昨年3月に13年ぶりの携帯電話事業新規参入を果たしたイー・モバイルは28日、当初からの計画通りに音声サービスをスタートさせた。これまではデータ通信専業だったが、音声サービスを始めることで名実ともに「総合携帯電話事業者になった」(イー・モバイル千本倖生会長)としている。当初音声端末は台湾HTC製の「EMONSTER(S11HT)」と東芝製の「H11T」の2製品を提供する。

千本倖生会長

イー・モバイルの音声サービスは、基本使用料を無料(別途データ通信利用料が月額最低1,000円必要)にし、月額980円で加入者間の時間無制限の通話定額を実現するなど、これまでにない音声サービスを実現。さらに千本会長は「音質はクリアで切れにくい。音声品質は既存携帯事業者よりはるかに優れている」と胸を張る。

データ通信はもともと国内初の3.5G(HSDPA)での完全データ定額を打ち出し、高速・低価格で攻勢をかけており、既存事業者もこれに追随するなど影響を与えている。同社には国内初の7.2Mbpsの高速通信も提供して「世界一級レベルのスピードと低料金を実現していた」(同)という自負があり、これに基本使用料無料、時間無制限の加入者間無料通話、高い音声品質というメリットが加えられるとし、千本会長はサービスに大きな自信を示している。

現時点で、イー・モバイルの人口カバー率は全国で70%程度となっており、これは当初計画以上のハイペースで拡大しているという。人口カバー率は6月には全国で75%、東名阪の主要都市では95%に達する見込みで、これも当初見込みを前倒しで実現していくという。カバーできない範囲に関しては、東芝の音声端末「H11T」がNTTドコモの回線を借りるローミングに対応。カバーされていないエリアではドコモのネットワークを使って音声通話を行う。とはいえ、6月の段階で主なビジネス圏をカバーし、「東京・大阪の地下街以外ならほとんど電波が入る」(同)そうだ。

TVCMでおなじみの猿の「ハヤハヤくん」と会話して音声品質をアピールする千本会長

いよいよ音声サービスが始まるためか、いつにもまして口が滑らかな千本会長。「音声はあくまで付加アプリ」と指摘し、データメインの事業者として、今後も「あっと驚くようなサービスを次から次へと(消費者に)提案していく」と強調。サービスに関して具体的な話はなかったが、猿の「ハヤハヤくん」が登場するTVCMに引っかけて「革命的な"ありえない"サービスを提供していく」と話している。

千本会長は繰り返し「世界」を目指す意向を示し、世界トップレベルのサービスを提供し、日本を「世界一級の携帯国家にしたい」という目標を掲げている。

現在は加入者数も順調に増加しているようで、「当初の目標を大きく超え、右肩上がり」(同)に伸びており、企業の大口顧客も獲得しているという。音声端末の予約も「そこそこ順調」とのことで、この日は大手家電量販店のビックカメラ有楽町店にも10時の開店から予約も含めた購入者が訪れており、売れ行きは悪くなさそうな印象だった。同店の予約分に関してはH11TとEMONSTERが半々ぐらいだという。ちなみに音声サービス開始初日ということで一斉に契約が入るため、午前の段階で購入して開通するまでどれだけ時間がかかるか分からない、とのことだった。

中央右は同社社長兼COOのエリック・ガン氏。千本会長が持つのがEMONSTER、ガン社長が持つのはH11T