そして1964年にIBMのSystem 360が登場する。それまでのコンピュータは目的とする用途に合わせて設計され、マシンごとに命令やアーキテクチャが異なっていた。当時は、色々なコンピュータのテクノロジが急速に進歩しており、世代ごとに作れるマシンの規模が大きく変わるのでやむを得ない面があるが、命令アーキテクチャが変われば、プログラムは作り直しとなってしまう。

このような問題を解決し、あらゆる種類の問題に360度対応できるシステムを目指して作られたのがSystem 360である。そして、マイクロプログラムという技術を使って小規模なマシンでも大規模なマシンと同じ命令セットが動作するという画期的なコンセプトを打ち出し、1964年にModel 30、40、50、60、62、70という6機種からなるシリーズを発表した。これにより、ユーザは当初は小規模マシンを導入し、ビジネスの拡張に応じてより大規模なマシンに乗り換えても、プログラムを作り変えることなく、処理性能を引き上げられることになった。

IBMは、このSystem 360の開発に当時の金で5億ドルをつぎ込んだと言われ、現在の貨幣価値に換算するとその10倍程度になると言われる社運を掛けたプロジェクトであった。

Computer History Museumに展示されたSystem 360 Model 30。中央に見える側面の赤い箱がCPUである。

System 360では、Solid Logic Technology (SLT)というセラミック基板に配線と抵抗を形成し、個別のトランジスタやダイオードを取り付けたキャラメル程度の大きさのハイブリッド回路が使用された。ここに展示されているModel 30は、64KBのコアメモリを持ち、加算を毎秒1300回実行できたと言う。

なお、IBMは最近ではBig Blueのあだ名で呼ばれ、IBMブルーの筐体が使用されているが、この時代のSystem 360 Model 30の筐体色は赤であるのが興味深い。