時計を地方活性化の起爆剤に--新店舗を展開する老舗時計店の新たな挑戦

岡山県岡山市、宇喜田秀家が築城した岡山城のお膝元で古くから城下町として栄えた表町にある「表町商店街」。全長約１kmにわたって店がひしめきあう中、空き店舗は現在1軒のみ。シャッター街を抱える地方都市からすれば、何ともうらやましい状況と言えるだろう。

もちろん、何もせずにシャッター街化を免れた訳ではない。空き店舗を買い取り新たに店舗を展開することで、商店街に賑わいを取り戻そうとする取り組みを継続した結果だ。その取り組みのリーダー的存在が、中国地方を中心に時計/宝飾品/ブランド専門店を展開する「トミヤコーポレーション」。1932年に創業。年商32億円を稼ぎ、県外からも時計ファンが訪れる時計店の老舗としても名を知られる。また1996年には、世界の一流小売業とスイスの高級ブランド数社で組織される「AIHH」(高級時計職業間組合)に日本会員として選出された。

表町商店街の地域活性化に古くから取り組んでいる古市大蔵社長は「シャッターを閉めた状態にさせないということが使命。かつての商店街の賑わい、とまではいかないがそれに近づけるような状況にもっていきたい」と語る。

表町商店街にはブルガリやシャネルなど有名ブランドがアーケード沿いに店舗を構えているのも特徴的。「どこにも負けない品揃えがあればお客さんは必ずこの商店街にくる。そのために商店街として、有名ブランドを扱うことは重要といえる」と古市社長。自宅にいることが多い人のために置き時計のお店を展開したり、時計ミュージアムのようなものだったり。古市社長のアイデアが尽きることはない。

そうした中、25日にオープンした「クロノファクトリー トミヤ」は「時計の価値は金額だけで決まるわけではない」がコンセプト。1万～50万円という時計にしては低価格帯でありながら、G-SHOCKをはじめ選りすぐりの商品をラインナップしている。

クロノファクトリーの隣には「タイムアート」、向かい側には「メカミュージアム」という時計店がある。いずれもトミヤコーポレーションが経営。それぞれターゲットが絞られており、顧客の様々なニーズに合わせた店舗を展開している。

ただし、低価格帯の商品を扱うクロノファクトリーのような店舗をオープンするのは今回が初だという。その背景には時計の価格高騰があると古市常務。「時計を買う1本目というのは記憶に残るものです。しかし原材料の高騰から特に舶来物の時計を中心に値上がりしています。10万円単位で価格が高騰することで、"若者の時計離れ"を引き起こすのではないかという危機感を抱いております。そうならないためにも時計の魅力をより多くの人に伝えることが重要。クロノファクトリーがそうした裾野を広げるきっかけになってほしい」と説明する。

そのためクロノファクトリーの店員は皆、比較的カジュアルな服装。もちろん時計に詳しい"専門家"(トミヤコーポレーションでは彼らをマイスターと呼ぶ)だから、時計についてビギナーから上級者まで幅広く相談に乗ってくれることも魅力的だ。「今までウィンドーショッピングだったり、ちょっと店内に入ってすぐ出て行ってしまうお客様の姿を見ていたので、そうしたお客様にも楽しんでいただける店づくりをしたかった」と古市常務は力を込める。

店内に入ってまず最初に目に入るのがG-SHOCKの品揃え。「時計入門者としてG-SHOCKは最適。品質も確かで店の趣旨にもぴったりです。なにより名前が若者にも知られておりますし『これなら自分でも買える』という気持ちにさせてくれる。時計店に入るという垣根を低くし、より幅広い年齢層に来店してもらえるのではないかと期待しております」(古市常務)。

中心部の空洞化は地方にとってとても重要な課題だ。だが、表町商店街のように商業者の知恵とパワーで商店街に活気をもたらしているところもある。「地元住民だけでなく観光の際に立ち寄っていただけるような場所になっていけばと思います」と古市社長も語るように、観光の際の立ち寄りとしても最適。全国的にも類を見ない時計のラインナップを見に、岡山を訪れたら表町商店街を訪れてほしい。

店舗名 : クロノファクトリー トミヤ
休業日 : 年中無休(元旦以外)
営業時間 : 10:38～19:30