wizpyを利用した感想だが、使い手を選ぶ、という一言に尽きる。この意味がわかりやすいよう、現在29,000円前後で販売されている2GBモデルと、同じフラッシュメモリタイプでボディサイズが近い2代目iPod nano 2GBモデル(Apple Store価格17,800円)を例に比較してみよう。

まずはオーディオプレイヤーとしての機能。両者ともディスク容量は2GBだが、wizpyはシステム領域に約1GBを割かれるため実質1GB、一方のiPod nanoはまるまる2GB。操作性は慣れや好みの問題があるため考慮しないとしても、ランダム再生の有無、アーティスト名やレート情報を基準とした再生順序の決定など、洗練の度合いでは迷わずiPodに軍配があがる。

続いては、楽曲や動画などの転送作業に欠かせないPCとの連携。両者ともPCに依存するが、iPod nanoがWindowsとMacに対応することに対し、wizpyはLinuxのみ、しかもwizpy自身をブートディスクとして使うという手間がかかる。FAT32フォーマットのUSBメモリとしてOSの別なく利用できるものの、それでは1GB以上のディスク容量を必要とするTurbolinuxの領域が意味をなさない。Linuxにこだわるユーザでも、ホストマシンがUSBブート対応機ならば自力でインストールすればいいことだからだ。しかも、Songbirdのような、iPodに対応するLinuxで動作可能なジュークボックスソフトもある。大多数のユーザは、OSを切り替えてブートする必要がないiPodのほうが使いやすく感じることだろう。

ムービープレイヤーとして見れば、あえて書くまでもなくwizpyの勝ち。しかし、再生可能なムービーはAVI(XViD) / 160x128ピクセル / 20fps以下などと制限があり、普段PCで利用しているムービーファイルを見る場合は再エンコードが必要になる。動画に対応した第5世代のiPodが、動画再生機能が購買意欲に直結しているわけではないこともあわせると、このムービープレイヤーとしての機能が市場に訴求する効果はあまり期待できないように思える。

では、何がwizpyの長所かというと、iPod nano並みのサイズながら動画の再生に対応すること、マイクを装備すれば録音も可能なこと、明るい有機ELディスプレイを装備する点こと、FMチューナーを装備すること。オーディオフォーマットにOgg Vorbisがサポートされていることを挙げる人もいるかもしれない。これまでTurbolinuxを使い続けてきたユーザであれば、Turbolinux FUJI相当のOSがプリインストールされていることも理由になるだろう。

そこで重要になるのが、本体価格。Turbolinux FUJI相当のOSがプリインストールされているとはいえ、iPod nanoとの約1万円の価格差はいかにも大きい。どうしても携帯可能なTurbolinuxのブートディスクがほしい、音楽CDのリッピング & エンコード目的でLinuxをブートする手間もいとわない、という強いコダワリがあるユーザでないかぎり、本体サイズ / 機能面で競合するポータブルオーディオ / ムービーデバイスとの価格差は、wizpy普及の足かせになるように思える。