独自のブロックチェーン技術によって「安全なインターネットの世界」の構築を目指す、ジャスミー株式会社。新時代のデータ管理ソリューションは、なぜ安全なのだろうか? そしてなぜブロックチェーン技術が「地域創生」に繋がっていくのだろうか?同社 代表取締役社長 佐藤一雅氏に話を聞いた。

  • (写真)ジャスミー株式会社 代表取締役社長 佐藤 一雅氏

    ジャスミー株式会社 代表取締役社長 佐藤 一雅氏

デジタルセキュリティの新たな世界を目指して

―はじめに、ジャスミー創業の経緯をお聞かせいただけますか?

ジャスミーは、元ソニーの人間が集まって立ち上げた会社です。私は"VAIO"や"So-net"などの事業立ち上げに携わり、日本で最初のメーカーによるEコマース「ソニースタイル(現ソニーストア)」などの代表を務めてきました。

その後、一マーケターに戻ろうとソニーを離れたのですが、3.11が起きて人生を考え直しました。今まで「インターネットは世界中の人々を幸せにする」と信じて頑張ってきましたが、インターネットの発展とともにむしろフェイクニュースや誹謗中傷が飛び交い、プライバシーが危険に曝されるようになってしまいました。そしてそれが3.11で決定的なものになりました。もっと安全なネットの世界をつくりたい、と強く思ったのです。

ちょうどその頃、ソニーの代表取締役社長兼COOなどを歴任した安藤がソニーグループの役員から退いたのですが、彼は彼で「日本からイノベーションが生まれなくなった」という危機意識を持っていました。それなら一緒にやろうと、ジャスミーを立ち上げたのです。

―ブロックチェーン技術に、早期から着目されていたのはなぜでしょうか?

クラウドにしろビッグデータにしろ、ネットワークの「中央集権化」が過度に進み過ぎていくことを懸念していました。中央もしくは1社(のサーバー)に情報が集約化されることにはもちろんメリットがあるのですが、一方で膨大な情報が行き来することにより、ひとりひとりのユーザーデータは軽んじられ、危険にさらされる可能性が高くなるのです。あえて「トレンドの逆」を行くのがソニー流というところもあり、我々は中央ではなく、エッジ(端末)側に注目し、その技術と可能性を深掘りしていました。そんなとき、ブロックチェーンに出会ったのです。

ブロックチェーンは、巨大なデータベースを持っている誰か、ではなく、個々の端末が相互にチェックすることによって、情報を勝手に変えたり壊したりできなくする、今までとはまったく違うアプローチで実現した極めて安全性の高い技術です。ジャスミーは、個人情報およびIoT機器のデータにブロックチェーンを利用し、よりセキュアに扱うための技術を開発し、特許を取得しています。

―ジャスミーのブロックチェーン技術は、コロナ禍でも注目を浴びたそうですね。

あのときは、急遽リモートワークに切り替えざるを得なかった企業が多数おられましたので、簡単かつ低コストでセキュリティを保てるという観点から、ジャスミーの技術が注目されたのだと思います。ブロックチェーンは高いトレーサビリティを持ち、なおかつ不正ができないので、リモートワークに向いた技術でもあるんです。

我々の提供する"Jasmy Secure PC"は、業務用データへのアクセスを開通・遮断したり、PC作業ログを細かく取得したりすることによって、情報漏洩対策と勤怠管理支援を同時に達成できるサービスとなっています。

Jasmyプラットフォームがもたらす、地域創生と個人情報管理の革新

―地域創生のためのデータ管理ソリューション「Jasmyプラットフォーム」について、ご説明いただけますか?

個人情報の管理は、今後ますます重要性を帯びていくでしょう。しかし、従来のサーバー型の管理は、極端な言い方をすればマスターキーひとつで全データを掌握できてしまう一方、そのためにどうしてもリスクがつきまといます。

Jasmyプラットフォームの核となる「パーソナルデータロッカー」の発想は違います。データベースを1社で保有し管理するのではなく、我々はユーザー個人個人がそれぞれデータを保有していただくための箱(つまりロッカー)をご用意しているだけなので、オーナーはユーザーそれぞれになります。ブロックチェーンで守られたこのシステムは、一人ひとり違う鍵を用いているので、万が一鍵が一つ漏れたとしても、すべての情報が漏洩することはありえません。

  • (図版)データの民主化を支える Jasmy Personal Data Locker

そして、情報のオーナーはあくまでもユーザーなので、ユーザーの同意がなければ情報を閲覧することはできません。A社にはこの情報を渡す、B社にはこの情報を抽象化して見せる、といった管理を、ユーザー側がおこなうことができます。別の見方をすれば、パーソナルデータロッカーを使えば、企業・自治体は個人情報管理のリスクや労力・コストを、大きく減らすことができるというわけです。

また、個人情報保護の観点から、部署が別々に情報を抱えてしまっている、といったこともありますよね。その場合でも、パーソナルデータロッカーを使えば、全社的なプロジェクトや、健康や防災といった分野横断的なテーマに対して、データを共通して扱えるようになります。

この着想の原点は、ソニー時代のコールセンターです。不具合の問い合わせがあったとき、別メーカーの機器が原因だと分かると、結果として「たらい回し」になってしまうことが起きていました。しかし、ソニーのコールログの内容をパーソナルデータロッカーに入れておけば、ユーザーは、次は「ここを見て下さい」というだけで、何度も同じ説明をしなくて済むようになります。

―Jasmyプラットフォームの「地域創生のためのデータ管理」とはどういう意味なのでしょうか?

個々人が持っている生活行動データや端末のデータは、我々が「プラチナデータ」と呼んでいる貴重な情報です。どのような家族構成で、どんな働き方をしていて、どんな購買行動をしているのか、といった情報は、高い価値を持っています。

今は、ビッグデータを持っている巨大企業が勝ち続ける世界になっており、GAFAMなどの海外のITサービスにどんどんお金が流れていっています。ビッグデータを扱う巨大なサーバーや、情報管理のためのリソースが、大きな参入障壁となっているのです。

しかし、個人が自分の意志でプラチナデータを提供するようなプラットフォームが構築できれば、さまざまな情報を使って、地方の小さい会社でも、創意工夫に満ちた事業展開ができるようになります。

  • (図版)ビッグデータ から プラチナデータ へ

Jasmyプラットフォームは、パーソナルデータロッカーだけでなく、会員証など証明書の発行や、ポイント・地域通貨の付与といった機能を持っています。独自のステーブルコイン(※)の発行も可能です。このプラットフォームを使うことで、コミュニティ内で経済を循環させることができるようになるのです。

(※)ステーブルコイン・・・価格が安定するように、法定通貨やコモディティ(商品)などの価格と連動する設計がされた暗号資産(仮想通貨)のこと。

―具体的には、どのようなことができるのですか?

たとえば、Jリーグのサガン鳥栖のファンづくりに、Jasmyプラットフォームの各機能が活用されています。スマホアプリ経由で、サガン鳥栖に関係した漫画やお笑い、ダンスなど、さまざまなコンテンツに触れたり、ミッションに参加したりすることでポイントが増え、VIP席での観戦チケットやユニフォームがもらえるような仕組みです。NFTにより改ざん不能なファントークンユーザーの証としてのデジタル名刺も発行できます。

あわせて、このデータを鳥栖の商店街で活用していただくような実証実験も行いました。たとえばですが、「ビールが好きだ」と表明しているファンが多くスタジアムに来ているから、今日は居酒屋さんの販促としてはビールのクーポンを発行しよう、といったことができるのです。

  • (図版)地域や他社連携を容易にする Jasmyプラットフォーム

「Jasmy Initiative」で新たなデータ管理の共創へ

―8月22日開催されたイベント「TECH+ EXPO 2024 Summer for データ活用」では、「Jasmy Initiative」を提唱されました。

(写真)講演する佐藤氏

Jasmyプラットフォームの各種機能や、デベロッパープログラム、特許の利用を提供する会員組織が、Jasmy Initiativeです。我々のユーザーデータは、反社チェックはもちろん、マイナンバーでの本人認証もできますから、企業に安心して使ってもらうことができます。

データ管理や認証システムなどを独自に用意するのは高いコストがかかりますが、Jasmyプラットフォームは、皆で共有することにより、ハードルをぐっと下げて利用することができます。「このユーザーは直近三日以内にA商店で本人確認しているから、それをもって認証にしよう」ということができるのです。

ただし、我々だけではこうした新しい世界をつくることができません。一緒に新しいことに挑戦していただける方々、つまり先駆者となっていただける方にどんどん参加していただかなければならないのです。それが"Initiative"という言葉を使った意図です。

まずは認証だけ使う、個人情報管理だけ使う、といった参加の仕方でも、想像以上にリスクとコストを減らせることが分かっていただけると思います。一緒に「安全なインターネットの世界」を作っていければ幸いです。

─ありがとうございました。

  • (写真)「Jasmy Initiative」が発表されたセミナーは多くの注目を集めた

    「TECH+ EXPO 2024 Summer for データ活用」では、「Jasmy Initiative」が発表され、多くの注目を集めた

関連リンク

[PR]提供:ジャスミー