世界初ゆえに苦労した端末のチューニング
世界初のセパレートスタイルゆえに、チューニングには苦労を重ねた。先に挙げたBluetoothの接続などもその一例。井上氏の「通常の機種の1.5倍~2倍大変でした」という言葉からも、努力のあとがうかがえる。また、合体させた時の重量バランスにも気を配った。井上氏と古木氏は次のように口をそろえる。
「本体側は、なるべく重たい部品を下に持ってくるようにしています。実は開発時には折りたたみ型も検討したのですが、スライドの方がまだ重心を下にしやすかったんです」(井上氏)
「合体させた時のバランスは課題でしたね。キー側の電池も、なるべく下に配置するようにしています」(古木氏)
さらに、なるべく端末の中心を持つよう、スライド量を最適化させている。キー部分の面積が狭いと下の方を握ってしまい、バランスが悪くなってしまうというのが、その理由だ。デザインに関しても、合体させた際のボリューム感を打ち消す工夫が求められた。
「普通に上下をくっつけただけだと、相当大きくなってしまいます。部品を新たに開発したり、ボリューム感を見せないデザインにするなど、苦労しました」(井上氏)
目標はアクセサリーでの世界観拡大
このセパレートスタイルを活かし、富士通は本体に取り付けるプロジェクターを発売する予定だ。プロジェクターは「暗号化し著作権は保護しているので、本体の画面に映るものは全て投射できます」(井上氏)という。分離してBluetoothで接続することも可能だが、「この場合は権利問題以外に帯域も限られているので、写真やオフィスドキュメントだけ」(古木氏)になる。ちなみに、プロジェクターを本体と合体させると、キーをリモコン代わりに使えるそうだ。寝ながら天井にワンセグを映して観るといった使い方もできそうだ。
今後は、「サードパーティの方々に、オプションのアクセサリーを作っていただけるよう、働きかけていく」(古木氏)という。法人からの声もかかっており、本格的な周辺機器が登場する可能性もありそうだ。また、井上氏は「子機のように本格的なものではなく、本体側の背面に取り付けるジャケットと電池が一体になったような、カジュアルな周辺機器をどこかに出してほしいですね」と期待する。
「新しい形なのでどういう使われ方をするのかにも、非常に興味があります。ぜひユーザーと一緒に、オプションやスタイルを作っていきたいですね」(古木氏)
この新提案がユーザーにどう受け入れられるのか。間近に迫った発売が、今から楽しみだ。