デル・テクノロジーズは6月18日、5月下旬にネバダ州ラスベガスにおいて実施した年次カンファレンス「Dell Technologies World 2024」の講演内容について、国内メディア向けにハイライトを紹介した。
同社の創業から40周年を迎えた今年のイベントテーマは、「Accelerate AI adoption to unlock innovation」(AI導入を加速してイノベーションを解き放つ)。文字通り「AI目白押し」のイベントとなったとのことだ。
Day1:Igniting innovation
1日目の基調講演には、創業者のマイケル・デル(Michael Dell)氏が登場。現代は「The Age of AI」であり、すべての企業がインテリジェンス製造企業になるという内容を強く訴えかけた。
「人類の進歩はあらゆる領域で桁違いに進んできた。しかし、これまでの進歩はすべて前座であり、私たちはこれからAIの時代に移行していく」と、同氏は述べたそうだ。
そうした中で同社が発表したのが、「Dell AI Factory」だ。これは、3月に先行して発表していた「Dell AI Factory with NVIDIA」を汎用的にアレンジして展開するソリューションである。
Dell AI Factoryは、企業のAI導入を支援するソリューション群で構成されている。自社が保有するデータを「材料」に、AIを活用したアウトプットを「製品」に見立てて、全体を製造の工場に例えている。
製造段階で重要となるアプローチは「インフラストラクチャ」「オープンエコシステム」「サービス」の三層で構成される。デルはクライアントPCからサーバ、ストレージ、ネットワークなどインフラ製品まで手掛けているため、エンド・ツー・エンドで支援可能だという。また、これまでさまざまなオープンエコシステムを育成してきた実績も、ここで活用する。サービスにおいては、AIを活用するためのスキルや人材、ユースケース、戦略などを支援する。
Day2:Making AI Real
2日目の基調講演には、副会長兼最高執行責任者のジェフ・クラーク(Jeff Clarke)氏が登場。AI導入を加速するための5つの基本理念として、「データこそが差別化要因」「AIにデータを近付けるのではなく、AIをデータに近付ける」「企業規模やビジネスモデルに応じた適切なAI基盤の運用」「オープンなモジュラーアーキテクチャ」「幅広くオープンなエコシステムの活用」を紹介した。
加えて、基調講演ではAIエコシステムソリューションとして、以下が紹介されたという。
・Broadcom:AIに適切な規模での高速ネットワークファブリック
・Meta:OSS化されたLlama3をDell AI Factoryに組み込んで利用可能に
・Hugging Face:Dell Enterprise Hubを利用したデモを紹介
・Microsoft:ローカルでCopilotを利用可能な「Copilot + AI PC」デモ
同日に開催されたカスタマーストーリーセッションには以下の企業が登場し、デル製品の活用事例について発表した。
・ServiceNow
・Samsung SDS
・Deloitte
・McLaren
F1レースカーを手掛けるMcLarenでは、1台のレースカーに約300ものセンサーを装着しているという。1回のレースでは1.5テラバイトのデータが生成されるとのことだ。ピットインのタイミングを判断するための時間がわずか2秒と言われるレースの世界で、一瞬で状況を判断するためのAIシミュレーションにデルのソリューションを活用しているそうだ。
液冷サーバ実機紹介
AIの高度化に伴い高性能なCPU・GPUを搭載したサーバが必要となるが、同時に発熱量も多くなる。これを冷却するための電力消費量も増加の一途をたどることから、AIの高度化とサステナビリティへの対応は両輪で進めなければならない。
そこで、デルは水冷サーバと液浸サーバを報道陣に紹介した。Dell PowerEdge C6620は1つのシャーシに4本のサーバを挿入可能。水冷サーバは廃熱のための管が2本接続されており、この中を冷却水が通る仕組み。
空冷サーバのヒートシンクの代わりにコールドプレートが装着され、この中を水が通ることでCPU・GPUが冷却される。この冷却水は自動車の冷却水(クーラント液)に近い成分だという。
液浸サーバはその名の通り、オイルのような液体の中にサーバを沈めることで冷却する。この液体は約30度に保たれている。液体に沈める際には空冷用のファンなどが不要となるため、不要なパーツを取り外す操作が必要になるとのことだ。
中に入ったオイルに触れてみると、べたつかずにサラサラとしておりサラダ油のような触り心地だった。また、無臭であり、手をふき取ると残らずに不快な感じはしなかった。