だいぶ時期を逸した嫌いはあるのだが、昨年12月15日にAMDはCaymanという名前で知られていたAMD Radeon HD 6900シリーズを発表した。AMDのハイエンド品の常として品不足感は強いものの、昨年末から市場に出回っており、最近の市場価格はRadeon HD 6970で4万円あたり、Radeon HD 6950で3万円ちょいあたりまで落ちつつある。とはいえ、なにせまだ登場即完売が続いているので、販売店によってはもう少し値段が高くつけられている場合もあるようだ。さて、Caymanシリーズの内部解説などは簡単にすでに行われていることだし、このあたりはあっさり省略させていただき、早速性能評価をご紹介したいと思う。
Photo01: Radeon HD 6970搭載の「MSI R6970-2PM2D2G D5」。パッケージカラーは白で、これにあわせてカードも白になっている。3DMark11 Advanced Editionが付属するのが特徴。 |
Photo02: 同社独自のオーバークロックユーティリティ「Afterburner」をフィーチャーした外観である。 |
Photo03: MSIの製品の特徴は、すべてのコネクタ部にカバーが付属していること。この画面でもCrossFireのコネクタにはちゃんとカバーがついている。 |
Photo04: バックパネルはフラットだが、このフラットにするためのカバーが結構な重量である。とはいえ稼働中はそれなりに暑くなるあたり、放熱もかねているのかもしれない。電源コネクタは2×4と2×3の300W構成。 |
Photo11: ちなみに同社のWebページの記載では「ボード消費電力」が最大190Wという微妙な表記になっているが、これは補助電源コネクタ経由での最大消費電力が190Wということだろうか? |
Photo12: 背面の構成も同一。 |
Photo14: Radeon HD 5850/5870とかではパッケージそのものが変わっていたが、Radeon HD 6950/6970では寸法も完全に同一。 |
Photo15: 2つのSLIコネクタの左脇にあるのが、(BIOS書き換えなどで話題の)BIOS切り替えスイッチ。 |
テスト環境
今回は評価用にエムエスアイコンピュータージャパンより「R6970-2PM2D2G D5」(Photo01~04)と「R6950-2PM2D2G D5」(Photo05~08)を、またアスクから「SAPPHIRE HD6970 BFBC2 VIETNAM GAME EDITION」(Photo09~12)をお借りした。他に後追いの形でAMDのRadeon HD 6950/6970 Referenceを利用している(Photo13~17)。ただいずれの製品に関しても、
SP数 | GPU Core Clock | Memory Speed | |
---|---|---|---|
Radeon HD 6950 | 24SIMD/1536ALU | 880MHz | 5.5Gbps/256bit |
Radeon HD 6970 | 22SIMD/1408ALU | 800MHz | 5.0Gbps/256bit |
という構成は変わらず(もちろんMSIのAfterburnerとか、Catalystに付属のATI Overdriveを使わない、という条件での話である)、簡単にテストを行った限りでは製品間の性能差は認められなかった。このため、テストは複数製品を混在する形で行った(特にRadeon HD 6970のCrossFire環境は、MSIのR6970-2PM2D2G D5とSAPPHIRE HD6970 BFBC2 VIETNAM GAME EDITIONを組み合わせて行っている)。その他のテスト環境は表1に示す通りだ。
■表1 | ||
CPU | Intel Core i7-2600K | AMD PhenomII X6 1100T |
---|---|---|
M/B | Intel DP67BG | ASUSTeK M4A89TD PRO USB3 |
BIOS | BGP6710J.86A.1780 | Version 1006 |
INF | INF_allOS_9.2.0.1019_PV | AMD Chipset Driver V3.0.765.0 |
Memory |
Crucial BallistiX BL25664BN1608.Z16F63 DDR3-1600 CL8 2GB×2 |
|
Video / Driver |
・Radeon HD 5870 Reference ・Radeon HD 6950 Reference ・Radeon HD 6970 Reference ・MSI R6970-2PM2D2G D5 ・MSI R6950-2PM2D2G D5 ・SAPPHIRE HD6970 BFBC2 VGE |
AMD Catalyst 10.12 Preview for Windows 7 Featuring the new Catalyst Control Center |
・NVIDIA GeForce GTX 580 | Version 263.09 | |
HDD | HGST Deskstar HDP725050GLA360 500GB×2 (RAID0, NTFS) | |
OS | Windows 7 Ultimate 64bit 日本語版( + Service Pack 1 RC) |
実は最初は、「AMDのグラフィックスカードなのだし、AMDのハイエンドプラットフォームならば問題なかろう」とPhenom II X6 1100Tでテストを行っていたのだが、測定途中でいろいろ疑念が生じる(これは後述)する結果になった。で、これとは並行してこちらでSandy Bridge環境のテストを行っており、こちらの結果とも併せることで疑念の解消に役立つ方向が見えてきたため、先の原稿執筆「後」に、今回のテストを追試するかたちでRadeon HD 6900シリーズの評価を行った(このためにベンチマークを開始したのが今年に入ってからとなり、結果として原稿がこんなに遅くなってしまったことはご容赦いただきたい)。
ちなみにグラフ中の表記であるが、
HD 5870 | Radeon HD 5870の単独動作 |
---|---|
HD 6950 | Radeon HD 6950の単独動作 |
HD 6950 CF | Radeon HD 6950×2のCrossFire環境 |
HD 6970 | Radeon HD 6970の単独動作 |
HD 6970 CF | Radeon HD 6970×2のCrossFire環境 |
GTX 580 | GeForce GTX 580の単独動作 |
である。昨年レポートした様に、Radeon HD 6800シリーズではGeForce系のハイエンドはおろか、Radeon HD 5870にも微妙に及ばない程度の性能でしかなく、Radeon HD 6900シリーズでGeForce系ハイエンドであるGeForce GTX 580に追いつくかどうか、というあたりが評価のひとつのポイントである。下馬評では「単独では難しいがCrossFireならば」なんて話もあり、それもあってCrossFire環境がどの程度有効かも比較してみた。Radeon HD 5870の結果はそういう意味ではリファレンスと考えていただきたい。
テスト結果
さて、次のページからいよいよテスト結果であるが、今回はだいぶ新しいゲームベンチマークも導入したので、全てのゲームベンチマークでのデータの取り方も改めて紹介することにしたい。