データプロジェクターは、いまやビジネスシーンにはかかせないPC周辺機器の1つだ。社内の会議や取引先でのプレゼンで、PCの画面をスクリーンや壁に投影し、その画面を見ながら話し合いを進めるスタイルが一般的となりつつある。普通のビジネスマンではない筆者でも、データプロジェクターを使ったプレゼンに少なからず遭遇している。

そもそもプロジェクターには「データプロジェクター」と「シアタープロジェクター」の2種類がある。前者はRGB端子でPCに接続し、パワーポイントなどの画面を投影することを目的としたビジネス向けのプロジェクターだ。対してシアタープロジェクターは、家庭で映画やゲームを大画面で楽しむためのプロジェクターである。データプロジェクターでDVDを楽しむことも可能だが、あまりオススメはしない。シアタープロジェクターでは映画の映像の美しさを再現するために黒を重視したチューニングが施されているが、データプロジェクターは画面の明るさに重きを置き、白を美しく出力するチューニングが施されているためだ。

カシオ計算機の「XJ-SC215」は、その「白の美しさ」にこだわったデータプロジェクターだ。新開発の独自技術(アクティブカラーテクノロジー)により白と黒を鮮明に再現しつつ、中間色や淡色もリアルに映し出され、全体として非常に鮮明で再現性の高い色味を実現している。価格は26万8,000円(税別)で、国内メーカーの同スペック機種としては一般的だ。

色の再現性にこだわったカシオの「XJ-SC215」。価格は26万8,000円(税別)

まずは、ボディ部を見てみよう。手に取ってみての第一印象は「軽くてコンパクト」。本体の重量は1.8kgと一般的なモバイルノートPCに比べてやや重いのだが、実際に手にとって見た感覚ではそれほど重さは感じられなかった。ノートPCと合わせてカバンに入れると3~4kgにもなるが、他メーカーの製品でも1.6~1.9kgが標準的な重量なので、重さに関しては及第点といったところだろう。

本体のサイズは幅270mm×奥行き199mm×高さ43mmのB5ファイルサイズ。注目すべきはその薄さだ。最薄部32mmで最大でも43mmと、ほかのメーカーのモバイル向けデータプロジェクターと比べても1cm以上薄い。全体的に突起の少ないシンプルなデザインでまとめられているため、薄めのカバンにも入れやすく、ジャマにならない。コンパクトでスリムなボディは一線を画するものがあり、他の製品にはない魅力を感じる。シルバーのケースも、モバイルPCとマッチするデザインだ。

本体前面部。レンズカバーが開閉可能で、カバーを閉じて映像を一時的に隠すこともできる

本体背面部。左からRS-232C端子、AV端子、RGB端子、USB端子と並ぶ

取引先でプレゼンを行なう際、機器の準備に手間取るのは厳禁だ。スムーズに取り出し、素早く投影を開始しなければならない。XJ-SC215には、コンセントを電源プラグに差し込むだけで自動的に電源が入る「ダイレクトパワーオン機能」が搭載されており、すぐに投影を開始することが可能だ。電源オンから映像が映し出されるまでの時間を実際に計測したところ、15秒程度とかなり短かった。

しかし、いくらXJ-SC215の起動が速くても、PCの起動に時間がかかっていては意味がない。そんなときに有効なのが「USBホスト機能」。動画や静止画を記録したUSBメモリを本体に挿入するだけで、大画面に投影できるのだ。USBメモリ内部のデータを解析するのに多少時間がかかるが、それでも10~20秒程度。本体のボタンや付属のリモコンで画像を切り替えられるので、PCがなくてもプレゼンが可能である。エクセルやパワーポイントで作成した資料でも、添付のソフトウェアを利用すれば、プレゼン用のJPEG画像を手軽に作成できる。

画像ファイルを記録したUSBメモリを使えば、PCレスでプレゼンを行なえる

USBマスストレージ対応の携帯電話も接続可能だ

映像については、XJ- SC215の輝度(映像の明るさ)は2,500ルーメンと、モバイル用途のデータプロジェクターとしては明るい部類に入る。小さめの会議室であれば、照明を落とさなくても画面を比較的鮮明に見ることが可能だ。部屋が暗いほどより鮮明に見られるのは言うまでもないだろう。色の再現性はかなり高く、白や赤が鮮明に映し出された。また、XJ-SC215には5種類のカラーモードが用意され、表示内容や投影場所によって、最適なモードを選べる。

XJ-SC215の投射方式はDLP。液晶による投射に比べてコントラス比が高く、色ムラやノイズが少ないというメリットがある。光学ズームは最大2倍で、データプロジェクターとしては最高レベルだ。スクリーンに近くても映像を大きく表示することが可能で、60インチの画面であれば1.7m~3.4m程度離れていればOK。80cmしか距離が取れなくても、18~20インチ程度の大きさは確保できる。フォーカスは手動で設定するが、操作が簡単なので戸惑うことはない。本体の角度を変えると補正機能が働いて、映像が最適な角度で映し出される。本体デザインもシンプルだが、操作もシンプルで非常に使いやすい。

投射方式はテキサス・インスツルメンツが開発したDLP方式を採用。ロゴの下にはスピーカーもある

本体脇のボタンを押すと、角度を変えるためのバーが出てくる。任意の角度でボタンを押すだけで固定可能だ

アクティブカラーテクノロジーを採用したモバイルデータプロジェクターとしては、「XJ-SC210」も発売されている。投影機構のスペックは同じで、USBホスト機能が省略されているだけの違いだ。価格は24万8,000円(税別)で、XJ-SC215よりも2万円安く設定されている。使用目的を考えて、最適なほうを選ぶといいだろう。

USBホスト機能を省いた「XJ-SC210」。XJ-SC215よりも2万円安いのが魅力