現在考えうる最高のスペック
まずは本機のスペックを確認しておきたい。本体サイズ/重量はW337×D241.5×21.1~25.9mm/約1.79kgというもので、特に本体の薄さが特筆ものだ。光学ドライブを搭載した14.1型ワイドのA4ノートサイズでありながら、これは同社B5ノートの「ThinkPad Xシリーズ」に迫る薄さである。2kgを大きく下回る重量も、合格点を与えることができるだろう。面積のわりに薄くて軽いため、実際の感覚ではスペック以上に軽く感じることができ、気分的にも持ち運びたくさせてくれる。
その中身が重要なのだが、プラットフォームはCalpella(開発コードネーム)であり、Arrandaleことモバイル向けIntel Core i5を搭載した最新世代を採用している。このCPUはご存知の通り、CPUパッケージ側にグラフィックス機能「Intel HD Graphics」を統合したものだ。また、今回の試用機では搭載されていないが、T410sのラインナップには、内蔵/外付GPUで切り替え可能なSwitchable Graphicsの仕組みを利用して、NVIDIAのGPU「NVS3100M」を搭載できるモデルも用意されている。
なお、このNVS3100M、手元に実機は無いためカタログ上のスペックにはなるが、GT218/N11Mの開発コードネームで知られるビジネスノート向けGPUだ。SP数は16基、デスクトップで言えばGeForce GT 210、ノート向けでいえばGeForce GT 210M相当のGPUコアで、Direct3D 10.1(DirectX 10.1)に対応。VP4と呼ばれるNVIDIAの第4世代のデコードエンジンを内蔵し、HDのMPEG4 AVC/WMV(VC-1)/DiVXなどのハードウェア・デコードをサポートしているというものである。
T410sが前世代機「ThinkPad T400s」や、コンセプトが似た「ThinkPad X300/301」と決定的に異なるのは、CPUよりも、このGPU構成ではないかと思う。CPUの方も、新プロセスかつ通常電圧版で、Turbo Boost機能まで備えたCore i5であり、T400のCore 2 Duoや、X300/301の低電圧版CPUから比べると大きくパワーアップしているが、外付けGPUの搭載の方がインパクトは大きく感じる。そもそもThinkPad Tシリーズがデスクトップ級のパフォーマンスとうたわれた所以が、外付けGPU搭載モデルの存在に拠ったところが大きかったからだ。筆者は、T410sのアイデンティティは、GPUモデルを「s」付きの「T」シリーズで実現できたところでは無いかと思っている。
さて、ディスプレイも重要なポイント。サイズは14.1型ワイドとなっており、解像度は最大で1,440×900ドット。欲を言えばWUXGAクラスも期待したいところだが、14.1型で縦解像度900ドットを確保した16:10比率のディスプレイは、複数ウィンドウを開いたマルチタスク作業で使っても十分な領域であり、競合他社のA4ノートと比較しても満足できる仕様だ。一般的なデスクトップ環境と比べ、ドットサイズこそ小さいが作業領域の感覚は近い。さらに、重量は多少増えてしまうが、Windows 7で脚光を浴びるマルチタッチ機能付きディスプレイを選択できるモデルもラインナップされている。
気になるのはストレージドライブである。試用機では250GBで5,400rpmの1.8インチSATA HDDが搭載されていた。ThinkPadオーナーにとっては、ストレージデバイスは将来に渡って交換できてナンボな部分が大きいのだが、ストレージの搭載スペースが1.8インチというのは少々やっかいだ。1.8インチHDDは2.5インチに比べれると入手性が低く、速度でも劣ってしまう。解決策としてT410sでは1.8インチでも高速なSSDの選択肢が用意されるが、アフターマーケットでの入手性では1.8インチSSDもそれ程良いとは言えない。本体購入時のCTOオプションでSSDを当初から搭載してしまうことがベストだが、今後1.8インチSSDの入手製が向上するような市場が広がりにも期待したい。