高速すぎてとまどうほどの連写機能

EX-F1のモードダイヤルは非常にシンプルだ。オートと絞り優先、シャッター速度優先、マニュアルと、具体的なシーンに合わせて選択する「ベストショット」しかない。ベストショットには、人物や風景、夜景などに加え、オークションやYouTube用動画専用シーンなど、計27シーンが用意されているほか、カスタマイズや登録も可能で自由度が高い。

EX-F1の最大の売りは連写機能。秒60コマの連写では、撮像素子の解像度そのままの600万画素で撮影できる。おもしろいのは高速連写モードで撮影すると、直後に保存方法を選択するメッセージが表示されること。「一括選択」を選べば連写した画像すべてを保存できるし、「選択保存」を選べば撮影したカットのうち必要なものだけを選んで保存できる。これはメディア容量や後の手間を省くためのもの。最速の秒60コマで撮影すると、わずか1秒間で撮影を終了する。しかしファイルサイズにして200MBを超えることもある。メディアはすぐにいっぱいになってしまうし、なにより、後で全部見直して選択するだけでも大変だ。撮影直後であれば、写真選びも容易だし、明らかにタイミングのずれた画像を保存する必要もなくなる。とても便利な保存方法だ。

連写速度は秒60コマ以外にも設定できるが、鏡胴部のファンクションリングの設定を「連写fps」に設定しておくと、撮影しながら連写速度を変更できるのが楽しい。ふだんは連写速度を下げて撮影し、スポーツなどでの決定的瞬間を狙いたい場合など連写速度をメニューを開かずに切り替えられる。

また、一般的にコンパクトカメラでは、絞りをあまり絞れない場合が多いがEX-F1ではF15まで絞り込める。それに加え、シャッター速度優先AEまたはマニュアル露出時にはシャッター速度が2万分の1秒まで設定できるなど、スペック上はほかに類を見ないほど高い性能を持つ。

画質は、合焦している写真でもやや像がゆるく、シャープ感が薄いのが気になった。色はコンパクトらしい鮮やかな色だが、神社で使われている朱色や、蛍光色などはきちんと見たままの色で再現される。ただ、空の青色など、青が強くなりすぎることがあった。これは多くのコンパクトカメラでも同様の傾向にあり、仕方がないのかもしれないが、1色だけ浮いていると気になるもの。もう少しバランスが取れるといいと思う。

逆光補正モードを使用してみた。通常撮影では黒くつぶれしまった建物の細部までが描写できた

池で泳ぐ白鳥を撮影。陽が当たっている部分は白飛びしているが、この程度なら許容範囲か
EX-F1 / 高精細(JPEG) / 33.4mm(165mm相当) / ISO100 / 絞り優先AE、補正+0.7EV(F3.3、1/320秒) / 分割測光 / WB:オート

ベストショットモードの風景モードで撮影。露出はマイナス補正で色を乗せている
EX-F1 / 高精細(JPEG) / 8.8mm(44mm相当) / ISO100 / プログラムAE(F9.6、1/250秒) / 分割測光 / WB:オート

テントなどの青が浮いてしまった。それ以外はオレンジの蛍光色などもよく再現されている
EX-F1 / 高精細(JPEG) / 7.3mm(36mm相当) / ISO100 / プログラムAE(F7.6、1/500秒) / 分割測光 / WB:オート

全体としてやや画像がゆるい印象があるが、桜など花を撮るときはむしろ柔らい表現となって好ましい
EX-F1 / 高精細(JPEG) / 87.6mm(432mm相当) / ISO100 / 絞り優先AE(F4.6、1/1000秒) / 分割測光 / WB:オート

高速連写を活かした特殊撮影モード

カメラ上部には、連写モードダイヤルが設けられているが、ここでは通常の連写のほかに特殊な撮影モードも用意されている。ポップアップするフラッシュとLEDライトを使った「フラッシュ連写」、シャッターを押す前の画像も記録できる「パスト連写」、カメラ内にバッファした画像をスロー再生しながら欲しいシーンだけを撮影できる「スローライブ撮影」、ブラケティング撮影を高速連写で行なう「BKTブラケティング連写」などの機能がある。特にユニークなのはフラッシュ連写だ。秒7コマまでの連写ならフラッシュが連続で発光するが、それ以上の連写速度ではLEDランプが照明として活躍する。これは動画撮影にも利用できる。高速カメラならではの機能だ。

また、撮影モードでは被写体がフレームに出入りする瞬間を検知し、その前後を記録する「ムーブアウト連写」と「ムーブイン連写」機能が面白い。しかしファインダー内に少しでも動く物体があると被写体をうまく認識こともあり、ややナーバスな印象を受けた。ただ、こういった機能を用意するだけでも楽しいと思う。

当然のことだが、連写ではそのコマ速に応じて、シャッター速度は高速にならざるを得ない。ISO感度をオートにしていればある程度フォローされるが、EX-F1ほどの速さだとすぐに光量が不足することになる。高速連写は明るいところでその威力を発揮することを覚えておこう。

秒60コマで連写して撮影される画像1覧。1秒間でこれだけの画像が撮影されるのは壮観だ

連写した画像はカメラ内ではフォルダ表示されるため再生時に見やすい。こうした細かいところがよく考えられている

連写中の1コマ。連写のためシャッター速度を短くするため自動的にISO800に増感されている
EX-F1 / (JPEG) / 12.3mm(61mm相当) / ISO800 / プログラムAE(F2.8、1/2000秒) / 分割測光 / WB:オート