リスク検知に特化したデータ解析技術を活用することで、企業を脅かすデジタルリスクの予兆を検知し、未然の防止や迅速な対策を支援する株式会社エルテス。SNS をはじめとした Web メディアの監視(リスクモニタリング)や、リスク対策のコンサルティングなど、高度化を続けるデジタルリスクに対処するためのソリューションを展開しており、最近では警備事業や地方自治体における DX の支援などにも取り組んでいます。

多種多様な企業向けに IT ソリューションを開発・運用している同社では、異なるアーキテクチャのシステムが混在することによる人的負荷や運用コストの増大が課題となっており、解決を図るためデータ分析基盤の刷新・統合に着手。そこで採用されたのは、マイクロソフトのコンテナオーケストレーションサービス「Azure Kubernetes Service(以下、AKS)」でした。

多種多様なサービスごとに基盤を構築したことで、運用面の課題が顕在化

株式会社エルテス データインテリジェンス本部 システム開発部 サービス開発グループ 杉田 大樹 氏

株式会社エルテス
データインテリジェンス本部
システム開発部 サービス開発グループ
杉田 大樹 氏

高度化・多様化したデジタルリスクへの迅速かつ適切な対処は、あらゆる業種・規模の企業にとって重要なミッションといえます。昨今では SNS でのバイト従業員の不適切な発言が問題となったり、企業名や製品名での検索時に不適切なサジェストが表示されたりと、企業のブランドイメージを損なわせるリスクも増加しています。エルテスは、こうしたリスクに対処したい企業に対し、AI を活用したデータ解析技術やコンサルティング対応で強力に支援しています。

同社では、リスクマネジメントを支援するため、数多くのサービスを開発・運用しています。サービスごとに基盤(プラットフォーム)を構築してきたため、エンジニアにかかる負担やシステムの老朽化にともなうメンテナンスコストの増加が大きな課題となっていました。サービスのリリースはもちろん、顧客の要望や市場の変化に対応した新機能の追加にも時間がかかり、開発基盤のモダナイズが急務となっていたといいます。同社 データインテリジェンス本部 システム開発部 サービス開発グループの杉田 大樹 氏はこう語ります。

「サービスを立ち上げるごとにオンプレミスやパブリッククラウドに基盤を構築していくのは、コストや効率的を考えても合理的とはいえませんでした。さらに SaaS としてサービスを提供し、世の中のニーズに合わせてスピーディに機能追加などを行うには、従来のレガシーなシステムでは限界があります。こうした課題を解決するために、ビッグデータ分析基盤の集約とモダナイズに取り組みました」(杉田 氏)。

AKS を採用することで柔軟かつ迅速なアプリケーション開発環境を実現

ビッグデータ分析基盤のモダナイズにあたり、エルテスが選択したのがフルマネージドのコンテナオーケストレーションサービス「Azure Kubernetes Service」(AKS)です。杉田氏は AKS を採用した理由をこう話します。

「アプリケーションのリリースという観点で見ると、従来のレガシーシステムでは煩雑な手順を踏む必要があり、さらにリリース後のチェックや問題発生時のロールバックなどにも工数がかかっていました。AKS の機能を使ったプラットフォームでは、こうした処理が一元化ないしは自動化でき、迅速かつ安全にアプリケーションのリリースが可能。問題が生じた場合も迅速に戻せます。さらに冗長化の仕組みも備わっており、仮にクラウド上のシステムがダウンしてもサービスを継続できます。こうしたポイントが採用を決めた大きな要因となります」(杉田 氏)。

また、エルテスが目指すエンジニアドリブンなビジョンの実現においても、最新のテクノロジーを積極的に取り入れられる AKS は有効と杉田 氏。エンジニアスキルの底上げを図りたいというニーズに応えられることも採用の決め手になったと力を込めます。

株式会社エルテス データインテリジェンス本部 システム開発部 ITソリューショングループ 芳賀 達也 氏

株式会社エルテス
データインテリジェンス本部
システム開発部 ITソリューショングループ
芳賀 達也 氏

もちろん、プロジェクトの立ち上げ時には他のソリューションも検討していましたが、AKS も含めて国内における導入事例が少なく、採用を決めるのに苦労したといいます。本プロジェクトのマネージャーを務めたデータインテリジェンス本部 システム開発部 ITソリューショングループの芳賀 達也 氏は当時を振り返ります。

「採用を検討していたソリューションはどちらも事例が少なかったのですが、マイクロソフトに声をかけたところ成功事例やベストプラクティスを提示していただき、具体的な導入イメージが掴めました。採用を決めたあとは数回にわたりワークショップが開催され、実際に AKS を組み立てる作業を解説してもらえました。問題が生じた際には随時アドバイスしていただけたので、スムーズに基盤構築を進められました」(芳賀 氏)。

またエルテスでは、2017 年からマイクロソフトの AI サービス「Azure Machine Learning」(Azure ML)を、同社のリスクモニタリングサービスに活用しており、AKS が Azure ML と連携しやすいことも大きなメリットだったといいます。

サービスを停止することなく移行を実施、すでに多くの効果が得られている

エルテスが展開するデジタルリスク対策ソリューションは24 時間 365 日稼働させるものが多く、極力ダウンタイムなしで、AKS で構築したプラットフォームへの移行を行う必要があったと芳賀 氏は語ります。

「プラットフォームを切り替える際には、サービスをダウンさせることなく行わなければなりませんでした。そこでマイクロソフトの Azure Migrate サービスを利用し、アプリケーション側を移行させてからデータベース側を移行させるという手順で、ほぼダウンタイムなしで切り替えることに成功しました」(芳賀 氏)。

開発から移行が完了するまでにかかった期間は約 3 カ月。同社の SaaS 基盤、すなわち顧客に提供しているサービス全体の集約という意味では、取り組みの第一歩としての基盤構築と AKS への切り替えが整備できた段階ですが、すでに多くの導入効果が得られています。

「今回の AKS を採用したデータ分析基盤の構築において、得られた効果は大きく 3 つあります。1 つ目はインフラ保守要員の削減効果で、自動化を進めることでシステムを維持するための定常作業がほぼなくなりました。2 つ目は開発期間の短縮です。モダンな開発基盤を構築することができたので、テストを経てリリースするまでの期間が圧倒的に短くなり、平均で 1 カ月程度の短縮を実現しています。そして 3 つ目はシステム基盤の拡張性、すなわちスケーラビリティの向上です。各サービスの利用者が増加した際、機能強化や応答できるサーバーの機能増強などをほぼノンストップで実現できるようになりました」(杉田 氏)。

芳賀 氏も「デプロイする際に止めることなく自動でできるため、お客様に対して事前にサービス停止を通知する必要がなくなりました。」と語り、今回のデータ分析基盤刷新・集約により顧客体験(UX)が向上したと力を込めます。AKS を採用したことによってマイクロサービス単位で機能拡張が行えるようになり、顧客が気付くことなく(=サービスを止めずに)機能を追加することも可能になったといいます。このため、同社の開発手法も変化してきたと杉田 氏と芳賀 氏は声をそろえます。

「今までは要件を定義して設計・開発・テストという一連のプロセスがありましたが、顧客体験(UX)を起点とした開発が可能となったことで、お客様の課題や要望、ペインを元に何をしていくのかというところからスタートできるようになりました」(杉田 氏)。

「既存サービスにおける細かな修正に関しても、これまでは柔軟な対応ができていなかったのですが、今回、基盤のモダナイズが実現できたことで、スピーディに対応できるようになりました」(芳賀 氏)。

このように開発プロセスのモダン化が進んだことは、エンジニアの意識改革が進むよいきっかけとなると杉田 氏。「利用するお客様の姿を想像しながらサービスを開発する土壌ができあがったと思います」と喜びを口にします。

マイクロソフトの最新技術を活用して、さらなる顧客のリスク低減を目指す

今回のプロジェクトでインフラ基盤や開発基盤のモダナイズを実現したエルテスでは、構築した基盤に各種サービスを集約し、SaaS 化をより推進していく予定といいます。最終的な目標は、顧客体験(UX)レベルでの「統合」で、各サービスの使い勝手や利便性を、あたかも 1 つのサービスのように統合することで顧客体験(UX)を向上。それにより顧客のリスク低減につなげていきたいと杉田 氏は話します。

同社では、AI 技術を活用したデジタルリスクマネジメントサービスの拡充を行っていく予定です。このため、すでに活用している Azure ML をはじめ、マイクロソフトが提供している AI 関連のサービスに注視し続けていくと杉田 氏。「マイクロソフトの AI サービスを活用してさまざまなチャレンジを行い、人でしか判断できなかった領域を AI に置き換えていきたいと考えています」と今後の展望を口にします。

芳賀 氏は、各サービスに蓄積された多種多様なデータを 1 つのデータベースに集約・活用するための手段として「Azure Cosmos DB」に注目していると話します。

また、杉田 氏と芳賀 氏は、今回のプロジェクトを通してマイクロソフトに対するイメージが変わったといいます。

「マイクロソフトのサービスはエンタープライズ企業向けというイメージが強かったのですが、今回のプロジェクトを進めていくなかで、クラウドを積極的に活用しようとしている企業を規模や業種を問わず支援してくれるという力強さを感じました。日常的なやり取りや相談にもすぐに答えてくれ、『困ったらマイクロソフトに相談して解消』という信頼関係が構築できたと思っています」(杉田 氏)。

「今回、初めて AKS を利用したのですが、マイクロソフトは Microsoft Learn という無償のトレーニングコンテンツを用意しており、インフラエンジニアがゼロから学習できるように支援してくれました。実際、Azure に触れたことのなかったエンジニアでも 2 カ月程度で自在に使いこなせるようになっています」(芳賀 氏)。

AKS を採用したデータ分析基盤のモダナイズにより、顧客体験(UX)を起点としたサービスの拡充を進めるエルテス。マイクロソフトの最新技術を積極的に活用する同社の今後の展開には、今後も注視していく必要があるでしょう。

[PR]提供:日本マイクロソフト