上回っています。これはやはりゲームにのめり込ませるという点で大きい」とのこと。さらに「あとはやはりApp Store。デバイス自体はそれぞれに優れているところがありますが、物理的なメディアを管理しなくていい、24時間好きなときに好きなところからアクセスできるという便利さは大きいでしょう」と付け加えた。App Storeからの購入については、アプリの購入情報がアカウントに関連付けて管理されていることで、複数回のダウンロード、他のパソコンからのダウンロードなども問題なく行えることもメリットのひとつとして指摘した。

今回、発売直後/発売前のゲームとして紹介したものは、カプコン、Epic Games、EAといったそうそうたるデベロッパーが開発したものだ。その一方で、パッケージを広く流通させるような体力のない小さなメーカーや個人なども、App Storeを通じて世界中のユーザーにリーチできる。今回のインタビューで再三強調されたように、デバイスの魅力だけでなくApp Storeによる新しいビジネスの可能性が、デベロッパーを惹きつけ、携帯ゲーム機としてのiPod touchの可能性をさらに広げていくことになりそうだ。