およそ20年前。学生だった私は日々近所に住む先輩の家へと通い、挨拶もそこそこにパソコンの電源を入れた。当時の私を熱中させたのは『信長の野望』。来る日も来る日も、雨の日も風の日も、もちろん天気が良い日だって……。たとえ先輩のレポート提出日が翌日であっても、決してパソコンを明け渡さなかった。

そんなプチ思い出話はさておき、およそ20年の月日を経て、私の手元にふたたび『信長の野望』が戻ってきた。そう、コーエーからプレイステーション 2およびWii向けにリリースされた『信長の野望・革新 with パワーアップキット』である。たとえ20年の月日を経ても、しょせんは「信長の野望」。そんな甘い考えが、私を深刻な睡眠不足の日々へと叩き落すのであった……。

私を驚異的な睡眠不足へと叩き落した、コーエー『信長の野望・革新 with パワーアップキット』。プレイステーション 2とWiiのダブルプラットホームでの登場だ

とりあえずは『信長の野望』を紹介してみる

『信長の野望』は、その存在を知らない人はほとんどいないと思えるくらいに有名なゲームだが、一応カンタンに説明しておこう。『信長の野望』が最初に登場したのは1983年、今から25年前のことである。戦国時代をテーマにした歴史シミュレーションというポジションはもちろん当初から変わらず。タイトルに「信長」と入っているくらいだから、当然主人公は織田信長である(武田信玄でのプレイも可能だったが……)。マップは中部地方と近畿地方。自国を富ませながら他国に攻め入り、統一を目指していく。その後、私がはまりまくった"全国版"が登場。そして、基本的な骨子はそのままにさまざまな要素を追加しながら、今回レビューを行う『信長の野望・革新 with パワーアップキット』まで、10回を超えるバージョンアップが繰り返されている。

『信長の野望・革新 with パワーアップキット』では、マップは3Dグラフィックで表現される。慣れるまでは土地勘をつかむのに少々苦労するかも

さすが25年も経つと、いくら基本コンセプトは同じといえ、見た目も方法論もまったく変わってしまっている。何より大きく異なっているのはマップ。2Dというか線だけで描かれていたような20年前と異なり、今や3Dグラフィックによる一枚絵で描画されている。とはいえ、マップが異なるくらいで本質は変わらないだろう……。まあ、その考えが甘かったわけですよ。

「戦略」画面で内政や外政などのさまざまな「命令」を下す。コマンドを理解するのも最初はちょっと苦労する

「進行」画面では、下した命令などが処理され、進行状況が左下に表示される。ここのチェックは非常に重要なポイントとなる

とにかくゲームの進行はリアルタイム。ぼやぼやしているとドンドン他国は増強されていく。ある程度国力をつければそう簡単に攻め落とされることはないが、自国だけで寿命を全うするようでは、ゲームをプレイしている意味がない。結局、何もできないまま、電源を落とすハメに……。20年前のおぼろげなメソッドなんて、まったくの無意味。全国統一を果たすためには、とにかく『信長の野望・革新』の、そして「パワーアップキット」のポイントを理解することが必須なのである……。甘くないですよ、信長ワールドは。

最初はチュートリアルからはじめましょう

シミュレーションゲームというものはルールを知ることが必須である。直感的にプレイできることもあるが、ルールや搭載されている機能を知らなければ、いくらクリアできても面白さは大きくダウンする。特に本作は、豊富な機能がウリとなっているだけあって、単純な操作系統を理解しただけでは真の面白さが体験できない。まずはマニュアルに目を通しつつ、「チュートリアル」をプレイするのが肝要。「信長の野望」シリーズをずっとプレイしてきた人でなければ、とにかくゲームの流れを把握することが最重要課題となる。

合戦も特に画面は切り替わらず、3Dマップ上で行われる。各部隊がわらわらと集まっていく様は壮観で、全体の状況は把握しやすいが、個別の戦況が少々わかりにくいところも。このあたりは好みによって評価が分かれそうだ

合戦での勝利。これこそが極上のカタルシス

『信長の野望・革新 with パワーアップキット』には、「全国モード」のほかに、一部地域のみの統一を目指す「地方モード」が搭載されている。一地方だけのプレイなので、全国統一はもちろんできないが、ゲームの流れを把握するのにはベスト。比較的短時間でクリアできることもあり、とにかく初心者にはオススメである。とはいえ、選ぶ地方によっては血の海を見ますけどね……。

次ページでは『信長の野望・革新 with パワーアップキット』ならではの魅力を紹介してみよう。