違う画像に思えるほどの色の違い
ここまで、一台のプロジェクターで説明していただいていたが、西浦室長の合図で尾田氏が横に並んだもう一台のプロジェクターのスイッチを入れた。スクリーンにまったく同じ画面がもうひとつ映し出される。その途端、思わずアッと声を上げてしまった。新たに映し出された画面は、驚くほど美しい。これまで見ていた画面も充分に美しいのだが、それ以上の美しさに驚くばかりだ。
次々にサンプルデータが投影される。プレゼンテーション資料、カラーバー、花の写真、フルーツの写真、人物写真、アニメーションなど……。まず明らかに赤が違う。並べて見比べると、これまで充分に赤だと思って見ていたものが、別の色に見えてくるほど鮮やかだ。さらには、イエロー、シアンもずいぶん違っている。全般的に色合いがきれいになっているのだ。人の肌はまるで本物のような感触まで伝わるし、フルーツはおいしそうに見える。2台のプロジェクターで違う画像を投影しているかと思ってしまうほどだ。
こんなに色が違うとは、技術の進化にただ驚くばかりだ。パソコン画面を覗き込むと、確かに同じ色合いで投影されている。"世界最薄"にして、パソコン画面と違いを感じさせない色を投影できるアクトビジョンSS はどのようにして作られたのか? あらためて、開発の裏側に迫った。
薄型化、小型化はカシオのお家芸
──まず、このノートブックパソコン並みの薄さですが、なぜこれほどまでの薄型化を追求したのですか?
西浦「薄いものを作りたい、持ち運びしやすいものを作りたいというのは、製品づくりにおいてカシオの伝統と言えます。ですから、プロジェクターも持ち運びに便利な小型で薄いものを作りたかったのです。小型で薄いものにするには、何をしなくてはいけないか。厚くなっている原因がわかれば、それをどう改良しようかと方法を考えます。
たとえば、先に説明したとおりリフレクター部分の厚みが問題でした。幸いカシオではリフレクターの設計を内部で行っています。他社だとリフレクターは標準品を使うところが多いのですが、その場合は薄く出来ません。我々が薄型のリフレクターを独自に設計して、それに合わせたランプを専門メーカーと共同開発することで、この部分の薄型化が可能になりました」
──薄型化に関して、もっとも難しかったのはどこですか?
西浦「最後まで問題が尾を引いたのは、やはり冷却系でした。設計しても、理論どおりの成果が出ず、手直ししながらやっていきました。最終的にシロッコファンひとつにできたことで、薄型化が可能になったうえに、音も静かになりました」……続きを読む