創業からGoogle Cloudの日本トップクラスの実績を持つシステムインテグレーターであるクラウドエース株式会社。Google Cloudにおける日本国内初のプレミアパートナーであり、また2024年には「Google Cloud Partner of the Year」で見事5冠を達成した。この快挙の裏側には、創業からつねにトップを走り続けるための決断と挑戦の連続があった──そんなクラウドエースを紐解くべく、創業から現在に至るまでの道のりや今後の展望について、取締役会長 吉積 礼敏氏にインタビューを行った。

  • (写真)トロフィーの前に立つ吉積会長

プロフィール

クラウドエース株式会社 取締役会長
吉積 礼敏氏

東京大学工学部卒業後、アクセンチュアのコンサルタントを経て起業。Google Cloud のプロダクトに感銘を受け、Google Cloud に大きな強みを持つ「クラウドエース」ブランドをスタート。Google Cloud の黎明期より国内における認知向上、市場拡大を牽引してきた。著書に『Google Compute Engine入門』や『仕事で使える!Google Cloud Platform』などがある。

Google Cloud の将来的な市場を見据えた経営判断

——まずは、吉積会長のご経歴についてご紹介ください。

徳島出身で、幼い頃から自分で事業を興したいと思っていました。大学卒業後はアンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社し、テクノロジー部門でキャリアを積んだのち、29歳のときに独立して吉積情報株式会社を立ち上げたんです。2008年に登場したGoogle App Engineに衝撃を受けてクラウド事業に取り組みはじめ、ちょうど10年前の2014年に「クラウドエース」というブランドでGoogle Cloudに特化したサービスをスタートさせました。

——2016年には吉積情報からクラウドエースを分社化されましたが、この狙いを伺えますか?

2016年は、日本初のGoogle Cloudのデータセンターとして東京リージョンが正式に運用を開始した年です。他パートナーの参入が予想されるなかで、自己資本だけではGoogle Cloud事業のNo.1として走りきれないと考え、どうせやるのであれば世界No.1を目指し外部資本を入れてアクセルを踏もうという方針に切り替えました。これが分社化の狙いです。

——そこからクラウドエースは、国内トップクラスのGoogle Cloud導入実績を誇るまでに成長してきました。事業成長の過程で苦労されたことはありましたか?

当時、Google Cloudはイノベーターやアーリーアダプター向けのプロダクトと言ってよかったと思います。感度の高いエンジニアをはじめとした一部のユーザーからは強い興味を持たれていましたが、最初の1年は本当に大変でしたね。来場者規模が5万人の展示会で7,000枚のチラシを配布したのに、商談のアポイントを一つも獲得できなかったこともあります。まずは認知度を上げなければ…! という考えからイベントに登壇したり、書籍を執筆したり…。Google Cloudはもちろん、クラウドエースというブランドの認知度を高める活動に取り組んでいきました。

——当時は一貫してGoogle Cloudに特化したサービスを提供されていますね。

事業の範囲を的確に絞るということはずっと意識してきました。2015年~2016年にかけては「なぜ他のクラウドプラットフォームにしないのか」といわれたこともありました。ですが、私はGoogle Cloudはプロダクトとして優れていると確信していたので、確実に成長するマーケットであるという見通しを持って、この領域に注力してきたんです。

——将来のマーケットを見通していたことが事業の成長要因だったと。

それに加えて、エンジニアをはじめとした社員の実力を発揮できる環境づくりができたことも成長要因の一つですね。働きやすさや心理的安全性が担保されていることは当社の特徴です。経営陣のなかでも心理的安全性は非常に高く、派閥や組織論で牽制し合うみたいなこともありません。弊グループのミッションは「正直を仕事にする」ですから、「嘘」のようなものを抱えず、ゴールである顧客体験価値のためにまっすぐ仕事ができるのも大きいと思います。

——成長要因の一つに企業カルチャーもあるんですね。

そうですね、当時はイノベーターやアーリーアダプター向けのプロダクトであったGoogle Cloudにコミットした事業を展開することで、尖ったエンジニアを集めることができました。そして、エンジニアたちが思う存分に活躍できるよう環境を整備していったという感じですね。事業の中心は人です。社員が快適に働ける環境づくりをしていった結果、事業を成長させられているのだと考えています。

  • (写真)インタビューに答える吉積会長

日本発のグローバルテックカンパニーへ

——Google Cloud Partner of the Year 5冠達成、おめでとうございます。7年連続での受賞ですね。

ありがとうございます。これも、Google Cloudに特化したからこそ実現できたことだと思っています。成長分野には積極的に投資するという戦略が実を結びましたね。

世界No.1のシステムインテグレーターを目指すにあたって、Google Cloud Partner of the Yearのような実績の証明になる賞を獲得することは、わかりやすい一つの指標になると思います。また、成長のためにこのようなアワードを活用してきたという側面もありますね。一つの旗をたてて、社員全員の力で達成する。そうしていくことで人も企業もより強く成長していきます。

——2024年度は、5部門での同時受賞でした。

クラウドエースは日本発のTECHブランドです。そのため、この同時受賞は日本ならではの高品質なSIが世界でも評価されたという証明でもあり、あらためて自信をもてましたね。世界No.1を目指すため2018年ごろからスタートしたグローバル展開ですが、世界に拠点をもっておくことで、次々と出てくる新しい技術をいち早くキャッチできるという利点もあります。私たちは先端技術の目利きとしての役割もありますから、グローバル展開は多方面でメリットがありますね。

「グローバルNo.1のシステムインテグレーター」を目指して、さらなる挑戦へ

——今、注力されている取り組みはありますか。

私たちのグループは「すべての人が先端技術を活用し、想い描いた夢を実現できる世界」をビジョンに掲げています。現在、先端技術として世の中で注目されているのが生成AIです。当社でも生成AIに関する取り組みをはじめており、2024年度ではグループ全体で複数のサービスをリリースしました。

また、先端技術の事業領域として生成AIのトレンドを捉えていくために、新しくGenAIOpsに特化した新会社も設立しました。生成AIネイティブでいかに世の中を変えていくかがこれからの時代のテーマです。生成AIを活用して業界構造を革新できるような取り組みを行っていければと思っています。

——この先、クラウドエースが目指すところを教えてください。

「グローバルNo.1のシステムインテグレーター」を目指しています。Google Cloudだけでなく、他のクラウドプラットフォームを含めたインフラ領域全体で1位を獲得することが理想です。そのためには、ミッションである「正直を仕事にする」をより明確化していくことが必要だと考えています。誠実さが評価される会社であり続けたいですね。

——ありがとうございました。

  • (写真)吉積会長

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※Google Cloud および Google App Engineは Google LLC の商標です。