ITへの投資を積極的に行い、いわゆるDXを実現させることがビジネス促進の近道とされるなか、目先の恩恵にばかり目がいってしまう企業も少なくない。しかし、IT投資にはそれ相応のお作法があり、これを疎かにすると、ビジネスの促進はおろか、企業そのものの存在意義をも棄損しかねないことは忘れてはならない。デル・テクノロジーズ DPS事業本部 事業推進担当部長の西頼 大樹 氏と、Tech+ 編集長 星原 康一との対談では、DXを推進するうえで押さえておきたいポイント、また、安全にビジネスを成長させるIT投資という観点から、“データ管理”の重要性を紐解いていく。DXが今後さらに加速することが予想されるからこそ、広い視野でIT投資を考えてみたい。

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“社員のため”という意識でDXに取り組む、デル・テクノロジーズのIT組織「Dell Digital」

マイナビ 星原(以下、星原):今回は、DXを阻害する要因やリスクを探り、DXを推進するうえで、なぜデータ管理を重視すべきなのかといったテーマを掘り下げていきたいと思います。私はメディアの編集長という立場から、多くのビジネス向けセミナーに携わっています。そのなかでDXを推進している企業の話をお聞きすると、その多くがDXの“X”、すなわちトランスフォーメーションを難しいものと捉えています。顧客と接する機会も多い西頼さんから見ても、トランスフォーメーションに苦労している企業は多い印象でしょうか。

デル・テクノロジーズ 西頼氏(以下、西頼氏):お客様もそうですが、弊社自身もグローバル企業としてDXを推進しており、トランスフォーメーションに取り組んでいます。そのなかで必ず出てくるのは「DXは意識の問題だ」という話です。そこで弊社のDXでは、ITを担う部署であるシステム部門という名称を廃止し、「Dell Digital」の名で4~5年前から社員のためのDXを推進してきました。

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    デル・テクノロジーズ株式会社 DPS事業本部 事業推進担当部長
    Executive Business Development Manager
    西頼 大樹 氏

星原:組織名を変更し、“社員のため”という意識でDXに取り組まれたことで、どのような効果が生まれたのでしょうか。

西頼氏:対応が良くなった、早くなったのはもちろんですが、もっとも効果を実感したのは、パンデミックに当たり前のように対応できたことです。Dell Digital化で既に整えられていた環境があったおかげで、現場は何ごともなかったように業務を継続できました。もともと在宅勤務を念頭においたワークスタイルやビデオ会議システムなどの設備は当たり前のように活用されており、リモート会議は海外も含めて日常的に行われていました。その文化をDell Digitalという弊社のシステム部門が変革・醸成してくれていたことで、人に会えないことでのみ起こりえる弊害以外の問題は生じませんでした。

星原:Dell Digitalを立ち上げて意識改革を行ったことで、効果的なDXを推進するための素地ができあがっていたということでしょうか。

西頼氏:そうですね。今回のテーマにもつながるのですが、我々のようなITメーカーに対しては、自社製品を中心にIT環境を構築しているといったイメージをお持ちの方も多いと思います。ところが弊社では“いいものは使う”というスタンスで、SaaSサービスなどにも積極的な投資を前から行ってきました。また日本においては、コンプライアンスの観点からバックオフィス系のサービスに一部国内ベンダーのSaaSを採用するなど、柔軟にシステムへの投資を行っているのが特徴といえます。

さまざまなツールが浸透したいま、あらためて考える業務部門にとってのDXとは

星原:とはいえ、一般の会社、とりわけ日本の大企業においては、デル・テクノロジーズのような柔軟なアプローチで進めるのは難しいと感じているケースも多いかと思います。西頼さんの経験上、“こうすればDXは成功する”といった秘訣があればぜひ教えてください。

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    株式会社マイナビ コンテンツメディア事業本部
    TECH+編集長 星原 康一

西頼氏:私がDell Digitalという組織の姿勢でとくに共感しているのは、“自社システムにこだわらず、使えるものはSaaSでも積極的に投資していくこと”と、“なぜ使うのかを明確化したうえで投資すること”です。先ほど話したバックオフィス系のシステムにしても、なぜ、日本のローカルベンダーのサービスを選ぶのかという“理由”を明確にしてから導入している。

会社としても個人としても、自身を俯瞰し、どこで何ができるのかを把握しておくことが大切だと考えています。私個人の話をすると、パンデミックが起きて自宅でフルタイム仕事をするようになったことを機に、自分の仕事の棚卸しを行いました。家で24時間365日仕事をすると考えた場合、何が自宅でできて、何が出社しないとできないのかを把握すれば、どのような準備をすればよいか見えてくる。これを会社に置き換えると、上の立場の方が全体を俯瞰できているかどうかが重要になってくると考えています。

星原:たしかに全体を俯瞰できていない企業は、DXをうまく進められていない。デジタル利活用は進めたいが、どう使っていいのかわからないといったケースが多い印象があります。DXの取り組みを始めるにあたっては、まず「誰がやるのか」という問題に直面します。その際の進め方としては、ある程度ITリテラシーの高い経営者がいる場合は「全社教育」を進めるという話になり、そうでない場合はDXのスペシャリストを連れてきて、成功体験を得てから全社展開するというやり方や、外部の協力を仰ぎながら、経営課題解決の観点からDXを推進するといったアプローチが考えられます。どのケースでも、業務部門がデジタルに慣れてもらうことが重要になると思いますが、西頼さんはどのようにお考えですか。

西頼氏:おっしゃるとおりだと思います。DX関連のセミナーを聴いていると、「経営者がデジタル技術をビジネスの根幹と捉えることが重要」という話がよく出ますが、それを実際に行動に移せているかが、成功されている企業を別つポイントという印象です。また、昨今ではノーコード・ローコードツールなどが普及し、業務部門自身が主導してアプリケーションやサービスを開発し、ITから縁遠いがより顧客に近い立場の方々からもDXを推進していくための土壌ができてきたと感じています。十数年前までは、業務部門の方に自分でアプリを作れと言っても、まずできませんでしたが、いまはプログラミングの知識がなくても簡単にアプリケーションを作ることができる。すぐに成功体験が得られるのは非常に大きいと思います。

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星原:ノーコード・ローコードツールもそうですが、最近ではChatGPTなども登場し、質の高いソースコードをAIに作ってもられるようになりました。今後は、これまで以上に業務部門自身がアプリを作成して使っていく時代になってくると思いますが、そこで重要になってくるのが、「データの整備」ではないでしょうか。

西頼氏:ChatGPTの普及により、今後はデータの信頼度が問われることになります。不正確なデータから書かれたプログラムのコードに致命的なバグが含まれていても、気づくのが遅れて甚大な損害を出す事態を招きかねません。

星原:こうしたリスクが顕在化してくると、IT投資をためらう会社も出てくるかと思いますが、AIをはじめ先進技術を危険なものと捉えて利用を避けていては、トランスフォーメーションの実現は困難です。大切なのは少し先を読めるようにして、このままいって大丈夫なのかを把握し、必要に応じて方向修正を行っていくことだと思います。

西頼氏:日本企業の特徴として、欧米企業に比べると、ものごとの微調整はとても得意だと思うんです。でも、欧米企業のほうがより優れている印象があるのは、大きな舵を切る方向修正。「このまま行ったらこうなる」リスクを感じたときに、すぐに決断できることが大切です。日本企業の傾向としては「失敗してはいけない」というところがありますが、デジタル化によってこれだけ即時の判断で成果が大きく変わる世の中になってきているなか、失敗することを踏まえた対策を常に考えておくことが重要になってくるはずです。

DXで陥りやすいリスクとデータ管理への投資が必要な理由

星原:先ほど話したように、ノーコード・ローコードツールやChatGPTを活用することで、業務部門主導で大量のアプリが運用される世界が到来すると考えた場合、重要な役割を担うのが「データの管理」ひいては「整備・保護」となります。必要なデータを揃えていなければ効果的にアプリを活用することはできず、それぞれのアプリで生成されるデータを一元的に管理・保護できる仕組みがなければ、重要なデータが削除されていても気づかない状況に陥る可能性が高い。データ絡みのインシデントが想定されるなか、デル・テクノロジーズとしては、DXにおけるデータ利活用についてどのようにお考えでしょうか。

西頼氏:データ利活用という観点では、弊社がどうこうするという以前に、世の中として環境を整備していく必要があると考えています。ChatGPTにしても、正しいデータを用いて信頼性を担保した利用であれば、その効果は絶大ですが、データ次第では突然悪魔に変わる可能性もあります。デル・テクノロジーズがお客様のデータ保護の観点で支援できるのは、プラットフォームの領域です。クラウドを使うべきなのか、オンプレミス環境に構築したほうがいいのかなど、どのような構成にすれば理想的なプラットフォームが構築できるのという部分でアドバイスし、最適なソリューションを提案しています。

星原:ここまでの話を踏まえて、プラットフォームを構築するうえで注意しておくべきことは何でしょうか。

西頼氏:考慮すべきことは多岐にわたりますが、私が大切と考えているのは「意図して選ぶこと」、さらにそれが間違っていた場合に抜け出せる道を把握しておくことです。たとえば、クラウド化の流れに乗ってパブリッククラウドへの移行を進めた結果、コストが高くなってしまったという企業からは、イグジットコストが高いので戻るに戻れないといった話もよく聞きます。選択する前に「なぜクラウドなのか」「失敗した場合にどう抜け出すのか」までをある程度想定したうえで導入を決めることが重要だと思います。

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星原:一方で、ITへの関わりが少ない企業では、経営者がDXやデータ利活用に理解を示していても、データ保護の重要性には気付かす、投資をためらうという話もよく聞きます。昨今ではランサムウェアや標的型攻撃など、企業のデータを狙ったサイバー攻撃も増えており、IT部門はデータ保護への投資を不可欠なものと捉えています。このギャップを埋めるにはどうすべきでしょうか。

西頼氏:難しい質問ですね。データを失うというのは単純なITのリスクに留まらず、レベル的には経営リスクといえるのが昨今です。その認識が投資にリンクしておらず、より儲ける仕組みにのみ優先的に投資する経営者も少なくありません。サイバー攻撃やシステムトラブルによるデータ喪失などが世の中で実際に起きています。使っている仕組みが予期せず突然使えなくなる……、インシデントを自分ごととして捉えることが、経営者はもちろん、IT部門も含めて社員一人ひとりに求められていると思います。入口としては、データ保護やバックアップソリューションの導入を目的化せず、「必要なデータを把握し、なくなったときに戻せる手段をどう用意する」という意識で進めることが大切と考えています。

星原:データは変わりがきかないもので、失ってしまえば戻すことはできません。ただ逆に、データさえ残っていれば、ビジネスを回すことはできる。アプリやシステムごとにデータが保持されている現状では、データ管理・保護する仕組みを整備するのは簡単ではありませんが、取り組む価値は高いはずです。

西頼氏:そうなんですよ。発想を逆転して「ミニマム バイアブル データ」、つまりどのデータが残せていれば、企業そのものを維持し活動を継続できるのか、そこまで考えてデータ管理に取り組んでいくというのも有効なアプローチだと思います。

IT部門の声に応え、デル・テクノロジーズが“データ管理をプラス”

星原:デル・テクノロジーズでは、企業のIT部門が抱えている課題や困りごとを知るために独自調査を実施されたと聞いています。この調査結果からは、データ保護の観点でどのような傾向が見られたのでしょうか。

西頼氏:DX推進にはさまざまな選択肢があり、企業の選択も千差万別です。ITの仕組み自体をお任せするSaaSモデルに移行される企業も増えていますし、場所としてのクラウド(IaaS)を選択する企業もあります。もちろん、自社で管理したほうが効率的という発想で、自前のサーバー、ストレージを調達してオンプレミス環境に組み上げるという従来のアプローチを採用する企業も少なくないという調査結果が出ています。そのなかでも複数のクラウドを使う、いわゆるマルチクラウドを採用された企業に対して、実際に運用したうえで感じた課題を聞いたところ、「データ保護」の重要性に気づいたという回答が数多く寄せられました。

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マルチクラウド全域にわたってセキュリティが担保できているか不安を感じているという企業も60%以上で、実際に運用してみて、データ保護・バックアップやセキュリティ対策の重要性に着目するケースが増えてきています。とくに最新の技術を積極的に取り入れた企業からは、それに対するデータ保護の仕方がわからないという声が聞こえてきています。総じて、新しい技術・手法に追随できるデータ保護の仕組みを構築できていない企業や、マルチクラウドでデータが分散されたことで、データ保護の現状を把握できてない企業が増加している傾向が見て取れます。

星原:マルチクラウド、とくにSaaSのサービスを利用している企業では、プロバイダーやベンダー側が保護してくれているはずと考えているケースも少なくありませんよね。

西頼氏:そうなんです。忘れてはならないのは、オンプレミスでもクラウドでも、IaaS・PaaS・SaaSのどれを選んだとしても、データの責任は常に企業側にあるということです。パソコンを修理に出すとき、必ず言われませんか?修理に伴うデータ消失の責任は負えません(嫌ならバックアップを取っておいてください)と。なので、ここまで何度も語ってきましたが、データがすべて無くなるリスクは、運悪くではなく必ずあるんだという前提でデータ管理・保護の選択肢を事前に考えたうえで、マルチクラウドを採用することが重要となります。

デル・テクノロジーズでは、マルチクラウド戦略を採用する企業に対して、データ保護・バックアップにおける複数の選択肢を「Dell APEX(以下、APEX)」ブランドのソリューションとして提供しています。その1つに「Dell APEX Backup Services(以下、APEX Backup Services)」というものがあり、データ保護・バックアップを丸ごとSaaSとして提供するサービスを2021年にリリースしています。導入企業はバックアップ対象を設定するだけ。あとはデル・テクノロジーズがネットワーク越しにデータをクラウド側に移送・保管し、サーバー攻撃による改ざんから防御して、汚染されていないデータをリカバリーするところまでカバーします。

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星原:これならば、汚染されたデータをリストアしてしまうといったリスクを回避できますね。IT部門の管理者にも安心を提供できると思います。そのほかにも、マルチクラウド環境におけるデータ保護・バックアップに最適なAPEXのソリューションはあるのでしょうか。

西頼氏:はい、APEX Backup Servicesも選択肢の1つで、すべての企業に最適なソリューションとは考えていません。たとえば、大容量のデータを高速でバックアップ・リストアしたいという企業には向いていません。こうしたニーズに対しては、バックアップ用のデータストレージをオンプレミス環境に導入し、従量課金制で利用できる「Dell APEX Data Storage Services Backup Target」の提供を予定しています。このように、企業の要望に合わせて多様なバリエーションを提示することが、APEXが目指しているところです。

星原:なるほど。あらゆる環境に適した最適な選択肢が用意されているんですね。DXが加速すればするほど、環境は高度化して多様化します。その意味でAPEXには、DXに“データ管理をプラス”するソリューションとして、これからの進歩に期待したいですね。

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