海外でのTENORI-ONの手応えとターゲット
TENORI-ONはイギリスなど欧米で先行発表され、一般ユーザーに実際に触れてもらう機会を得た。そこで、2人は意外な手応えを感じたという。鈴木氏は、「3日間のイベントで、毎日TENORI-ONブースに通って、マスターしちゃう女の子やピアノを弾くようにすさまじい速さで打音し始める男の子もいた。自分よりもだんだんにうまくなっていく人たちを目の前で見て、あらためてこのTENORI-ONのすごさに感嘆した。機能をまったく理解していないんだけど、そういうつもりでつくっていない僕らから見て、意外な使い方をする人も現れてすごく面白かった」とそのときの感想を述べた。
また杉井氏は、TENORI-ONのターゲット・ユーザーについて「レコード屋に毎日のように通う人。月に20枚も30枚もCDやレコードを買う人たち。そんな音楽中毒者のように、新しい音楽体験を常に追い求めている人に向けてTENORI-ONを発信する」と声高々に語った。さらにTENORI-ONのコンセプトを「TENORI-ONは、新しい音楽体験装置だ。コンセプトは『聴く楽器』。普通、楽器は弾くためのもの。TENORI-ONは指先から生まれてくる聴くための楽器なんだ」と明確に示した。
アートとプロダクツの間で
そして企画・開発側の杉井氏とアートを生む鈴木氏は、アートとプロダクツという話題について言及した。鈴木氏は「生み出す立場からすると、自分の感覚を信じることが大事で、突き詰めた先にみんながいるという感覚を忘れてはいけない。アートとプロダクツの両立ということで言うと、ヤマハさん側にも何十倍もの苦労があったのではないか」とヤマハの苦労を察した。また杉井氏は「おかげさまで、このTENORI-ONに圧倒的な魅力を見い出せたから商品化することができた。これは、白いカンバスの上に絵を描くような作品。岩井さんがフォーマットしたこのTENORI-ONの上で、みんなで遊べ、作品を残せる。デザインとはこういうことなのだと実感したプロセスだった」と今回のTENORI-ON開発についての感想を語った。
最後に二人は、このTENORI-ONとその商品化に賭けた人たちを、「まさにこれは、21世紀のアントニオ・ストラディバリによる、21世紀のストラディバリウスだ」と1600年代の名誉あるクラフトマンと名器に例え、講演は終了した。