電子コンパスや音声コントロールなどをチェック

電子コンパスの搭載や、音声コントロールも「iPhone 3GS」のみの対応だ。前者は、その名のとおり、方角を指し示す機能のこと。「コンパス」アプリでは、「真北」と「磁北」を設定できるほか、ここから「マップ」の呼び出しが可能。さらに、マップで現在地表示ボタンをホールドすると、端末の方角に合わせて画面が回転する。初めて訪れた場所では、方向感覚を失うこともあるが、そういったシーンで重宝しそうだ。なお、筆者が試した限りでは、かなり正確に方角を指し示していた。

アウトドアにも使えそうなコンパス

マップの方向も、電子コンパスと連動する

もう1つの音声コントロールは、電話やiPod(音楽再生)を音声で操る機能のこと。例えば、「○○○○へ電話をかける」や「○○○○、電話」としゃべりかけると、端末側でその声を解析し、実際に電話をかけてくれる。自然言語もある程度のパターンが登録されているようで、電話の代わりに「ダイヤル」と言っても認識された。音楽も同様で、「ミュージックを再生」や「音楽を再生」と話しかければいい。ただ、筆者が試した限りでは、曲名やアーティスト名の認識率は、電話ほど高くなく、楽曲が再生されないこともままあった。

ホームボタンを長押しすると音声コントロールが始まる

音声コントロールで「再生中の曲名は? 」と聞くと答えが返ってくるが、読み方を間違えていることも。「orange pekoe」というアーティスト名を「おらんげぺこえ」とローマ字読みしたのは、愛嬌があるともいえるが……。このケースでは、読みを間違え、結果として音声を認識できなかったようだ。ただ、「東京事変」や「モーツァルト」は割りと正確に聞き取る反面、「宇多田ヒカル」は一回も再生してくれないなど、少々クセがある。もしかしたら、何らかの"コツ"をマスターする必要があるのかもしれない。様々な機能を進化させてきたアップルだけに、今後の精度向上に期待したい。

「iPhone 3GS」のみの機能は、まだまだある。ブラウザや音楽などの連続使用時間が伸びたことや、「アクセシビリティ」の搭載、「Nike + iPod」のサポートなどがそれだ。新たに「OpenGL ES2.0」に対応し、ゲームなどのコンテンツがさらにリッチになる可能性も秘めている。液晶の処理が変わり、指紋がつきにくくなった点も、細かいが常用するユーザーにはありがたい。指紋がつきにくくなっただけでなく、液晶クリーナーでさっと拭くだけで、すぐに汚れが取れるのもうれしい。

「Nike + iPod」や「アクセシビリティ」もサポート

「iPhone 3GS」と「iPhone OS 3.0」でユーザー層も変わる!?

外観の変化が(ほとんど)ないため、"地味"と受け取られがちな「iPhone 3GS」だが、真骨頂はそこではない。数字や見た目で分かりづらいが、「iPhone 3GS」を一度触ってしまうと、以前の「iPhone 3G」に戻りづらい。そう思えるほど、快適さは劇的に向上している。これは、ケータイの新機種というより、スペックの上がったコンピューターで新しいOSを走らせる感覚に近い。アップルが一貫してiPhoneを「携帯電話を再定義した」といってきた理由の一端を理解できた気がした。

別の見方をすると、細かな改善の積み重ねで、今までiPhoneやスマートフォン全般を敬遠していた、一般のケータイユーザーに受け入れられる可能性が高くなったと感じる。おサイフケータイや赤外線を常用するユーザーには向かないが、絵文字やMMSに段階的に対応していったことで、iPhoneに機種変更して困ることは少なくなった。サードパーティのアプリケーションを活用すれば、QRコードも読み取れるし、ほかの端末とアドレス帳のデータを交換することもできる。「TV&バッテリー」のワンセグは、録画にも対応した。もちろん、iPhoneらしさは損なわないままに。「iPhone 3GS」と「iPhone OS 3.0」は、単に端末が新しくなっただけでなく、それを使うユーザー層をも変える可能性がある。