日常のふとした瞬間がドラマチックに

EX-F1のもうひとつの特徴は最大1200fpsで撮影できる動画録画機能だ。MPEG-4 AVC/H.264準拠のQuickTime形式で記録できる。民生機でここまでのレベルが実現されたのは初めてだろう。高速撮影時の解像度は、300fpsと30~300fps時には512×384ドット、600fps時には432×192ドット、1200fps時には336×96ドットと高速になるほど横長になっていく。カシオに問い合わせてみたところ、「処理能力の上限により縦方向の解像度のサイズが決まってくるためです。縦の解像度に合わせて横方向も4:3に制限することもできましたが、せっかくなので、横方向は撮影できる最大サイズのままにしました」とのこと。4:3または16:9で記録するモードもあればなお良かったと思う。

高速動画撮影時にはフォーカスや露出は撮影開始時点のもので固定される。記録した動画はQuickTime形式が再生できるプレーヤーで再生するほか、添付ソフトでAVCHD形式に変換すればハイビジョンレコーダーなどでも再生できる。

高速度撮影を実際にして感じたことは、日常のなにげない景色がドラマチックになるということだった。水道の蛇口から水を流すシーンでさえ、高速で撮影するとなんだか感動的に見えてくる。ガスライターに着火する様子や、鳥が羽ばたく様子などのありふれたシーンだが、スロー再生するだけで火がまるで生きているように動いたり、羽根の構造がよくわかる非常に美しいシーンとなる。カシオの製品サイトにもハイスピード映像は掲載されているので、まだ見ていない人がぜひ見てほしい。

今回、蛍光灯下でも撮影したが、蛍光灯は高速で点滅しているため、高速連写ではそれが見えてしまうことになった。これも高速度撮影ならではの現象とはいえるのだが、見ていると結構気になるもの。屋内で撮影する場合には、電球など、蛍光灯以外の照明を用意したほうがよさそうだ。

また動画撮影時のフォーカスは、きちんと被写体を画面中央に収めているときはいいのだが、ひとたびフォーカスを外してしまうと合にくいケースがあった。逆に、前景に他のものが入って被写体の一部が隠れてしまうようなケースでも、本来の被写体の位置にフォーカスが合い続ける傾向もあった。動画向けにチューニングされているのかもしれない。

通常のQuickTimeで再生できないハイビジョン動画

高速度撮影機能の裏に隠れてしまいがちだが、EX-F1はフルハイビジョンの動画も撮影可能で、HDMI端子まで備えている。ただし、動画の形式は、ハイビジョン動画で一般的に使われているプログレッシブではなくインターレースであることに注意しておきたい。

メーカーによれば、プログレッシブ1080Pの動画を生成するにはまだカメラの処理能力が足りず、仕方なく飛び越し操作を行なうインターレーススキャンの1080iを採用したとのこと。しかし、この1080iには注意が必要だ、カメラが記録するのはQuickTime形式のMOVなのだが、QuickTimeの仕様により1080iの動画は再生できない(付属のソフトなら再生できる)。いくつかのQuickTime互換プレーヤーも試してみたが、そうしたプレーヤーでも再生できないようだ。

録画したハイビジョンムービーは付属のソフト「Total Media Studio for CASIO」で、ハイビジョンの記録形式として一般的なAVCHD形式に変換し、DVDディスクなどに書き込みが可能だ。AVCHD形式で記録したDVDディスクは、AVCHDに対応したハイビジョンDVDレコーダーなどでそのまま再生できるが、どのDVDプレーヤーでも再生できるわけではない。Total Media Studioには、簡単なオーサリング機能もあるので、メニューなども作成できる。なお、このソフトでは前述の高速動画もDVDに書き込みできるが、元々がハイビジョン用のAVCHDディスク作成ソフトなので高速画像も自動的にハイビジョンのAVCHD形式に変換されてしまい、オリジナルデータの何倍ものデータサイズになってしまうので注意が必要だ。

撮影した動画をYouTubeにアップロードするためのソフトウェアも添付されており、撮影したものを人に見せたいという気持ちに対する回答もちゃんと用意されている。すでにYouTubeには、EX-F1で撮影された高速動画が大量に掲載されている。「EX-F1」で検索すると見つけられるので、見てみるといいだろう。

ハイビジョン撮影したQuickTime画像を表示しようとしてもこのようにグリーンの絵しか表示されない。音声はきちんと再生されているのだが

付属の再生ソフト「ArcSoft TotalMedia Theater for CASIO」で再生する