メーカーの展示では、CrayはSC07直前に発表したXT5とXT5hが展示の目玉である。XT5は、Opteronベースの計算ノードをCray独自のSeaStarインタコネクトチップで構成した3次元トーラスネットワークで接続したマシンである。
CRAYのブースに展示されたXT5hシステム。左がXT5の筐体で右がベクトルのX2筐体。 |
XT5のドアを開けたところ。 |
XT5のブレード。8個のOpteronチップと4個のSeaStar2+チップが搭載されている。 |
前身のXT4はデュアルコアOpteronであったが、XT5では、これをクワッドコアのBarcelonaに替え、さらにブレードあたりのOpteronチップの個数を4個から8個に増加してコア密度を4倍に向上している。ブレードの左側に4個×2列で8個のOpteronが並ぶが、展示のために1個は放熱フィンを外しているので、写真では7個のように見えている。そして、右端の4個の小振りな放熱フィンがついているのがSeaStar2+チップである。
XT4では、OpteronとSeaStar2チップは1対1のペアであったが、XT5では2個のOpteronチップが1ノードとなり、SeaStar2+チップへの接続は片側のOpteronチップから繋がるという構成となっており、計算ブレードあたり4ノードというのはXT4から変わっていない。そして、ノード間のインタフェースはXT4と同じであり、従来のXT4ブレードを混在して使うことも出来るようになっている。
XT5の写真に見られるように、1筐体に8ブレードを3段搭載し、一番下にこれらの24枚のブレードを冷却するための強力なファンが付いている。Opteronチップの数が倍増しているので消費電力は増加しているはずであり、当然であるが、XT4のファンよりも一回り大きくなり強力なファンになっている感じである。
また、このOpteronのXT5ブレードと同じサイズ、インタフェースでXR1というFPGAベースのアクセラレータを出した。FPGA自体はXilinxのもので、DRS社という会社が専用のコンパイラや開発ツールを提供している。そして、このノードはOpteronを1個内蔵し、2個のFPGAがHyperTransportで接続されている。
Opteron1個とFPGAを2個搭載するXR1ブレード。 |
XR1ブレードの左側の2枚のドーターボードがDRS社のFPGAボードで、銅の放熱フィンがついているのが制御用のOpteronである。何故か黒いフィンがついたSeaStar2+チップが右側に4個ついており、XT5ブレードと互換のインタフェースとなっている。そして、今回、XT5hシステムのベクトル処理用コンポーネントであるX2を発表した。中身はX1Eの後継のBlack Widow(X2)であるが、XT5のバックエンドとして動作し、 XR1と同様なアクセラレータとして一体的にシングルシステムとして見える。従って全体をまとめてXT5hシステムと呼んでいる。このように複数の異なるアーキテクチャの処理ユニットを統合的に制御できるというのがCrayのHybrid Computingの概念である。
CRAY X2のボード(左)と筐体。 |
ベクトル処理を行うBlack Widowについては、今回のSC07で論文が発表されており、詳細は論文の紹介を参照戴きたいが、8個のベクトルユニットを持ち20.6GFlopsのCPUチップ 4個を1ノードとし、これらを64ポートの高Radixルータで接続するシステムである。写真の左側に示すボードは、4チップのノードを鏡像対称に2組搭載している。但し、展示のため、1個のCPUチップのフィンが取り外されてチップパッケージが見えるようになっており、ヒートシンクは7個しか見られない。
そして、右側に示す筐体には、この8枚のボートのシャシーが2つ搭載され、全体で32ノード、128プロセサを収容している。この筐体を複数接続し、最大のシステムでは1024チップ(8筐体)まで拡張できる。なお、このBlack Widowのクラスタからは、Stargate Bridgeというチップを介してトーラス網へのインタフェースを出し、XT5への接続を行っている。
X2の上部の格子の枠の中にはXT5よりも強力そうなファンが入っており、Black Widowの16枚のブレードを冷却している。冗談に、展示の説明員に、「これは飛ぶんじゃない?」と質問すると、「筐体が重いから飛ばない」という至極まともな答えが返って来た。この答えも間違ってはいないが、実はこのファンは空気を下から上に噴き上げている筈で、発生する力は筐体を床にめり込ませる方向で、筐体が重かろうと軽かろうと、ヘリコプターのようには飛ばないというのが正解である。