日本ヒューレット・パッカード 執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション統括本部 統括本部長 松本光吉氏

日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)は、ブレードPCで実現するクライアント統合ソリューション「HP CCI(Consolidated Client Infrastructure)」のプレス向け体験セミナーを開催した。

会場では、日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション統括本部 統括本部長 松本光吉氏が、最初にシンクライアントの市場動向について説明した。

ネットブック、ミニノートが市場でもてはやされている現在、2009年度出荷台数で3~4%程度の伸びを見せているPC市場だが、金額ベースでは4~5%のマイナス成長が予想されている。その一方、シンクライアント市場は2ケタ成長を維持し、今後も伸びていく分野であることを強調。国内に目を向けると、日本HPが2008年上半期の台数ベース22.9%とシェア首位。2位、3位は国内メーカーで社内導入での利用がメインとなっていて、その社内導入を除く外販のシェアは日本HPが37.9%と圧倒的になっている。

世界的な不況の中でも、毎年2ケタ成長を続けているシンクライアント市場

シンクライアントで日本HPがトップシェア

日本HPのシンクライアントソリューション

日本HPのシンクライアントソリューション「HP RCS」(Remote Client Solution)では、シンプルで安価なエントリモデル「HP t5545 Thin Client」、ハイパフォーマンスで多機能なメインストリームモデル「HP Compaq t5730 Thin Client」「HP t5630 Thin Client」、コンパクトで堅牢性の高いモバイルモデル「HP Compaq 2533t Mobile Thin Client」「HP Compaq 6720t Mobile Thin Client」をラインアップ。HP t5545がHP Directplus価格29,400円、HP t5730が69,300円、HP t5630が48,300円。HP 2533tが125,790円、HP 6720tが104,790円と、さまざまなニーズに対応できるように用意している。

シンクライアントで使われている主な通信プロトコルは日本HPの「RGS」、マイクロソフト「RDP」、Citrix「ICA」の3種類

そして、力を入れているのが通信プロトコル。シンクライアントソリューションで使用される主な通信プロトコルは日本HPの「RGS」(HP Remote Graphics Software)、マイクロソフト「RDP」(Remote Desktop Protocol)、Citrix「ICA」(Independent Computing Architecture)の3種類。

RDPはWindows NT 4.0 Terminal Server以降のWindows OSに実装され、Microsoft NetMeetingなどにも使用されている。Mac OS XやLinuxなどへの対応も進んでいるが、マルチメディアといったリッチコンテンツにはあまり向いていない。ICAは帯域幅の狭いネットワークでも快適に使用できることが特徴。一部マルチメディア機能の拡張が行われた。RGSは、ワークステーションのグラフィックスを平均5Mbpsのネットワーク帯域まで圧縮。高精細な画像や動画が転送できるため、高画質が求められる環境にも耐えられるとした。実際にデモでは、FOMA端末を接続したクライアントを用意。RDPよりRGSを使用した方が高速に画像を表示できた。動画も、RDPはフレーム落ちをしていたが、RGSはスムーズな表示を実現。快適な操作性を持っている。

クライアント向けRGS「HP Remote Graphics Receiver for Windows」はダウンロードが可能で、同社クライアントラインアップ以外でも利用できる仕様となっている。ただし現時点では、サーバー側はブレードPC、ブレードワークステーションしか対応していないため、日本HPの製品しか利用できない。今後、日本HP以外の機種でも「RGS」のプロトコルが利用できるように進めていくことを検討している。

日本HPが考える仮想化技術

日本HPのブレードPCは、シンクライアントソリューション、PCのそれぞれの利点が活かされている

日本HPでは、仮想マシンは、ソフトウェアエミュレーションでホストOS上に生成するものとし、さらにその上でゲストOSを稼働させると定義。仮装化実装のひとつの方法としている。仮想化技術は、物理的なリソースを論理的な単位に細分化、あるいは集約化してそのリソースを動的に再配置し、柔軟性や信頼性を向上させることとしている。つまり、仮想マシンと仮想化技術を分けて考えている。仮想化技術では、インタフェースとしてシンクライアント、演算部がブレードPCやブレードワークステーション、記憶装置がネットワークストレージ。これをネットワーク上でつなげることで、従来のPCと同様かつ安価で信頼性の高い環境を構築している。ブレードPCにはOS、メモリなどが搭載されている。

仮想マシンでは、VMware、Xen Serverといった仮想化ソフトの上に、仮想ハードウェアを構築した中でWindowsを実行させるなど、仮想PC環境でのさまざまなソフトウェア群が必要になる。日本HPのブレードPCならPCと同等のハードウェアが実装されるため、ソフトウェア、ハードウェアともシンプル。これが安価で実現できるポイントとなっている。

日本HPのブレードPCは、セキュリティの確保、運用管理の効率向上、柔軟性の確保、冗長性・信頼性の向上といった仮想化の優位点を持ちながら、導入障壁が低い(即日稼動)、完全なアプリケーションの互換性、予測可能なパフォーマンス、ソフトライセンス費用の低減といった専用機の優位性を合わせ持っている。

なおWindowsを搭載したブレードPCの場合は、ブレードPCのボード自体にWindowsのシールが貼ってあるなど、従来のPCとほぼ同じ構造を備えるものとなっている。また従来PC向けに作成されているソフトウェアのほとんどがブレードPCで動作するため、仮想PC環境にあわせて作られたソフトウェアが必要ない。

こういった理由から導入障壁が低く、パートナー企業も多い。CCI環境構築資格は4日間のトレーニングにより取得可能。定期的なブートキャンプでのワークショップを開催。アップデートトレーニングなどにより情報共有も行っている。

ブレードPCのデモを開始。まずはクライアント側からブレードPCへログイン

デモでは、使用しているブレードPCに障害が発生したと想定して取り外した

すると、ブレードPCとクライアントの接続が解除された。もう一度ログインし直すと、正常な別のブレードPCにアクセスする