X48搭載の「DX48BT2」

このQX9770と一緒にやってきたマザーボードが、IntelのDX48BT2(Photo06)である。見た目は、X38を搭載したDX38BT(Photo07)と全く相違が見当たらない。肝心の型番はシールを貼っただけといった有様で、設計変更は一切なく、単にチップセットをX38からX48に交換しただけといったあたりであろう。CPUへの電力供給は、このところ定番となった5フェーズ電源が今回も踏襲されている(Photo09)。主なパーツとしては、メモリスロットの脇にMarvellの88SE6121(Photo10)があるのがちょっと珍しいが、バックパネルの脇にはIntelの82566DC(Photo11)が配され、その隣にはHD Audio Codec(Photo12)が置かれるのはIntelの伝統的な流れ。ICHの脇にはTIのIEEE1394aコントローラとWinbondのSuperI/Oが配されるのも、割と典型的だ(Photo13)。バックパネルを見ると、PS/2 Keyboard/MouseやSerial/Parallelポートが完全に廃され、代わりにeSATAが2ポートとUSBが4ポート増設される、いわゆるLegacy Freeの構成(Photo14)。ちなみにI/O用のFTG(Frequency Timing Generator)にはSILEGOのSLG505YC256BT(Photo15)が搭載されていた。

Photo06:こちらがDX48BT2。強いて異なる部分を探すと、CPU周辺のコンデンサ類が多少異なっている程度か。搭載しているパーツは全く同一だった

Photo07:こちらがDX38BT。価格は3万ちょいといったあたり

Photo08:DX38BTの場合、"CPU-DX48BT2(B)"というシールの下にあたる場所に、"CPU-DX38BT(B)"とシルク印刷がある。"BT2 ODM Config A"のシールの部分は、DX38BTでは空欄であった

Photo09:それでも以前は電解コンデンサを多用してたのが固体コンデンサに変わるといった変更はある。TDPそのものは以前からそれほど変化が無いが、プロセス微細化に伴い電圧がやや下がり、その分供給すべき電流そのものは増えている

Photo10:MarvellのSATA/PATAコントローラ。IDEポートはこの88SE6121経由で接続される。しかし率先してIDEポートを削減したはずのIntelが、自社のマザーボードからPATAを撤廃できずにわざわざコントローラを追加しているというのも、何か皮肉なものである

Photo11:GbEのPHYであるIntel 82566DC。ICH9に内蔵されたGbE MACと接続する専用品である

Photo12:IDTの10ch HDA Audio CodecであるSTAC9274。元はSigmaTelの製品だが、IDTに買収されてIDTブランドに。ただドライバのインストール時にはSigmaTelの名前がまだ出てきた

Photo13:左がTIのIEEE1394aコントローラであるTSB43AB22A、右がWinbondのSuperI/OであるWPCD376I

Photo14:左端のeSATAは、Photo10のMarvellのSATA/PATAコントローラに接続されている

Photo15:SLG505YC256BTはIntelのCK505 clock specificationに準拠した、PCIやUSBにクロック供給を行うモジュール

ところで一見目立たないが、MCHのヒートシンクはかなり頑丈に出来ている。わざわざがっちりしたバックプレート(Photo16)が装着されているほどで、こんなプレートが必要なほど強いテンションでヒートシンクを取り付けている事になる。さすがに、90nmプロセスでPCI Express Gen2のx16レーンを2本も出すとなると、かなり消費電力が大きくなるという事なのかもしれない。ちなみにBIOS SetupではちゃんとDX48BT2と表示されるが(Photo17)、チップセットのPCI Device IDを表示させるとX38のそれのまま(Photo18)。DMI経由でBIOS Informationを取得すると(Photo19)、X38を搭載した製品そのものと示される。X38を搭載したDX38BTの結果(Photo20)と比較するとこれは判りやすいだろう。

Photo16:CPUクーラーの取り付けにも、このくらいのバックプレートが必要ではないかと筆者は思う

Photo17:ここは直接ユーザーの目につくだけに、ちゃんと書き換えたのだろう

Photo18:8086はIntelのVendor ID。29E0.01はX38のDevice ID

Photo19:ChiosetにX38と表示しているのはCPU-Zだが、BIOSの欄がBTX3810Jで始まるあたりが決定的である

Photo20:これだけを見ていると、DX48BT2は、単にDX38BTのBIOS Versionを多少上げただけ、という感じもしなくもない

ところでX38の場合DDR3-1333までに対応するが、X48はDDR3-1600に対応するという話であった。実際評価キットにはCORSAIRのDDR3-1600メモリ(Photo21)が同梱されており、SPDを見ると1.8Vで1600MHz 7-7-7-20-36で動作するように見える(Photo22)。では、とばかりに設定すると(Photo23)、この有様である(Photo24)。ではDDR3-1333相当に(Photo25)、と思うと今度はブートすらしない。そもそもこのマザーボードがエンジニアリングサンプルの模様で、1333MHz FSBではブートしないとか、オンボードのGbEは利用できないとか、妙な動作制限がついているものだったが、DDR3-1333もまともに利用できなかった。結局、Photo25の設定のままMemory Frequencyのみ1066MHzにしてやっとブートしたという状況で、結局DDR3-1066 CL9相当でのテストを余儀なくされた(Photo26)。勿論これはエンジニアリングサンプルだからの話で、製品版でこんな事はないハズ(というか、そう祈っている)だが、ハードウェア的にはX38マザーの高クロック動作選別品といった趣なのに、実際はBIOS周りのチューニングが全然手付かずといった風情である。このあたりは結果にかなり影響を与えそうだ。

Photo21:以前こちらで紹介したCORSAIRのDominatorの構造を受け継いだと思しき、CORSAIRのXMS3 DHXシリーズのDDR3-12800

Photo22:DDR3-1600動作はXMPとして設定される。ところでJEDEC #2の593MHzって何だろう?

Photo23:Memory Voltageは1.8Vきっちりにはならないので、ちょっと高めの1.82Vにした

Photo24:MEMORY_MANAGEMENTというクラッシュ要因は、筆者には初見である。まぁ原因がわかりやすくていいのだが

Photo25:これもSPDに記載された設定そのもの

Photo26:結局こんな動作設定になった