NTTドコモの中村維夫社長

「ワイヤレスジャパン2007」の初日、基調講演の一番手には、NTTドコモ代表取締役社長の中村維夫氏が「『DoCoMo2.0』~ドコモが目指すケータイの新たな価値創造~」との表題で登壇した。総務省のモバイルビジネス研究会が、通信事業者が販売奨励金により端末の販売を促進するという商慣行の見直しや、SIMロックの解除を提言していることについて言及、「端末料金と通信料金の分離」への検討とともに、SIMロックも現状を固守しようという姿勢ではないが、安易には解除できるものでないとの認識を示した。

国内の携帯電話事業者は、販売代理店に一定の「販売コミッション」を供与し、実際には高額な端末の価格を引き下げて消費者に販売する一方、それを、月々の携帯電話使用料で回収している。このような構造は、高機能端末の普及促進、またその需要の創出、携帯電話によるインターネット接続比率向上など「日本の携帯電話市場に先進性をもたらした一つの要因」(中村社長)ではあったが、「本来、数万円の端末がゼロ円とされるなど極端な例がある」ことから、「頻繁に買い換えるユーザーには有利だが、あまり買い替えをしない層には不利で不公平感がある」(同)のも事実だ。

いまの「慣行」を変えるとなると、端末の利用期間を担保するなどでの条件で、端末の価格は上昇するものの、月額の利用料金は下げるというような策などが考えられるが、同社は急激な改変ではなく「ソフトランディングするのが適切」(同)との考えで、現行の販売奨励金による事業構造を見直していく意向だ。ただ、エンドユーザーが最終的にいくらくらいの価格で端末を購入しているかは「把握できていない」とするとともに、現在の「販売コミッション」方式をやめれば「端末の販売数は減ることになる。メーカーや代理店への影響を考えなければならない」として、あくまで慎重な姿勢を示した。

また、SIMロックについては、「(NTTドコモの採用している)W-CDMA方式では、技術的に、解除することは可能だ」とした。ただし、SIMロック解除後「ドコモ端末のSIMカードを他社端末で使用した場合、音声通話はできるものの、(iモードを利用したサービスである)メールやWebサイト閲覧などはできなくなる」(同)。また、同社端末と、W-CDMA方式のソフトバンクの端末との間には親和性があるが、KDDIのCDMA2000方式の端末との間には互換性がない。中村社長は「SIMロック解除に対しては、ビジネスモデルより、この問題の方がはるかに大変」と指摘した。さらに、SIMロックを外した端末が海外に持ち出され、転売で利益を得る事例などがあり「海外流出のことを考慮すると、ある程度の価格にしなければいけない」と述べ、これらの条件が整わなければSIMロックを安易には解除できないとの見方を示し、具体策は「2010年までに考えていきたい」と話す。

一方、MVNOについては、同社に3G通信網の回線の利用を申し込んでいる日本通信が、協議が不調であるとして、総務大臣の裁定を求める申請を行っている。日本通信は、インフラを借りるMVNO事業者側がサービスの内容、料金を決められるようにすることなどを主張している。中村社長は「MVNOには反対ではない。基本的にOK」と話した。「MVNOには大別すると、卸しと相互接続の二つがある。MVNOは結構だが、卸し方式が適当ではないか。相互接続は約款が必要で、手続きが煩雑になる」としている。日本通信の求めているのは相互接続だが「価格で折り合わなかった」という。